赤いシャインマスカットも農薬は半分以下!岡山のぶどう農家がこだわる「コクのあるぶどう」の秘密

赤いシャインマスカットも農薬は半分以下!岡山のぶどう農家がこだわる「コクのあるぶどう」の秘密
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最終更新日:2023.10.06 公開日:2022.06.02

「赤いシャインマスカット」など岡山県でまだまだ知られていないぶどうを作るのは合同会社のふうの筒井則雄(つついのりお)さん。できるだけ農薬を使わず、何よりこだわるのは「味」だとか。その秘密を伺いました。

目次

赤いシャインマスカットも!ぶどう5種を岡山より

のどごし極上「ゆうか」メロン

――どんな果物を作っているのですか?
岡山県の勝田郡という地域で、ぶどうやブラックベリーを作っています。ぶどう歴はもう20年は経ったかな。一言でぶどうといっても、色、形、収穫時期が異なる様々な品種を栽培しています。

今回楽天ファームで販売するのは黒いぶどうの次世代品種と言われる「あづましずく」、「オーロラブラック」、お馴染み大人気の「シャインマスカット」、そしてそのシャインマスカットを親に持つ“赤いシャインマスカット”の「コトピー」、「マイハート」の5品種です。

あづましずく、シャインマスカット

<あづましずく>
種なし。巨峰に続く福島県発の新しい黒ぶどう品種。大粒で甘みと酸味のバランスが良く、巨峰よりも果肉が柔らかく皮離れが良いので食べやすい。
果汁がとても多くジューシーかつ甘すぎない爽やかな味わいなので、真夏に冷やして食べると美味しい。
昔ながらのぶどうが好きという人におすすめ。
収穫時期:8月上旬~下旬

<オーロラブラック>
種なし。ピオーネに続く岡山県発の新しい黒ぶどう品種。見た目はピオーネに似ているが、香りや食感が微妙に異なり、ピオーネより好きという人も。
プリっとした歯触りと口いっぱいにあふれる果汁感を楽しめる。
収穫時期:8月下旬~9月上旬頃

<シャインマスカット>
皮ごとOK・種なし。上品なマスカット特有の香りを持ち、パリッとした歯触りで甘くジューシーなぶどう。味や香り、食べやすさ、比較的手ごろな価格など総合点が高く大人気の品種。
収穫時期:9月下旬~10月上旬頃

赤いシャインマスカット

<コトピー>
皮ごとOK・種なし。シャインマスカットと甲斐乙女を交配して誕生した“赤いシャインマスカット”のひとつ。
果肉が程よく締まっているので歯切れが良く、ジューシーで高糖度。程よく酸味もある。
爽やかな風味はシャインマスカットより好きという人も。赤色が華やかなので贈り物にも喜ばれる。
収穫時期:10月上旬~中旬頃

<マイハート>
皮ごとOK・種なし。シャインマスカットとウインクを交配して誕生した“赤いシャインマスカット”のひとつ。
粒がハート型になっているのが最大の特徴。酸味控えめで糖度が高い。色も形も可愛らしく贈り物にもぴったり。
収穫時期:10月中旬~下旬頃

――色々な品種があるのですね!
黒いぶどう(あづましずくとオーロラブラック)と赤いシャインマスカット(コトピーとマイハート)は、ご注文時にご希望の品種をお選びいただけます。

20年以上ぶどう作りに取り組む中で栽培をやめてしまった品種もあるので、これらは厳選した品種なんですよ。

色々な品種を作ろうと思ったきっかけ

――栽培をやめてしまった品種もあるのですね?
はい、色々あります。知り合いに聞いたり、インターネットで調べたりして様々な品種を作ってみたのですが、その中には味は美味しいけれど実が割れやすいぶどうなど、作り手にとってはリスクが高いものもあったんです。美味しく、作りやすいぶどうが消去法で残ったイメージかな(笑)。

――そもそも、なぜ多品種を?
色々な品種を作ろうと思ったのは、シーズンをずらしたかったからです。
僕がぶどう作りを始めた頃の周囲の農家はピオーネの専業が当たり前で、僕もピオーネだけを作っていました。ただ、ピオーネだけだと作業をしなければいけないタイミングが一度に訪れてしまうし、収穫する時期も限定されてしまう。収穫時期が早いもの、遅いもの、色々な品種を作れば収穫時期も含めた作業適期がずれて訪れるので効率が良いなと思ったんです。

でも実際に「良いぶどう」かどうかわかるのは年単位で時間がかかります。植えた年にぶどうが実って判断できるなら良いのですが、3年程はかかってしまうので、本当に時間をかけた選定でした。

