三ヶ日で育ったみかんはまるで愛しい子どもたち!きれいな浜名湖を守り育てるコク甘みかんの秘密
「みかんは手が黄色くなるほど食べます!」と朗らかに笑うのは髙平農園の髙平政和さん(写真右)。静岡県の浜名湖北岸に広がる三ヶ日町で育った “髙平の子どもたち”は、今年も甘~く仕上がっています。
三ケ日のみかんが美味しい理由
――「三ヶ日(みっかび)」ってどんなところですか?
三ヶ日は静岡県浜松市の浜名湖北岸に広がる奥浜名湖と呼ばれる地域で、静岡県最大のみかん産地です。
髙平農園はここ三ヶ日で1700年頃からおよそ300年以上農業を生業としてきました。
先代でみかん専業農家になり、私の代でぶどう栽培も取り入れ、現在はみかんとぶどうを作っています。
――三ヶ日のみかんが美味しいのはなぜですか?
三ヶ日のみかんが美味しい理由は、まず「土」にあります。
三ヶ日の土は、水はけが良い秩父古生層という地層からなる赤土です。果樹栽培に最適な水はけが良い土質により、濃厚な味のみかんに仕上がります。
次に「日照量の多さ」もみかんが甘くなる秘密です。
静岡県浜松市は全国でもトップクラスの日照量の多さを誇っています。太陽の光をたっぷり浴びることで光合成が盛んに行われ、みかんがぐんぐん甘くなるんですよ。
最後は「浜名湖」の存在もあると思います。
浜名湖は「汽水湖(きすいこ)」という海水と淡水が混ざった湖です。汽水湖である浜名湖は、川と海の双方から栄養分が流れ込み、栄養分が豊富な場所になります。
ミネラルたっぷりの水は、雨や潮風となって森林を巡りみかんにコクを与えてくれるんです。
実際に、浜名湖に面する南向き、西向きの園地のみかんは比較的糖度が高くなる傾向にあるんですよ。
三ヶ日の土、三ヶ日に降り注ぐ太陽の光、そして浜名湖のミネラルが、三ヶ日のみかんを甘みと酸味のバランスが絶妙なコクのあるみかんに仕上げてくれています。
愛情たっぷりみかん「小粒っ子」と「大粒っ子」
――髙平農園のみかんのご紹介をお願いします。
髙平農園ではまるで自分の子どものように、愛情を込めて果物を栽培しています。
そんな可愛い「髙平の子どもたち」から「早生みかんの小粒っ子」、「青島みかんの大粒っ子」をお届けします。
「早生みかんの小粒っ子」の一番の特徴は名前の通り「小粒」であることです。
想像より小さいみかんにお客様は驚かれるんじゃないかな。でも、実は早生みかんは小粒の方が美味しいんです。
――早生みかんは小さい方が美味しいと?
はい。小ぶりだからこそ味が凝縮され、濃厚な甘酸っぱさになるんです。
お客様からも小粒の方が美味しいというお声をよくいただきますし、うちに働きに来てくださっているパートさんたちも「小さいものをください」と仰いますね。
小粒の方が味が濃くて美味しいことをよく分かっていらっしゃるんだと思います。
髙平農園の早生みかんは、濃厚なお味の小ぶりなサイズのみかんを厳選してお届けします。パクパク食べることができて手が止まらないので、食べすぎ注意ですよ。
「青島みかんの大粒っ子」は、静岡生まれの「青島(あおしま)」という品種であることが大きなポイントです。
「青島」は静岡で生まれた品種で、三ヶ日いちおしの主力みかんなんですよ。青島みかんの生産量は静岡県が日本一を誇っています。
その特徴は濃厚な甘さです。早生みかんよりも一回り大きなサイズで、平べったい形であることも特徴です。青島みかんは早生みかんとは異なり、大粒が美味しく、お客様には大きいサイズの方が喜んでいただけています。私も青島みかんは大きい方が好きですね。
厚みのある丈夫な外皮と袋の皮、酸味を活かし、収穫後1か月ほど眠らせてから出荷します。
貯蔵、即ち熟成させることで、酸味はまろやかに糖度も上がってコクと甘みがたっぷりのみかんになります。
三ヶ日は、西日本のみかん産地よりも夜の気温が低くなる傾向にあり、昼間との気温差がみかんの糖度を高めてくれるんですよ。
それぞれに個性をもつ「早生みかんの小粒っ子」、「青島みかんの小粒っ子」。甘みも酸味もしっかり感じられるのが三ヶ日で育ったみかんの特徴です。元気いっぱいに育った自慢の子どもたちを是非お試しください。
親子二人三脚の髙平農園
――農家歴何年ですか?
