とろける桃をオーガニック栽培で!岡山の夫婦が辿りついた有機桃の意外な真実

とろける桃をオーガニック栽培で!岡山の夫婦が辿りついた有機桃の意外な真実
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2021.06.16

桃の花咲き誇る岡山県倉敷で、夫・三谷英明(ひであき)さんと桃の有機栽培に取り組む、エコファームMITANI三谷幸子(みたにゆきこ)さん。オーガニックの桃はとろける食感!病気になりにくい!その秘密をうかがいました。

目次

有機栽培1年目は全滅

――農業をはじめたきっかけを教えてください。

兼業農家として桃を栽培していた父の体調不良がきっかけでした。父は会社に行きながら休みの日に畑に行っていたものですから手間のかかる有機栽培をするなんて発想もなかったようです。

――有機農業に切り替える経緯があったのですか?

今も使っているんですけど、畑に硫黄をまくんですよね。その硫黄の農薬が手にかかって怪我をしてしまったことがあって、これはなんとも恐ろしいと思いました。当時はお薬をどれくらい使うのかといったことも何もわからない状態だったので…。ただ怖いから、お薬はやめちゃおうというのが最初でした。

――怖いから農薬をやめようと?

はい。一方でやめることへの怖さもありました。父の頃は薬散布をずっとしていて、それに慣れていたからか普通にとれると思い込んでいたので、薬を少々やらなくても大丈夫だと思ってやっていました。でも急にやめたら虫がワサッときたり、ドカッときたり。そういう症状がでたときに、あぁこんなことになるんだなと思いました。

――虫が出てしまったのですね?

葉が大きくなってきた頃にアブラムシが大量発生していることに気づいたのですが、すでに手遅れでした。桃の実にアブラムシの尿がかかるとカビが生えて黒くなってしまいます。結局、引き継いで有機栽培を始めた1年目は全滅してしまいました。

おかしいと言われるほど畑を見回り

次の年からはアブラムシをみつけてやろうと、葉っぱの芽が出だしてから毎日、雨が降ろうが風が吹こうが、暇さえあれば畑見に行きました。
近所の人からは「幸ちゃんなんかおかしい。畑に行って上ばっかり見よる。」なんて言われて…そのかいあってか、2年目は量こそはないもののなんとか収穫できました。

今は、アブラムシが出そうなのが判りかかっている…そんな気になっているものだから、少し油断をしてしまい、今年はちょっとアブラムシが発生しちゃったなという場所もあります。

妻は畑、夫は事務で夫婦仲も甘く

――ご夫婦で農業をされているのですね?

彼は4年前に定年退職をして、それから農業に関わるようになってくれました。
一緒に仕事をしていて良いなと思うのは相談できることです。これが悩みなんだな、これで困っているんだなということも、一緒に農業をするようになったら理解してくれて相談にのってくれます。何よりずっと一緒に過ごせて良いなと思いますよ。彼が会社に行っていた頃は朝から晩まで帰ってこないのが気に入らなかったので(笑)。

有機桃の食べ比べはいかが?

――現在栽培されている桃の品種について教えてください。

有機JASでは加納岩(かのいわ)、白鳳(はくほう)、清水(しみず)の3品種の白桃を栽培しています。

加納岩は最初に収穫できる品種で、7月上旬に出荷がはじまります。やや小ぶりでうっすらピンク色。少し酸味があるのが特徴です。皮に亀裂が入りやすく、ひび対策に二重袋をかけています。甘くてとても美味しいのですが、傷みやすく製品にするのが難しいので希少ですよ。

白鳳は有名な品種で、7月中旬から収穫できます。全体が薄ピンク色なのですが、底があいている袋をかけることで、日が当たったところが濃いピンク色になります。食感はやや繊維質ですが、酸味はほとんどなく甘いです。

清水は岡山では最も人気のある品種で、7月下旬から収穫時期を迎えます。香りが高く完熟すると口の中で溶けるような舌ざわりになります。酸味もなく、とてもまろやかな甘い品種です。

――どれが一番好きですか?

一番人気の品種は清水です。以前は白鳳ばかりでした。それぞれ収穫の時期、実自体のキメの細かさ、食感、色も違います。私はタイミングによって好きな品種は変わりますね(笑)。あとは食べてみないとわからない!ぜひ食べ比べしてみてください。

実は桃が〇〇…だからこそ美味しさに自信

こんなこと言ってもいいのかな。…私、桃農家ではあるんですけど、桃は嫌いなんですよ。でもお客様には美味しいものを食べていただきたいので、かなりの量を食べます。
特に雨が続く年は、収穫するタイミングを確認するためにしっかり味見します。嫌いな人が食べてみてこのくらいならいけるかなというものだったらお客様に自信をもってだせるかなと思っています。

――そんな努力を!美味しくいただくにはどうしたらいいですか?

