うちのみかんが一番うめぇ!小原紅(おばらべに)の真っ赤な果実と叶えた農業転職は美味しい連続

うちのみかんが一番うめぇ!小原紅(おばらべに)の真っ赤な果実と叶えた農業転職は美味しい連続
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最終更新日:2023.11.07 公開日:2023.11.02

香川県高松市で柑橘を栽培する西森くだもの農園の西森茂(にしもりしげる)さんと妙子(たえこ)さん。千葉から香川へ移住し農家に転職。「うちのみかんが一番うめぇ」と言えるまでに至った秘訣を茂さんに伺いました。

目次

千葉から香川へ!移住&就農は想像以上に◎

千葉から香川へ!移住&就農は想像以上に◎

――なぜ農業をはじめたのか?
西森くだもの農園は、千葉県から香川県高松市にIターン移住をして作った果樹園です。
以前は、編集プロダクションで子ども向け書籍の食材辞典などの文章を書いたりしていました。妻は福祉施設職員で、二人とも農業経験は全くなかったのですが、ずっとインドアの仕事をしていたので、次はアウトドアの仕事をしたいと考え、以前から興味のあった農業へ転職しました。

――農業という職業はどうですか?
生活スタイルがすごく自由でいいですね。何も忖度する必要がない(笑)作物を作ればいいので、人間関係もいりません。自分のペースで出来て、きちんと儲かるいい仕事です。

農業は年をとってからやるという選択肢もあるけれど、体力勝負だから、若い時からはじめてみて良かったと思います。想像以上にいいです。

西森くだもの園 西森妙子

――奥様も農業がやりたかった?
いや、興味あるくらいで、やりたいってわけではなかったですが、おもしろそうとは言っていました。
今は楽しくやってくれています。妻がいないとダメですね!

――農作業は夫婦2人で?
基本は2人ですが、ずっといっしょだとケンカになるから、作業は別々にしています。嫁さんはパートさんを呼んで、和気あいあいと作業をしているときも多いですね。

僕はひとりでやります。気が楽なのがいいです。

――なぜ香川?
香川はたまたま、農業会議所という団体で後継者のいない人をつなぐ取り組みをみつけたのがきっかけでした。
果物が作りたかったので、日本の南のほうかなと考えていたので、まずは香川へ農業体験に何回か来て、収穫を手伝いました。

そこで感動したのは、香川のみかんが美味しい!ということ。
香川はみかんの産地なのですが、愛媛や和歌山より有名ではありません。収穫量も少ないので、だからこそ工夫をしてニッチなブランドを狙っているところもよかったです。

香川は温暖で災害の少ない土地でもありますから、農業するなら香川県と決めて家族で移住しました。2年間は柑橘農家のもとで研修を行い、2013年に独立就農して、現在10年目を迎えています。

紅色みかん「香川小原紅早生(おばらべにわせ)」は知的財産に登録

温州みかんの色くらべ 小原紅早生 石地

香川でどんなみかんを栽培?
温州みかんは日本の冬を代表する果物です。たくさんの品種があり、熟期によって、極早生9月~10月(来年から)・早生(11月~12月)・中生・晩生(2月~3月)に分かれます。

西森くだもの園では、早生は「小原紅早生(おばらべにわせ)」、中生は石地みかん、晩生は青島みかんを栽培しています。その他、低農薬栽培の国産レモンを12月~5月、初夏を告げるびわを6月上旬に収穫します。

「香川小原紅早生みかん」が、香川県で初めて知的財産として「地理的表示保護制度(GI)登録産品」に登録

主力は「小原紅早生(おばらべにわせ)」です。

小原紅早生は、1973(昭和48)年、香川県坂出市の生産者:小原幸晴(おばらゆきはる)氏のみかん園で見つかったきれいな紅色のみかんです。宮川早生(みやがわわせ)というみかんの品種の「枝変わり(一部の枝のみが他と異なる遺伝形質を示す現象 )」で、地域の人たちが協力して接ぎ木で増やし、長い時間をかけて育てあげてきました。
2018年には「香川小原紅早生みかん」が、香川県で初めて知的財産として「地理的表示保護制度(GI)登録産品」に登録されました。

――知的財産に登録されたみかん!すごいですね
はい、最大の特徴はなんと言ってもこの鮮やかな濃い紅色です。普通みかんと並べてみると一目瞭然です。そして、その濃い色は果肉にも現れています。

――何か特別な栽培をするのですか?
栽培の仕方は普通のみかんと同じですが、糖度がなかなか上がりにくかったり、真っ赤になってから日に当たりすぎると退色して普通のみかんの色に戻ってしまったりするので、栽培はやや難しい面があります。

親の品種の宮川早生と比べると、同じ条件の栽培でだいたい1度くらいは糖度が下回ります。そのため、糖度を上げる工夫が必要で、マルチを敷いたり、摘果(てきか)を多めに行ったりします。

西森くだもの農園がこだわる3つの条件

西森くだもの農園がこだわる3つの条件

西森くだもの農園は、香川の中山間地で2ha栽培しています。
傾斜地での作業は体力的にも大変ですが、みかんは傾斜地でつくることで美味しくなるので、自然の地形をいかした栽培を心がけています。
また、次の3つの条件を基本として、農産物を栽培しております。

安心して食べられること。
できるだけ農薬の使用を減らし、体や環境にいい果物づくりを目指しています。「自分の子どもに安心して食べさせられる果物」を全国のお客様にお届けします。

