農業の6次産業化とは?製造×加工×販売=成功の秘訣をわかりやすくーアグリビジネス論Vol.5

農業の6次産業化とは?製造×加工×販売=成功の秘訣をわかりやすくーアグリビジネス論Vol.5
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2020.03.25

農家 さんがより収益を上げる手段として、「6次産業化」への取り組みが注目されています。農家さんが手掛ける加工品、直接販売、農業体験や宿泊業などのことです。6次産業化の可能性と取り組みについて解説します。

目次

6次産業化とは?いちご農家さんでしくみを図解してみました

こんにちは。フードマーケティングコンサルタントの片桐です。新型コロナウイルスの影響によって多くの農家さんも作物や商品が動かず困っているようです。アグリビジネス論6回目の今回は、そんな農家さんを救う可能性もある「6次産業化」という取り組みについて解説させていただきます。

6次産業化とは、「第1次産業」とされる農業(水産業なども第一次産業です)が、「第2次産業」の製造業・加工業、「第3次産業」のサービス業などを行うことによって、その収益力を高めようという取り組みのことです。「1+2+3=6」、あるいは「1×2×3=6」であることから、6次産業化と呼ばれるようになりました。

具体的には、いちご農家が自分でジャムを作り、ネットショップを起こして販売するような製造・販売を行うことです。それ以外にも、農業体験をしてもらい収穫物を定期的に送り届けるサービスや、農泊(民泊)を経営し自社の畑でとれた野菜を料理として提供すること、農家レストランを経営することなどが挙げられます。

農家の取り組みには「6次産業化プランナー」という専門家からの支援を受けることができ、販路開拓や商品製造のノウハウをはじめ様々なアドバイスを受けることができます。また、加工設備などについて国からの補助金を受けることもできます。

6次産業化がもつ可能性

こういった取り組みによって農家が得られるメリットはいくつもあります。

①野菜の販売以外でも収入が得られる
農林水産省が6次産業化を推奨している1番の理由がこれです。農産物の生産、流通網への販売だけでは十分な収益とはいえず、後継者不足や耕作放棄地などの問題を生み出しているという認識のもと、農業者がより高い収入を得られるための手段として、加工品製造や直接販売への取り組みを支援しています。

たとえば、カタチの悪いニンジンは市場への出荷がしにくいのですが、ジュースにすれば問題がないなど、今まで捨てられていたり、大手の加工会社に非常に安い値段で買い取られていたニンジンを自社でジュースにして販売することによって、その分収益が高まる、という想定です。こうした加工品には、ジャム、ジュース、パウダー、カット野菜など様々なものがあります。

加工品だけでなく、ネットショップを開設して自社の野菜を直接消費者に販売することもありますし、先に述べたようなレストランの経営、農業体験も6次産業化の手段のひとつとして期待されています。

②新しいお客さまとのつながりづくり
私が考える6次産業化の持つ可能性は、もう2つあります。

まず一つは、新しいお客さまが増える可能性が高まるということです。具体的には、生鮮品だけでなく、加工品には別の需要がある人が多いということになります。たとえば、トマトをそのまま食べるのは苦手だけど、トマトケチャップは使う、トマトソースは好きという人もいます。生のいちごはたまにしか食べないけど、いちごジャムは毎日のようにパンに塗って食べる人もいます。

また、加工品を作ることで、より多くのお客さまへアプローチができるようになります。一人暮らしのお年寄りで、野菜を買って調理することがいままでの様にはいかなくなった人も、地域に農家レストランができれば、そこで新鮮な野菜の料理を楽しめます。

たとえば、農家が消費者と直接つながりを持てる場として「マルシェ」がありますが、生鮮野菜だけでなく、自社の加工品を出品することで売り上げも向上します。「ほうれん草を昨日スーパーで買ってしまったから今日は買えない…」という人にも、ほうれん草をパウダーにしたものを「製菓材料」としてすすめることもできます。

③付加価値を自分で生み出せる

もう一つの可能性は、自分で値段をつけることができる点です。生鮮野菜の価格はなかなか自分で値段を決めることができず、市場の需要と供給に左右されます。他の農家さんについても、豊作の場合は値段を高く設定しにくくなりますし、暖冬などの気候の変化で収穫予定がずれてしまい、多少安くても出荷せざるを得ないときもあります。

