この20年、どんな野菜の流通が増えているのかーアグリビジネス論 Vol.1

この20年、どんな野菜の流通が増えているのかーアグリビジネス論 Vol.1
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2019.11.21

この20年、日本ではどのような野菜が生産され、食卓に上るようになったのか。リーフレタスなどの野菜の流通量から見える事や、市場の卸売市場関係者から聞いた、野菜の流通事情をまとめてみよう。

目次

日本にやってきた野菜たちの歴史

こんにちは。フードマーケティングコンサルタントの片桐と申します。京都文教短期大学と吉備国際大学でフードツーリズム、フードビジネス論の講義もしています。これから何回か、アグリビジネスについて様々な話題をわかりやすく解説させていただきます。

皆さんは、「思いつくまま野菜の名前を挙げてください」といわれたら、どのくらいの種類の野菜を思い出すことができるでしょうか?

現在、日本で流通している野菜の種類は約30品目、130種類と言われています(出典:独立行政法人 農畜産業振興機構HPより)。もちろん、そのすべてを知っている人は、おそらく八百屋さんでもいらっしゃらないと思いますし、すべてを食べたことのある料理人さんも多くないでしょう。

野菜には、古くから日本人が親しんでいるものもあれば、近年になって食卓に上がるようになったものもあります。例えば、春の七草に数えられるセリやミツバは日本が原産国であるといわれています。他には、ミョウガが日本原産の野菜といわれています(出典:小学館 新版食材図典より)。

しかし、セリ科(セリ、ミツバが含まれる)などの香草野菜と呼ばれるジャンルで見ると、近年はセロリやイタリアンパセリ、フローレンス・フェンネルなどのヨーロッパ南部の西洋野菜の方に人気があるようです。

本日は、日本で近年人気になっている野菜を、流通量や、卸売市場の方々のお話を聞きながらまとめてみました。

多くの野菜は、古来、中国や朝鮮半島を通じて日本にやってきました。例えば、葉物野菜。特に、漬け菜と呼ばれる、野沢菜などのような野菜です。奈良時代に渡来したといわれておりますが、それと同時に蕪(カブ)、大根類が栽培されるようになりました。

つまり、アブラナ科の野菜です。浪速(大阪)の伝統野菜である「天王寺蕪」が北陸伝いに長野に入り、蕪の葉だけの部分が成長するようになったものが、野沢菜の起源ではないかという説もあります。このアブラナ科は世界中で栽培されております。各地域で改良が加えられ、野沢菜などのように地域の食文化に欠かせないものとなっていきました。

一方で、京都の料理に欠かせない「水菜」は日本特産のものと言われております。17世紀後半、京都東寺九条(現在の京都市南区あたり)で、育てる際に畝と畝の間に水を入れて栽培したという記載が残っています。その後全国各地へ普及しましたが、1800年ごろ京都の壬生(みぶ)という地域でこの水菜の「葉に切れ込みが少ない」変異体が見いだされ、その栽培が広がっていきました。それが現在「壬生菜(みぶな)」と言われ、希少な京都の伝統野菜として一部で流通しています。

このような、本来外国を起源として日本にやってきた野菜は、いまでは日本の食卓のほとんどを占めています。例えばキュウリは、中国中南部原産で戦国時代末期から江戸時代にやってきました。かんぴょうの原料であるユウガオは縄文時代には遺跡から種が確認されています。

インド東部から島南部原産のナスはインド東部から8世紀ごろ日本にやってきました。同じナス科でも、トマトは17世紀ごろ渡来し、昭和初期に栽培が広まったとされています。ただ、今トマトで人気の桃太郎などの品種は日本人の趣向に合わせて1980年代に改良され、90年代以降主流になっています。カボチャはポルトガル船によって16世紀、長ネギの系統は中国から朝鮮半島を経て8世紀ごろ(京都の伝統野菜の「九条ネギ」は711年から栽培が始まったという記録があります)、玉ねぎは中央アジアの原産ですが明治時代に本格的な栽培が始まるようになりました。

ニンジンは中央アジアアフガニスタンが原産で17世紀江戸時代に渡来、ゴボウは大陸から10世紀には日本に渡来していますが、ゴボウを食べる習慣があるのはむしろ日本と台湾の一部だけという珍しいものもあります。

野菜の流通量の変化

前置きの話が長くなりましたが、このように日本では多くの野菜がやってきていますが、近年はその「新しい野菜が広がる」ペースが速くなってきています。

ここで、市場に流通する野菜と、全国で生産される野菜の生産量の変化をデータで見てみましょう。東京最大の野菜市場である「大田市場」のデータを調べてみました。

※パプリカ、ベビーリーフに関しては、2003年は集計なし
※データ作成:片桐新之介

上記の表で見ると、この20年弱の間で、どんな野菜が使われるようになったのかが見て取れます。

例えば、レタスについてはサニーレタス、グリーンリーフレタスの取り扱いが急増し、いわゆる丸く玉のレタスの取扱量はその分減っていることが分かります。また、トマトも、ミニトマトの取り扱いが増加し、その分大玉のトマトなどの取り扱いは減少していることが分かります。

大阪中央卸売関係者に聞いたところ、その昔は「中国野菜」の大きな隆盛がありました。
1970年代、青梗(チンゲン)菜の栽培が広まり、あっという間に食卓にも上るようになりました。ターサイ、菜心(空芯菜、といういい方ならご存知の方も多いでしょうか)。1990年代にまた新しい野菜が登場します。「ブロッコリー」「ズッキーニ」といったものです。