味の良いこと。
果樹は1年を通してさまざまな作業を行いますが、どの作業も「味が良くなる」ことを第一に考えます。そして一番味がよく、栄養価も高い「旬」の時期にお届けします。

手ごろな価格であること。
どんなに良くても品質に比較して不当に高い価格は失格と考えます。健康効果の高い果物をたくさん食べていただけるよう、なるべく安く提供できるようカイゼンに努めます。

栽培のこだわり

――栽培のこだわりは?
美味しくないと意味がないので、こうやったら美味しくなるということはやっていきます。小原紅早生の糖度を上げる工夫で触れましたが、マルチと摘果は必須です。

マルチは、タイベックマルチという特殊な素材の白いシートを敷いて、水分コントロールをします。これを敷く作業は、真夏にするので、日光が白に反射して非常に暑くて本当に大変です。ただ光合成にも役立ちますし、やったほうが美味しくなるので頑張っています。

摘果は、実を落とす作業です。小原紅に関しては、本来は夏にやることを9月にやります。後期重点摘果(こうきじゅうてんてきか)というのですが、放っておいたら食べられるレベルの実を落とすので、もったいない。ただそれで残した果実が美味しくなり、ワンランクアップさせることができるので、美味しさにこだわるためにやっていきます。

あとは農薬をできるだけ減らしたいので、虫がついていないかとか、ひとつずつケアしています。子育てみたい!と妻は言っていますよ。
除草剤も使わずに、人と環境にも配慮しています。あえて雑草などを生えさせることで、強い日差しから土壌を守り、土が柔らかくなり、根っこが育ちやすくなったりします。

美味しい食べ方。ドライフルーツが好評

美味しい食べ方。ドライフルーツが好評

――おすすめの食べ方があればおしえてください
果物は生食でそのまま食べるのが美味しくて、体にもいいです。
たくさんあれば、ジューサーで絞ったりお酒に入れたりするもオススメします。私はみかんを半分に切って、皮ごと何十個も使ってジュースにしますが、それは農家の特権ですね。

あと、嫁さんが好きな食べ方は、焼きみかん。皮ごと焼き目をつけて剥いて食べると、お芋みたいな味がします。あったかい果物はちょっと…という自分みたいな方にはオススメしません(笑)

他には、ドライフルーツを作っている方に果実を送って、できたものを貰って食べたりしています。皮ごと食べられますし、これは美味しくて皆さんに好評です。

「優良農地は地域の宝」実力よりは土地の力

小学生向けに課外授業!美味しいは嬉しい

小学生向けに課外授業!美味しいは嬉しい

農業という仕事の魅力を伝えるため、毎年小学生向けの課外授業を畑で行っています。社会の授業としてバスに乗って、みかんを習いにくるので、みかんの木を見せて、こういう風に育ちますとお話します。

――小学生にはどんなことを?
1本の木の中でも、大きいみかんより小さいほうが味を濃く感じて美味しいとか、外側になっているほうが内側よりも糖度が高くなりやすくて美味しいとか。

時期的にみかん狩りができれば体験してもらいますし、まだのときは冷凍みかんを1こずつあげるので、みんな喜んでくれます。

「優良農地は地域の宝」実力よりは土地の力

――畑の間に道路が通っているのですね?
みかんの収穫時は毎日何トンも運ぶので、運搬機が入れるように段々で作ってあります。運搬機が入れないところはない手で運ぶので、そこは男の仕事です。

みかん畑は、山の斜面を活かすことで日当たりと水はけがよくなります。うちは東向きが多いですが、西向きの畑もあります。みんな自分の畑の向きがいいっていいますよね。斜面は変えられませんから。

海が近いことで温度が下がらないし、雪が降らないのも重要です。みかんは温暖な気候に向いた作物なので寒さには弱く、霜がおりると傷んでしまうので、霜がないほうが作りやすくなります。

――土地に恵まれているのですね?
そうですね。みかんを作っているというよりはできたのをもらっているイメージです。
「優良農地は地域の宝」
実力よりは土地の力だと思います。だから実は、作るなんておこがましい。人間は管理しているだけです。みかんは勝手になって、勝手に美味しくなってくれるから、食べさせていただいている感覚が大きいです。

西森くだもの園 世界一、おいしかったです。

こうして感想をもらったりするのは嬉しいですね。あとはやっぱり、将来農業をしたいと思える子が少しでも増えればいいなと思います。

うちのみかんが一番うめぇ 西森くだもの園

――農業をやっていて、いちばん嬉しかったことは?
「西森さんとこのみかんを食べると他で食べられない」と言われた時は、嬉しかったです。

美味しいものを食べると幸せになりますよね。
うちでは年間40トンくらいのみかんを栽培していますが、これを食べるたくさんの人々(数万人くらい)の幸せと健康に寄与できていることが嬉しいし、この仕事を誇りに感じるところです。

自分でもやっぱりうちのが美味しいと思います。もう他のみかんを食べないし、たまに貰って食べると「うちのみかんが一番うめぇ」と感じます。ぜひ食べてみてください。

◎西森くだもの農園のみかんは楽天市場で購入いただけます。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
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ライター情報

  • Noumusubi
  • Motty

    農むすび編集長。埼玉県深谷市出身。農家の孫。日テレAD時代、おしゃれカンケイを担当。農家さんの人となりをドラマチックに伝えたいと取材記事を書きはじめた。好きな農作物はメロン。農業は自然の恵みあってのもの。神社のお祭りで五穀豊穣を祈るのも、大切にしたいと思っている。

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