フードロスは畑で起きるのではない!家庭や飲食店等で起きているんだーアグリビジネス論Vol.7

フードロスは畑で起きるのではない!家庭や飲食店等で起きているんだーアグリビジネス論Vol.7
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公開日:2022.03.30

SDGs(持続可能な開発目標)で具体的な目標とされるフードロスは、コロナ禍の飲食店用食材、恵方巻の廃棄などで注目される問題です。今回はフードロスという言葉と現状を把握し、防ぐ方法を考えていきましょう。

目次

「食品ロス」としての正しい理解

「食品ロス」としての正しい理解

まず日本において、一般の人が使っている言葉には、「フードロス」と「食品ロス」の両方があります。農林水産省では「食品ロス」という言葉で、様々な説明をしてくれています。

以下、日本において「食品ロスとはどう定義されているか」を挙げていきます。
(1)本来食べられるのに捨てられてしまう食品
(2)事業系食品ロスと家庭系食品ロス、に分けられる
(3)家庭系食品ロスとは、買いすぎ・作りすぎ・食べ残し、冷蔵庫の中などで消費期限が切れて捨ててしまう事など。野菜の皮などについては、「食べられる部分まで削りすぎていること」が対象になるが、タネなど食べられないところについては「食品ロス」とは呼ばず、「食品廃棄物」とされています。
(4)事業系食品ロスとは、食糧の生産、製造加工、流通段階で発生するロスの事で、具体的には、スーパー店頭での販売期限切れの廃棄、カット野菜などを作る過程で、作業工程短縮のため食べられる部分まで捨ててしまう事(ここでもタネなどは食品ロスとしては含みません)などです。

つまり、その生産から消費までの間に、人間の都合で捨てられてしまうという食品の事を「食品ロス」といいます。以降、この文章内では「食品ロス」という言葉で説明を続けます。

食品ロスの原因は?

食品ロスの原因は?

では、どのような理由で食品ロスが生まれるのでしょうか。
消費者庁の資料(農林水産省「食品ロス統計調査・世帯調査(平成26年度)」を基に作成)を見ると、過剰除去の割合が55%と高いことがわかります。これは食べられる部分まで過剰に除去して廃棄したことにより発生しています。そして食べ残しが27%、消費期限などによる直接廃棄が18%の割合です。

ここで考えてみるのは、泥を丁寧に洗って落としつつ、皮も使った料理レシピなどを調べてみたり、食べ残し、期限切れの廃棄食品を減らすことです。お買い得だからと多く買ってしまうことは誰にでもあることかもしれません。しかし、その結果捨ててしまっては、地球環境のためのみならず、結果的にはあなたのお財布にも優しくないはずです。

事業系食品ロス

一方、事業系食品ロスの方を見てみましょう。
農林水産省の資料(総務省人口推計(2019年10月1日)令和元年度食料需給表(確定値))をみると、事業系食品ロス54%のうち、食品製造業22%と外食産業18%の割合が高く、続いて食品小売業18%となっています。

具体的な内容としては、サンドイッチを作る時のパンの耳、カット野菜を作る時の野菜の削りすぎ、形が悪くできてしまう不良品などです。一部は畜産の餌などに回りますが、それでも多くの食品ロスが発生しています。

外食産業では、料理時の食品の過剰除去などのほかに、「お客さんがキャンセルした」「食品を仕入れたが、思ったほどお客さんが来なかった」という大きな理由があります。特にこの新型コロナ禍では多くの食品ロスが発生してしまったかもしれません。飲食店の発注数量の見極めも食品ロス低減のためにも必要ですが、来店客の流れは読みにくいことがほとんどです。

消費者としては、注文した料理は残さず食べる事などが食品ロスを減らすための一つでしょう。また今後、食品ロス防止の観点から、業態としての食べ放題のお店などは減っていくかもしれません。中国では2021年に食品ロスを防止するために食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が可決、施行されています。

畑で捨てられる野菜は食品ロスなのか?

畑で捨てられる野菜は食品ロスなのか?