それに比べて加工品は、自分で価格を自由に設定できます。原材料の特徴を活かしたり、調理法を工夫したり、自分の暮らす土地のストーリーをうまく付加するなどのブランディングをしっかり考えれば、ジャムでも高い値段で販売をしている農家さんも少なくありません。

先日、6次産業化への支援案件で、筆者は「瀬戸内のジャム工房」を訪れましたが、地域の柑橘類など非常においしく加工していました。商品はだいたい30gほどで800円という値段でしたが、多くの新しいお客さまを獲得していらっしゃいました。

もちろん、ジャムは大手製造メーカーの商品もありますし、海外からの果物で製造される安くて美味しい商品も多数あります。そういった商品に負けないような工夫は必要ですが、製造されるアイテムによっては多くのお客さまを獲得できる場合もあります。

農林水産省が行った、令和元年度6次産業化優良事例表彰結果(6次産業化アワード)で奨励賞になった「早和果樹園」の商品は、地元だけでなく今では全国各地のお店でも並ぶようになりました。

高知県の「馬路村のぽん酢」も、もともとは地域の方々が地元の柚子を何とか販売したいということで20年以上前に製造したものです。小さな村や小さな農家から始まり、成長して他の人たちとも提携して商品の供給量を上げていくことで、全国的に販売できる商品になることもあるのです。

消費者とのつながり強化が大切

6次産業化には様々な農家が取り組んでいます。
愛媛県でオーガニックの野菜を栽培するRakuten Ragri(ラグリ)の原田さんは多くの野菜を直接販売しています。情報発信をしっかりと定期的に行い、お客さまのコメントにも丁寧に返事をすることで、消費者との信頼関係をつかんでいます。

②でも少し述べましたが、消費者とのつながりをしっかりとつくり、「リピーター」をいかに作ることができるかが大切です。どんな商品であっても、最初の販売力は小さなものです。ですが、日頃からつながりの強いお客さまを多く抱えていることによって販路が獲得され、収益の向上につながります。

また、そういった農業者独自の情報力発信をさらに補足するものとして、以下のような取り組みがあります。

<6次産業化成功の秘訣>

・体験型を取り入れる、SNSなどで投稿やシェアをされやすくする

・観光資源や地域の資源とコラボレーションする

・みんなが食べているもので、原料を海外産から日本産のものに切り替える

・未利用資源の活用など

これからも6次産業化の事例としても増えていくでしょう。

6次産業の取り組みを支援しよう!

このように6次産業化は農家にとって魅力ある手法です。ただ、それを支えるのもわたしたち消費者がいかにその商品を購入するかにかかっています。

現在(2020月3月16日)も、新型コロナの影響で、給食や外食産業に使われるはずだった多くの野菜が行き場を失い、困っている農家さんが多い状態です。こういった、突発的な事態や気象の変化でだぶついてしまった野菜を、冷凍加工したり、日持ち加工することで収入も安定させられることでしょう。

一方で、冷凍設備など大きな資金も必要となります。消費者のわたしたちが、日頃から農家さんの加工品を定期購入し続けることで、農家さんは安心して、こういった事態になってもいくらかの量を加工品として製造できるかもしれません。

本来、だぶついている野菜は農家さんから直接買うことが望ましいことではありますが、人が一日に食べられる量と冷蔵庫の容量には限界があります。また、忙しくて料理をする時間があまりとれない人もいらっしゃるでしょう。であれば、日々こういった商品に着目して、少しでも購入していただければと思います。

またこの度の新型コロナウイルス対策のひとつとしても、栄養バランスのとれた食事で身体を守ることを考えてみられてはいかがでしょうか?農家さんから直接でも、スーパーマーケットであっても、ぜひ、この機会に野菜のことをもう少し想っていただければ幸いです。


(参考文献1)食品の消費と流通(建帛社 公益社団法人日本フードスペシャリスト協会編)

(参考文献2)農水省6次産業化アワード

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :知恵袋

ライター情報

  • Noumusubi
  • 片桐新之介

    フードビジネスコンサルタント。京都文教短期大学と吉備国際大学でフードツーリズム、フードビジネス論の講義もしています。得意分野はお酒と魚。百貨店食品部での経験を活かし、様々な面で農家や水産業者を支援。6次産業化プランナー、兵庫県マーケティングアドバイザー。まちづくりのコンサルも行っています。