商品が届いたらすぐに箱から出し、フルーツキャップをはずしてからフルーツ皿などにうつして風通しの良い直射日光の当たらないところへおいてください。香りが強くなってくる頃が召し上がり時です。召し上がる前に2時間ほど冷やすのがおすすめ。絶対にすぐに冷蔵庫に入れないように!出来るだけ樹で熟らしてから出荷しますので到着後2~5日ぐらいが食べ頃です。

お客様に感謝…丸1年かけた美味しい桃を届けたい

――お客様からいただいた言葉で心に残っていることはありますか?

大雨がきた年に、本当に美味しくない桃ができてしまったことがあり、それまでは天候の変動は少なく、毎年一定して美味しい桃が収穫できていたのでかなりショックでした。

桃は1年に1回しか収穫できず、加えて決して安いといえる価格のものではありません。だからこそ、それを楽しみにしてくださっているお客様に美味しくない桃は出せないなと思い、お客様一人ひとりに電話をかけたんですよ。
「今年は注文をお断りさせてください。他のものにかえさせてください。」
そういうと、『こういう年もあるわ』と皆さんが言ってくださって、その美味しくないままの桃を買ってくださったんですよ。それがびっくりというか嬉しいというか…。

――それだけ幸子さんや幸子さんがつくられている桃が愛されているということでは?

そうですよね。1年こうして頑張っても、最終的にお客様が召し上がるときに美味しくなかったり、こんなのかって思われてしまったら、1年が無駄になるじゃないですか。でもお客様のほうが自然の計らいをよくわかっていただいていたんですよ。それがすごくありがたかったですね。うん、嬉しかったです。もう本当に、忘れられない思い出です。

有機桃で辿りついた意外な真実

――農法のこだわりはありますか?

なんだろう…何もしてないのにな~、私。
でもパトロールはしていますね。夜、犬の散歩をしているときに、たまたま桃の木に虫がついているのを見つけた翌朝は、すぐに退治をしに行きます。
有機栽培を始めたころは、虫対策でハーブを煮出してみたり、唐辛子を抽出してみたりと様々なことを試していました。でも今は別にこれってことはないですね。

肥料を与えすぎたら、アブラムシがたくさんくるような気がするし、果実自体が柔らかくなりすぎる気がしています。なので肥料を入れたくなくて控えています。私は、感覚の人ですので(笑)。
何もしないほうが、木が自分で強くなってくれている気はします。実もね、自己防衛のためなのか、ちょっと毛羽だっているんですよ。

――慣行栽培の桃とは違うのですか?

そうそう、有機栽培の桃は、他と比較して、実の表面の産毛がかたくなっています。手をかけてもらえないから自分たちでどうにかしようって。あいつらあてにできないぞって(笑)
せん孔細菌病(せんこうさいきんびょう)という葉に穴があいてレース状になる病気があるのですが、それが有機栽培に切り替えたら出なくなりました。どんなに薬を頻繁にまいても治らなかったのに、木が元気になったのかな。

結局、しなくていいお世話をしすぎると、木が「もうほうっておいて!」と言っているような気がします。よく畑を見ていたら、葉っぱの色が薄いなぁや実をつけすぎてしんどそうだなぁというのを感じます。それをちゃんと説明しろって言われてもできないんですけど(笑)。

――味の違いもありますか?

有機栽培の桃は、実のキメが細かく、食感が他のものとは違うかなと感じています。
有機栽培だから美味しいとは言えないのですが、精一杯の努力はしています。でも味は太陽様の影響が一番かな…。
愛情をこめて、本当に安心で環境にやさしい農業の発展を望んで栽培していますので、より多くの方にエコファームMITANIの有機桃を食べて笑顔になっていただけると嬉しいです。

編集後記

「何もしていないなぁ」「桃が嫌いなんです」…どこか惹き込まれる驚きの言葉が次々と出てくる幸子さん。 木に寄り添い、その声をきく。特別なことは“何もしない”。ほんの少し、手助けをする。木は自らの力でつよくなり、とろける食感の桃を実らせる。農繁期(桃の収穫時期)は睡眠時間が3~4時間になることもしばしばとか。これからも夫婦仲良くお身体ご自愛くださいね。美味しい桃を待っています!

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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