19歳で就農し、現在64歳なので、果物農家歴は40年が経ちました。
農業高校を卒業後に就農してすぐに、農業は厳しい業界だなと感じましたね。
――どんなところが厳しいと?
私が就農した昭和40年代の後半は、みかんの大低迷期でした。当時のみかんの価格は1㎏あたり100円を割っていたかと思います。大暴落していましたね。
ぶどうを取り入れた複合型の農業を始めたのにはそのような背景もありました。
そこから這い上がるまで何年もかかりました。
35、6歳頃に、親から経営を引き継ぎ、一事業者として取り組み始めました。高齢になり、もう農業が難しくなったという方から少しずつ農地を借り、栽培面積を増やして収量を増やし、ようやく…でしたね。
今は、長男、次男の二人にも髙平農園の後継者として頑張ってもらっています。
――ご家族とても仲が良さそうですね!
喧嘩が絶えないんですよ (笑)。
やっぱり家族といえども一人一人考え方は異なります。でも、美味しい果物を届けたいという目標は一緒ですし、ぶつかり合いがないと目標に向かって前進できません。だからこそ意見を言い合っていますね。
きれいな浜名湖が安全な美味しいみかんを作る
――髙平農園の農法のこだわりを教えてください。
持続可能な農業を目指して、農薬・化学肥料をできるだけ使わずに栽培しています。髙平農園は静岡県エコファーマー認定農家です。
また、昨年より県内版GAPであるしずおか農林水産物認証を取得しました。
生産工程における約80個の審査項目をクリアし、安心して選んでいただける安全な農産物の生産・出荷を徹底しています。
また、農薬や化学肥料を使いすぎると、みかんの味にえぐみが出たり、糖度にも悪影響が出たりするのではないかと思いますね。
髙平農園では牛糞たい肥を取り入れているのですが、成分内容を開示できる検査済みのものを近隣の畜産業者さんから購入しています。
何を使って、どこで入手して、何が含まれているか。それらが分かるものでないとお客様に安心していただけないと考えています。
――なぜ「減農薬」で栽培しようと思ったのですか?
私が20代の頃、三ヶ日では青島みかんをブランド化していこうと、元々あったみかんの木から青島みかんへの植え替えを進める動きがありました。
そんな時、参加したある講演会で「農家が木の植え替えを進めていることで、裸地(植物などに覆われていない土がむき出しになった土地)が多くみられる。環境に悪影響を与えている。」と耳にするんです。
その話を聞いた当時の私たち三ヶ日の農家は、何を言っているんだと反発しました。
良い品種に変えていくということはスムーズな経営につながります。農業で食べていかなければならないのにそんなことまで考えられないと思っていたんです。
でも、しばらくして浜名湖を見ると、水が真っ茶色になっているんです。
当時極端な異常気象はあまりなかったのにも関わらず、目に見えて浜名湖が’汚れていました。浜名湖に面する三ヶ日の土が流れてしまっているんです。
様々な資料を集めて調べてみると、肥料の約40%は雨水で流れ、同様に農薬も流れていくというデータがありました。つまりそれらは浜名湖に流れていくんです。
それがきっかけとなり、当時講演で聞いたことは間違っていなかったのだと気づきました。そこから、自分たちの目先の経営だけでなく、持続的な環境保全を考えて取り組まなければならないと考え方が変わったんです。
同時期にテレビで東北のかき養殖の特集を目にしました。
かきの養殖のために、養殖業者さんが山に木を植えに行っているという内容です。
――海での養殖のために山で植樹を?