畑で捨てられている野菜や収穫されずに畑にすき込まれる野菜の写真などを見て、「フードロスのために規格外野菜や、捨てられる野菜を食べよう!」という活動を目にしたことはありませんか?そのような活動は、実は食品ロスの低下や、農家の収入にとってあまり大きな効果がありません。

農林水産省の定義によると、こういった内容のものはそもそも食品ロスとして計上されないのですが、流通面から見た規格外品の野菜などについて解説します。

まず、野菜の価格について説明しますと、ほとんどの場合、需要に対して供給がどのくらいあるか、ということで例年の価格より上下します。大根が1本10円だからといって一日に何本も購入する家庭はないでしょう。家庭で食品ロスが生まれることは、そこまで多くの人が運んでくれたという流通の手間も台無しにしてしまいます。

では産地側でそもそも作付けする面積を減らせばよいという話もありますが、年末年始の需要などは読みにくいですし、天候の急変で野菜の成長は大幅に変わります。また、もし台風などで産地がダメージを受けて例年より野菜が収穫できなかったら、困るのは、収入源がなくなり困窮する農家と、野菜が高騰してしまう消費者の両方です。

一方で、収穫されないなどの理由で畑に捨てられている野菜は、土に還り、次の作物のための肥料にもなります。決して収穫されないからといって無駄になっているわけではありません。むしろ全部出荷してしまい市場が暴落して、多くの悪影響ができる方が、農業の持続可能性を損なう結果にもなります。また、そういった出荷されない野菜をどうにか流通させようとしても、結局は個別での出荷(ECサイトなどでの直売など)にならざるを得ず、大根数本を買うのに送料が1,000円近くかかったり、その分の梱包資材や農家の手間が増えたり、輸送に関わるCO2も多く排出されたりという結果になりかねません。

もしニュースで「農家が野菜の価格低下で苦しんでいる」と耳にした際は、できれば近所のスーパーなどで積極的に購入して、少しでも需要をあげてもらったほうが価格向上に寄与できたりします。それでも例年よりは安く買えるので消費者にとってはメリットです。

規格外品

それでは、規格外品を購入したらどうでしょう?
規格外品とは、曲がったり、色が悪かったり、小さすぎたり大きすぎたりする野菜です。これも、多くの場合は畑に還されます。これもECサイトなどで購入することが食品ロスを減らすかというと、あまり関係ありません。

規格とは、効率よい物流のための基準です。大きすぎる野菜は運ぶのが困難ですし、小さいものは家庭で調理するのが難しいです。曲がったキュウリや大根は箱に入らず、より大きな箱を必要として、かえって輸送コスト(フード・マイレージ)がかかります。適切な規格があることで、私たちは美味しい野菜を安定した価格で食べることができるのです。そして、その規格に合わせた野菜を作ることができるのが農家の技術になります。ただどうしても気候の影響で、例年より色合いが悪い野菜などが生産側で多く発生してしまう場合があるのは仕方ありません。

食品ロス

まとめると、食品ロスは畑では起こりません。輸送された後で、家庭や工場、飲食店などで可食部を過剰に除去したり、食べ残しをしたり、消費期限切れで廃棄することになったりすると食品ロス=フードロスが起こります。

畑では毎年、天候不良や不作に対するリスクヘッジとして、多めに作物を作っています。ですから豊作で余ったり、規格外の作物ができたりするのは想定内です。

農業に関連する様々なニュースを見て、今どういう購入行動・消費行動をすることが「食品ロスを防ぐ」「農家にとってプラスになる」のかをぜひ冷静に判断していただければと思います。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。

ライター情報

  • Noumusubi
  • 片桐新之介

    フードビジネスコンサルタント。京都文教短期大学と吉備国際大学でフードツーリズム、フードビジネス論の講義もしています。得意分野はお酒と魚。百貨店食品部での経験を活かし、様々な面で農家や水産業者を支援。6次産業化プランナー、兵庫県マーケティングアドバイザー。まちづくりのコンサルも行っています。

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