現在では食卓に当たり前のように現れる野菜ですが、その歴史は比較的新しいものであることが分かります。ちなみに、ブロッコリーはキャベツの仲間で、明治時代から伝わっていましたが、1980年代に消費が急増しました。ズッキーニはカボチャの仲間で、栽培が始まったのも1980年代です。ゴーヤについては沖縄料理を代表するものですが、日本全体で流通が多くなっていったのはここ最近のことなのです。

新しい野菜のトレンドと食卓の変化

そして、ここ10年ではさらに多くの野菜が増えてきています。その中でも特徴的なものが、「スプラウト」と呼ばれる、発芽後すぐの野菜を食べるものです。これは統計上データではなかなか把握することはできませんが、豆苗(エンドウ豆の若い茎葉)、「スルフォラファン」を多く含むとされているブロッコリースプラウトや、ソバや赤キャベツのスプラウトが多く栽培され、流通しています。また、スプラウトとは違いますが、葉物野菜の若い葉を使った「ベビーリーフ」が多く生産されるようになっています。最近では、お刺身に欠かせない「大葉」の若い葉を活用した商品も少しずつ人気が出ているようです。

その他、大きな需要が出てきているのは「西洋野菜」のジャンルです。卸売市場の関係者にヒアリングしたところ、流通先はレストランなど、外食産業が多く、「ケール」、「カーボロネロ」、「コールラビ」などキャベツの仲間や、「リーフレタス」、「ロメインレタス」などレタスでも比較的新しいもの、ハーブ類が人気の商品だそうです。

また、ブロッコリー、カリフラワーなどの花菜類の中でも、アーティチョーク、橙色や紫色などの色付きカリフラワー、ナス科では、青臭みや苦みが少なく、カラフルな色が特徴のパプリカ(オランダ語でピーマン)、根菜類ではビーツが代表的なものでしょうか。ニュージーランドから昭和50年代にやってきた「食用ホオズキ」も少しずつ消費量と栽培面積が拡大しています。

こういった西洋化はなぜ起きるのでしょうか?

大きな原因は、私たち消費者の「食生活」が変わったことでしょう。食卓に並ぶ料理が西洋化し、また外食産業でも、和食のお店よりイタリアンレストランや、フレンチレストラン、洋風料理が多いカフェなどが多く展開していることが原因だと思われます。

つまり、長い歴史をかけて交易などの中で導入されたものではなく、食べる人のニーズに応じるため、農家が直接種を海外から輸入したり、海外の新しい野菜の種子を日本で展開する種苗会社が増えているのです。またそれだけでなく、ナスやトマト、ジャガイモなどといったおなじみの野菜でも、「洋風料理」などに向いている野菜であったり、食卓のニーズに合わせて「小型化」「使いやすさ」を求めて改良された野菜が市場で流通されるようになっています。

もちろん日本のニーズだけではなく、ヨーロッパやアメリカでも、料理人や農業者の努力による品種改良や、新しいニーズに合わせた商品の開発の結果でもあります。日本では「食用菊」「菜の花」などで知られている「エディブル・フラワー(食べられる花)」も、アメリカが発祥の地とされています。こういったジャンルのものも「野菜」として、生産者も拡大し、流通量も多くなっていることが予想されます。

一方で、そういった最新の野菜だけでなく、古来の特徴を持つ野菜を大切にしようという活動も行われています。

日本では「伝統野菜」として地域で守られているものがあります。京野菜、加賀野菜、なにわ伝統野菜、山形県にあるイタリアンレストラン・アルケッチャーノの奥田シェフによって注目されるようになった、山形野菜などが有名です。

こういった日本の地域の伝統野菜は、先に挙げた壬生菜のように、交雑などで変質しやすいアブラナ科の菜類が多くみられます。その他、日本では歴史のある里芋系統(京野菜では海老芋など)、レンコン(加賀レンコンなど)、大根(大阪の田辺大根、信州の戸隠大根など)などがあります。

こういった野菜は、「栽培が難しい」、「保存が難しい」、「硬くて味が染みるまでに煮る時間がかかる」などの理由で食べる人、栽培する人が少なくなっていったものです。しかし、料理の仕方などによっては、現代の人々でもおいしく食べることができるものですし、今多く流通している野菜とは一味違った野菜でもあります。ただ、農家としては非常に手間がかかる作物だというのは事実で、その品種の生産や種の維持にはとても苦労が大きいものなのです。

野菜というのは、家庭の食卓はもちろん、レストランのメニューでも重要な位置を占めるものであります。そのためどうしても時代の流行によって大きな変化が生じます。それは決して悪いことではないのですが、変化の裏側には、栽培されなくなる、食べられなくなってしまう野菜があります。それは食文化の画一化や伝統産業の衰退といった問題をはらむことかもしれません。

これから未来につながる農業を、食事を考えていきたいという人も今は多くなってきています。ぜひ、最近の流行の野菜の良さも知って頂くとともに、数はわずかなれど、苦労の結晶として守られている伝統野菜なども、購入して料理にチャレンジしたり、レストランで召し上がっていただければと思います。

Rakuten Ragri(ラグリ)でも、多くの種類の西洋野菜や伝統野菜を守り、取り扱っています。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :知恵袋

ライター情報

  • Noumusubi
  • 片桐新之介

    フードビジネスコンサルタント。京都文教短期大学と吉備国際大学でフードツーリズム、フードビジネス論の講義もしています。得意分野はお酒と魚。百貨店食品部での経験を活かし、様々な面で農家や水産業者を支援。6次産業化プランナー、兵庫県マーケティングアドバイザー。まちづくりのコンサルも行っています。