そうなんです。落ち葉が堆積して土になります。その腐葉土の中にはカキのえさになる植物プランクトンを育てる養分が多く含まれ、それが雨によって海に流れ、植物プランクトンが豊富な海になります。結果、おいしいかきが育つんです。
海と山はつながっている。浜名湖と三ヶ日もつながっている。安心して召し上がっていただける美味しいみかんを作るには、浜名湖はもちろん環境に優しい農業続ける必要があると考えています。
お客様の声が聴きたい!
――農業をされていて嬉しい瞬間はありますか?
お客様から感想をいただくのがやっぱり嬉しいですし、励みになります。実は、直接お客様の声が聴きたいなと思い、数年前から百貨店やスーパーなど取引先の店舗に直接立たせていただいているんですよ。
そこで、「また来年も」と言っていただけるのが一番嬉しいですね。
果物のシーズンは一年に一回なので、髙平農園のみかんを食べることを季節行事のように捉えていただいていると思うと本当に嬉しいです。
――好きな作業はありますか?
剪定作業が好きです。剪定後、暖かくなってきた春先に新芽が芽吹くんです。その青い新芽の色が大好きなんですよ。
お客様を園地に招待して実際に見ていただくというのも恒例になっています。
みかんの花満開のみかん畑の匂い、是非体験していただきたいです!
たくましく育った自慢の「髙平の子どもたち」
――今後の目標を教えてください。
みかん作りでは、お客様からの需要が大きい品種に挑戦してみようと思っています。今は和歌山生まれの「ゆら早生」が人気ですね。
ぶどう作りでは施設を増やしたり、髙平農園としては法人化も検討したり…長男、次男と一緒に髙平農園の今後について話し合っています。
栽培と経営が比例せず苦労したこともあります。
過去に、「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏のお話を聴き、農薬使用量を3分の1ほどに減らしたみかん栽培に挑戦したことがありました。しかし、私の腕では難しく失敗してしまいました。
営農を続けていくという面から、現在は可能な限りの農薬使用量削減栽培に努めています。しかし、それによりみかんの外観が悪くなり、過去には取引を断られたこともあります。
「青島みかんの大粒っ子」では、貯蔵中の防腐剤を可能な限り抑えているために、出荷できるまでにかなりの数が腐って廃棄となってしまいます。
それでも、安全安心な心のこもった果物を届けるため、これからも髙平農園は自然に寄り添った農業に取り組んでいきます。
豊かな自然の中で愛情をたっぷり込めて作った自慢の「早生みかんの小粒っ子」と「青島みかんの大粒っ子」。人と環境へのこだわりから、見た目はちょっとキズがあるなど個性的かもしれません。たくましく育った子どもたちだからこそ一つずつ愛おしい、そんな想いがこもったみかんを是非お試しください。
◎髙平農園のみかんは楽天ファーム楽天市場で購入いただけます!
編集後記
三ヶ日のみかん畑と浜名湖、関係がないように見えて繋がっている。海と森の関係性は朝ドラでの記憶に新しく、髙平さんのお話をうかがって自然は循環しているんだなと改めて感じました。
みかんもぶどうも大好きだという髙平さん、お正月になる頃には手が真っ黄色になるほどみかんを食べるのだとか。自身の作る農産物が苦手だという農家さんが多い楽天ファームですが、みかん愛いっぱいの髙平さんに思わず「珍しいですね!」と声が漏れ出た取材時間でした。
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。