中学2年生の虫博士Daiyaによるホタルの謎!卵から光る小さな命を通して「綺麗な水」を考える
中学2年生の虫博士Daiyaによる「ホタルの調査」。今回は暗闇で光るホタルの謎に迫ります。ホタルはどうして光るのか?その驚きの生態と、ホタルが人間に気づかせてくれる「綺麗な水」についてお伝えします。
一生を通して光る小さな命
こんにちは。虫博士Daiyaです!
ホタルは成長段階のいつから光るか知っていますか?
実は、卵から幼虫、サナギ、そして成虫まで、一生を通して光っています。これは意外と知られていないことで、僕は初めて知った時にとても驚き、実際この目で見た時は、「ホタルって小さいのにすごいなー」と感動しました。
そこでクイズです!
Q:世界中でホタルは何種類いるでしょうか?
約500種 ② 約1,000種 ③ 約3,000種
正解は、③ 約3,000種です。
日本で成虫がよく光るホタルは、そのうちの約10種類しかいません。
ゲンジボタルとヘイケボタルは日本を代表するホタルですが、見分けるポイントは、赤いところにある黒の模様の違いになります。
また、生息地も違い、ゲンジボタルは小川に、ヘイケボタルは水田やため池などに多くいます。ホタルが見られる時期は地方によって異なりますが、5月中旬から7月中旬です。今回は、タイミングよく山梨県の早川町で夜に光る「ヘイケボタル」を鑑賞することができました。
どうして光るの?ホタルの不思議
日本では夏の風物詩として、ホタルは多くの人に親しまれてきました。それではなぜホタルは光ることができるのか、美しい光で人を魅了するホタルの謎に迫ります!
――何のために光るの?
ホタルの成虫は、天敵にねらわれないよう夜に活動します。だから結婚相手を見つけて子孫を残すために、暗闇で光ってコミュニケーションをしていると言われています。
ただ、どうして求愛行動に関係がない卵の時期から光るのかは、まだ解明されていないようです。
――どうやって光を出しているの?
ホタルはおしりの部分に発光器があって、光る物質の「ルシフェリン」と、光らせる酵素の「ルシフェラーゼ」が入っています。
ホタルの多くは成虫になると口が退化して、ほとんど水分しかとらなくなるので、幼虫時代に蓄積した栄養を燃やして光っています。
――何を食べるの?
ゲンジボタルもヘイケボタルも幼虫のときに、巻貝の仲間を食べます。ゲンジボタルは「カワニナ」、ヘイケボタルはその他に「タニシ」や、おたまじゃくしやドジョウの死骸などを食べていた観察報告があります。死骸を食べると言うことは、アンモニアの発生を防いでくれる「田んぼのお掃除やさん」ですね。
――幼虫が巻貝をどう食べるの?
食べ方は、巻貝を溶かして体に吸収します。
――寿命はどれくらい?
卵から、だいたい1年です。幼虫期は水の中で暮らし、土の中で部屋(土まゆ)を作ってサナギになり、成虫のホタルになります。成虫の期間は、約1〜2週間程度です。
ちなみにこれは、僕が今年、幼虫から育てたヘイケボタルです。6月に羽化して、1週間で寿命を迎えました。
――ホタルの鑑賞は、夜の何時くらいから見られるの?
