新型コロナにくじけず卒業式を花で飾った生徒たち!フローラルライフコース:よしこ先生の農業高校だよりVol.4

新型コロナにくじけず卒業式を花で飾った生徒たち!フローラルライフコース:よしこ先生の農業高校だよりVol.4
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最終更新日:2021.07.26 公開日:2020.03.09

農業高校の卒業式は生徒が花を飾ります。では今年は新型コロナウィルスの影響でどうなったのか?群馬県立藤岡北高校のヒューマン・サービス科フローラルライフコースの活動を通して、花が育む優しく豊かな心をお伝えします。

目次

心を込めて、卒業式を自分たちで飾り付け!

平成から令和へと変わって初となる卒業式は、3月2日(月)に執り行われました。
新型コロナウィルスの影響で今年は大幅に規模を縮小し、時間も短縮となりました。在校生は参列をせず国歌や校歌も歌わず演奏のみという異例の式典となりましたが、保護者と先生たちで大きな拍手を持って、卒業生の門出を祝いました。

藤岡北高校ではイベントや式典がある度、フローラルライフコースの生徒が会場の飾花を行います。式の前日に、トラックに積まれた草花たちが次々と生徒たちの手によって運び込まれ、1時間もしない内に会場全体が色とりどりに飾り付けられて、一気に華やぎます。

演台の横に置く大きなフラワーアレンジメントも、すべて生徒自身の手によって作られます。今年の卒業式に使った花は、サイネリア、菜の花、シンビジウム、プリムラ・マラコイデスでした。

これらの花は、卒業式という特別な日のために、見た目はもちろんのこと花言葉なども参考にしながら選んだ花で、自分たちで栽培計画を立てて育てました。

早いものは8月に種まきを行い、そこから3月までおよそ7カ月もの間、温室の片隅で晴れ舞台に備え、毎日の水やりや消毒などといった栽培管理を続けてきました。

卒業式で胸につけるコサージュは、卒業生と先生たち全員分をフローラルライフコースの生徒が作っています。今年も全部で180個程作りました。藤岡市で生産が盛んなシンビジウムの花をメインに据え、学校のツバキの葉と細かな花であるスターチスを脇に添えて完成です。

卒業生の輝かしい未来を祈って、フローラルライフコースの生徒が真心込めて飾り付けた卒業式は、今年も華々しく、さわやかな寂しさと清々しい感動に包まれ無事に幕を閉じました。ありがとうございました。

花ある生活を!ヒューマン・サービス科 フローラルライフコース

それでは『フローラルライフコース』についてご紹介します。
フローラルライフコースは、私たちの暮らしに彩りと潤いを与えてくれる草花園芸について専門的に学び、草花の栽培方法やフラワーデザインについて、栽培から活用までをトータルに学習するコースです。

学校内にある実習地には、フローラルライフコース専門のビニールハウスが4棟、ガラス温室3棟があり、温室の中では季節毎に旬の花が並び、年間を通して50種類にもおよぶ花を生産しています。小さいながらバラ園もあり、春には鮮やかな花々が訪れる人の目を楽しませています。

生徒たちはまず、草花栽培についての基礎を学習し、生産農家としての感覚を身に付けていきます。
1年生の後半から、種まきや鉢上げ、学校内にある花壇を利用して栽培管理の基本を学びます。『花いっぱい運動※』の一環で、花を植えたプランターを作って、施設へ持って行くこともあります。
※花いっぱい運動とは、花を植えることで町の景観を良くする目的で作られた運動で、様々な自治体で採用されている。

2年生になるとフラワーデザインが始まり、花壇をはじめ花束やアレンジメントなどといった生花を使った装飾デザイン全般を学びます。外部講師によるアレンジメント技法の授業や、国家資格である園芸装飾技能士3級の資格取得もこのコースの魅力です。

実践の場としては、国際バラとガーデニングショウ(2018年終了)や日比谷公園ガーデニングショウ、菊花展やふかや花フェスタに出品したり、大きなイベントで会場全体の飾花を任されたり、様々な施設の花壇の栽培管理を行ったりすることで、自分たちの技術を高めていきます。

また藤岡市の交流事業で、東京日本橋の三越本店前の花壇にパンジーを植えるなど、県外へ飛び出した課外活動も積極的に行っています。

3年生の研究活動では、多肉植物、キク、バラ、藤岡市の特産であるシンビジウムの栽培や活用、ハンギングバスケット、廃棄される花を再利用し、商品化するためにプリザーブドフラワーやドライフラワー作りなど、商品化を目的とした研究をしていきます。
卒業するまでには全員がフラワー装飾3級認定試験に合格し、アレンジメントに関する確かな技術を習得して旅立っていきます。

フローラルライフコースの生徒たちは、草花の表向きの華やかさだけではなく、生産する側の苦労や大変さを知ることで、一輪の花や一つの苗に自分の想いや気持ちを込めるようになり、優しく豊かな心が育まれていくのではないかと思います。

〈フローラルライフコースの目標〉
草花園芸に関して栽培から活用までの幅広い知識・技術を活用して、美しく豊かな生活環境や地域社会の創造に主体的に取り組む能力と態度を育てる。

〈フローラルライフコースで学べる専門科目〉
農業と環境、課題研究、総合実習、農業情報処理、草花、生物活用、フラワーデザイン、園芸デザイン、ファッションデザイン※ ※家庭科科目

現役生徒と先生の話

〈現役生徒 Iさん〉

――フローラルライフコースに入ったきっかけは?