成虫のホタルの活動ピークは日没から約2時間ぐらいです。
ホタル鑑賞へ行く時は、水辺の近くで夜の観察になるので足元には気をつけてください。
もし車で行くのであれば、車のライトは必ず消して、懐中電灯はホタルに向けないことがマナーで、ホタルにとっても優しい行動になります。なぜなら、人工的で強い光は、一生懸命に光っているホタルの邪魔をすることになるからです。
ホタルを通して「水」を知る
ホタルは他の昆虫よりも敏感で、水などが汚染された環境では生きられない昆虫です。ホタルの生息するところは水が綺麗といいますが、これは濁りのない透明な水というわけではありません。ホタルを通して「綺麗な水」について考えてみましょう。
ホタルは昔、水田や小川などに当たり前のように生息していました。だけど、今は、その生息範囲が限られていて、あまり見られなくなりました。その理由に、次のことがあげられています。
▶︎都市開発で自然の生態系が崩れてきた
▶︎農業の発達が自然を変えてしまった
▶︎農薬で環境が汚染され地下水にも悪影響
▶︎田んぼが減りホタルの住む場所が少なくなった
▶︎ゴミやタバコのポイ捨てなど、環境の悪化
日本は、1950年頃から、水田の減少や河川の工事、農薬、生活排水などの影響によって、ホタルをはじめとする水生昆虫が生息できる場所が減ってしまいました。つまり、ホタルは農薬や化学物質のあるところには住めないということです。ホタルにとっての「綺麗な水」を考えると、僕たち人間が利用する水もまた、綺麗であってほしいと思いませんか。
ここからは観点が少し変わりますが、農業の発達というのは農薬などの開発だけではありません。
稲作の収穫を増やすため、以前は一年を通して入れていた「田んぼの水」を、夏から収穫期に抜くようになりました。すると、ホタルの幼虫が干からびてしまうという悲しい状況になりました。そして、ホタルの幼虫のエサとなる「カワニナ」や「タニシ」などの水中生物も、水をぬかれると生息できません。
そんな状況を変えようと、地域の人たちが保全活動をがんばって、再びホタルの観察ができるようになった場所もあります。
僕もそんな場所を増やしたいと、挑戦をしてみました。
命の場所を作るビオトープ
僕は昨年、農業活動でお世話になっている早川エコファームにヘイケボタルの光を届けたいと思い、命の場所「ビオトープ」を作ることを提案しました。
ビオトープとは、ギリシア語のbio(命)tope(場所)を組み合わせた言葉で、生物空間や生物生息空間と訳されますが、つまり動物や植物が安定して生活できる環境のことです。特に最近では、小さな鉢や池の中で人工的に生態系をつくることを指すこともあります。
僕がビオトープを提案した目的は、ホタルの光が町おこしにつながれば、町が元気になって、来た人に優しさと感動を与えて、笑顔にできると思ったからです。
最近、ホタルのことをよく知らない人たちが増えてきているから、ホタルをきっかけに昔から親しまれてきた日本の文化を伝えたり、ホタルを通じて自然に触れ合ってもらったりして、早川を知ってもらえたらいいなと思います。そのために必要なことを考えてみました。
◎人が協力できるシステムづくり
◎生き物同士が生きていける関係づくり
◎循環して維持し続ける環境づくり
早川の野鳥公園には、ホタルが毎年70匹くらいいるそうです。大事なのは、ホタルのいる場所から姿を消してしまわないように、ホタル用のふかふかな土を作ること、綺麗な水に変えていくこと、ホタルが産卵するためのコケを育てるなど、課題はたくさんあります。
僕は、家の庭にも「ビオトープ」を作って置いています。ホタルと一緒に暮らすことのできる環境を守りたいです。
そんなことを思いながら、久しぶりに山梨県早川町に向かいました。
青大豆とホタルの共通点
コロナ自粛解除から農業活動が再開しました!とてもワクワクしてうれしかったです。
今年も「早川集落伝統の味噌づくり復活祭」に参加しています。
この日は、昨年採れた大豆の中でも選りすぐりの大粒大豆、およそ1.2kgを種として丁寧にまいて、鳥よけの不織布も敷きました!
その他にも夏野菜のお世話をして、採れたてを鉄板焼きで食べました。最高に美味しかったです。
手作業で、青大豆の選別もしました。黄緑色の青大豆は、枝豆のように見えますが、大豆が熟す前の状態である枝豆とは違います。大豆が成熟すると楕円形からまん丸になっていくのと同じように、青大豆は青いまま丸く熟します。普通の豆と比べると見た目は大粒で、風味が豊かで甘みが強く、低脂肪で美味しいのが特徴です。
しかし流通量が少なく、特に国産のものは希少価値の高いお豆のようです。その理由は、青大豆は病気にかかりやすく、収穫は全て手作業で行うので、栽培や収穫に手間がかかるからです。
近年、早川でも青大豆を作る人が少なくなっているそうです。作り手がいなければそこで途絶えてしまいます。それではいけないと、早川エコファームのスタッフさんが未来に残すために、思いを込めて手掛けているという話を、作業をしながら聞きました。
ホタルも一度いなくなってしまうと取り返しがつかなくなってしまうように、環境も壊せば戻せなくなってしまいます。だから人が守っていく気持ちと行動を忘れずに、自然を大切にしたいと僕は思いました。
取材協力「NPO法人早川エコファーム」
編集後記
家で作ったビオトープに飛んできたトンボが卵を産んだみたいで、気づいたら羽化していました!また来てくれるとうれしいです。
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。