昔から植物を育てることが好きで、家でアサガオとかフウセンカズラなど、色々栽培していました。決め手は、授業見学の時に先輩たちがやっていたフラワーアレンジメントに憧れたからです。その時の、バラを使った小さいアレンジメントが、とても個性的でキレイで、私もやってみたいと思いました。

――実際に入ってみてどうでしたか?

草花の栽培はもちろん、念願だったフラワーアレンジメントをすることができて楽しかったです!大会※で優秀賞をもらえたのも、作品が認められたようでうれしかったです。当日に、その場にある花材を直感で選び、デザインを一から考えていくのですが、個性的なデザインの方が好まれると聞き、先生たちとたくさん練習しました。
※令和元年度 群馬県学校農業クラブ連盟各種競技大会 フラワーアレンジメント競技会

――フローラルの文化祭はどうでしたか?

すごいですよね(笑)。コースみんなでフラワーショーを行いました。お花メインのファッションショーです。ウェディングの花嫁をテーマにした大きなブーケは、文化祭ならではの豪華さでした。しかも、そのブーケが栄えるようなドレスを着て、体育館をモデルみたいにウォーキングしたんです。もちろんブーケもドレスも自分で作りました!緊張したけど、一生ものの素敵な思い出です!

――卒業後の進路は?

美容系の専門学校にいきます。将来、結婚式場のフラワーアレンジメントや花嫁の髪型をセットしたりする仕事がしたいです。もちろん花嫁の髪には、高校で学んだ知識を生かして、私が選んだ花を飾り付けしたいと思います!

〈実習担当 峯川先生〉

――フローラルライフコースのここがスゴイ!

市内にある公共施設や病院など多くの花壇管理を任されたり、幼稚園や小中高等学校からも何かある度に鉢苗の注文が入ったり、大きなイベントの飾花を任されるなど、地域に貢献すると同時に、生徒の研究実践の場として活躍する機会がたくさんあることです。

日本橋の植栽活動は、江戸時代に絹製品の取引を通じて、三越と藤岡が深いつながりがあったことにちなんで始まった活動です。12月には生徒を連れて、三越日本橋本店前の花壇にパンジー1000株を植えました。そこでは藤岡市で生産が盛んなシンビジウムのPRとして、生徒が開発したシンビジウムの一輪挿しを無料配布させてもらいました。

――どのような生徒が多いですか?

アレンジメントの華やかさに気をとられて入ってくる生徒が多く、はじめの頃は栽培管理の地道さに驚いています(笑)。ただ、おしゃれや美に関して意識が高いので、飾り付けたりするセンスは抜群です。「キレイ」とか「可愛い」ものに対して敏感なので、栽培を通して、ますます花への愛情が深まっていくようです。面白いですよ。

コサージュの作り方

祝福や喜びの意味を持ち、お祝い事には欠かせないコサージュの作り方をご紹介いたします。

コサージュの作り方
<材料>
・ワイヤー 太さ#24
・地巻きワイヤー 太さ#24
・フローラルテープ
・リボン
・花材(ツバキの葉3枚、スターチス、シンビジウム)

<作り方>

① ツバキの葉はワイヤーをU字にし、葉の中央から根元に向かって通す(ヘアピンメソード)。
② スターチスはワイヤーをU字にして茎の根元にそえ、片方のワイヤーでぐるぐると巻き付ける(ツイスティングメソード)。
③ シンビジウムは茎を1cm程度残してカットし、茎部をワイヤーで十字にとめる(クロスメソード)。
④ ①②③の茎部をフローラルテープで巻き、茎部の長さを9cm程度に揃える。
⑤ ツバキ、スターチス、シンビジウムの順に全体のバランスを見ながら組み立てていく。慣れない場合、仮留めをしながら行うと上手くいく。
⑥安全ピンとリボンを地巻きワイヤーで付け、目立たないようにフローラルテープで巻く。
⑦茎部の長さを揃えてカットしたら出来上がり!

藤岡市一押しのシンビジウムを使ったコサージュのご紹介でした。学校では卒業式の参列者のために180個を作りましたが、あなたの特別な日に、ぜひとっておきの1個を作ってみてください。

編集後記

藤岡北高校では春夏冬の年に3回、生産物を学校内で販売する「アグリフェア」という販売会を開催しています。毎年多くのお客様が訪れ、周辺の道路に交通渋滞を巻き起こすほど大人気で、当日は先生も生徒も一丸となって運営スタッフとなり、入念な計画のもとに緊張感を持って臨んでいます。 2019年末に実施された冬のアグリフェアは、フローラルライフコースの生徒が丹精込めて作ったシクラメンが主役のイベントでした。地域の方は、そんなシクラメンに愛情を感じてくれており、毎年朝早くから大行列となっています。 今年も4月下旬には春のアグリフェアが予定されており、そこでは野菜苗が主役となります。私が担当しているフードビジネスコースの米粉パンも食べられますので、ぜひ、お越しください!

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :知恵袋

ライター情報

  • Noumusubi
  • 田中よしこ

    群馬県の高校教師。東京農業大学卒。OLなどを経て、現在は藤岡北高校勤務。生徒の「やりたい!」気持ちを引き出して、自ら挑戦する力を育てることを大事にしております。趣味はDIYと家庭菜園。ジュニア野菜ソムリエ、パンシェルジュ検定3級、大型特殊(農耕車)などの資格を持っています。

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