衝撃の美味しさが忘れられずぶどう農家に

「あの味」が忘れられずぶどう農家に

――農家になったきっかけはなんですか?
僕は大阪のサラリーマンからぶどう農家に転職しました。ある時、今僕がぶどうを作っている岡山県の勝田郡で作られたぶどうを食べる機会があり、そのぶどうに衝撃を受けたんです。これすごい!美味しい!こんな美味しいものが作れたらいいなと思いました。

その想いがだんだんと強まっていき、約20年前に脱サラし、大阪から岡山に移住しました。
その時はまだ20代だったので、転職することや移住することに対して何も考えてなかったんじゃないかな。とりあえずやってみようくらいの気持ちからのスタートでした。

規模を縮小されたり、辞められたりする先輩農家さんから農地を引き継いで、そこから自分で新たに植えて…そうして今の農園になったんです。

実際にやってみて感じたのが、ぶどう作りは体力勝負というより、指先の仕事が多い。毎日泥だらけになってひいひい言いながら農業をするのは僕には無理だなと思っていたので、ぶどうが合っていたんだと思います。

農薬使用量は岡山県の基準の半分以下

農薬使用量は岡山県の基準の半分以下

――実際に農業を始めてみて想像とのギャップはありましたか?
「見た目が綺麗な商品になるものを作るには農薬をかなり使わなければいけない」、「農薬を使うのが当たり前」という現実が一番の驚きでした。一般のお客さんはあんなにジャブジャブ農薬をかけているとは知らないと思います。

しかし、僕のぶどうは極限まで農薬を使う量を減らし、その量は岡山県の基準の半分以下にしています。

――農薬を使うことが当たり前の中、減らそうと?
はい。農薬を散布するときは、合羽を着てマスクとゴーグルを装着します。それでも散布する僕たち人間に全くかからないということはありません。ましてや食べ物に化学的なものをかけるという行為があまり気持ちの良いものではないなと思ったのが大きいかな。

ただ、一度大変な経験をしたので、完全に農薬をやめるということは難しいと思っています。

 ――大変な経験とは?
ぶどう作りを始めた当初、極端に農薬をやめてみたことがありました。ジベレリン処理※以外、化学合成農薬を使わずに作ってみたんです。結果、対処が難しい虫や病気が大量発生して…。
その年の収穫量はかなり減りました。そこから最低限の農薬は必要だけれども、ぎりぎりまで減らすことにしたんです。

農薬使用量削減栽培でぶどうを作っている人は少ないと思いますし、「農薬不使用ぶどう」は調べてもほとんどないと思います。それほど農薬を使わずにぶどうを作ることが難しいんです。

※ジベレリンという植物ホルモンを用いて種なしぶどうにする処理。

あえて大房に作らない!味へのこだわり

あえて大房に作らない!味へのこだわり

――筒井さんのぶどうのこだわりは?
僕のぶどうはとにかく『食味重視』。濃厚な甘さのぶどうにするため、あえて大房に作りません。房数を制限して、木に必要以上の負担をかけないようにし、1房400g~600g程度の小房中房を厳選しています。

最近は1房800g~1㎏の大粒大房のぶどうが流行っていますが、大きくなるほど味がのりにくくなる=味が薄くなる。これはぶどう農家にとっては常識なんです。

――大きい=美味しいと思っていました
もちろん、芸術品のような大きく見た目にインパクトのあるぶどうですごいと思わせるのも良いと思います。大房ぶどうを作っている人を非難しているのではなく、「大房かつ美味しいぶどう」を作ることが至難の業なんです。

赤や黒に色づく品種は、色づき具合を「甘くなった」目安にして判断できますが、シャインマスカットだと緑色なので味の確認がしづらい。だからしっかり甘くなっていなくても、見た目が立派なら売ってしまう農家がいる。そしてそのままお客様の元に届けてしまう…ということが少なからずあるのも現状です。

――肥料にもこだわりがあるのですか?
化学肥料を一切使わず、2種類の堆肥と米ぬかを毎年しっかり撒くようにしています。米ぬかを撒くことでぶどうの味にコクが出てまろやかになる気がするんです。化学的に証明することは難しいですが、米ぬかを使う前と比べると、味の平均点がぐんと高くなったと思います!

また、僕がぶどうを作る岡山県勝田郡という地域は昼と夜の寒暖差が大きいので、ぶどうが糖度を蓄えるのも美味しさのポイントです。

やるべきことを真っすぐに

やるべきことを真っすぐに

――すごい!ずらっとビニールの屋根が見えます。
僕のぶどうは加温するハウス栽培ではなく露地栽培です。当初はハウス栽培もしていたのですが、加温する時に大量に排出される黒い煙が嫌でやめました。今は露地栽培のぶどうだけです。

――ぶどう作りの1年間のスケジュールを教えてください。
品種によって時期はやや異なりますが、岡山県勝田郡の露地栽培ぶどうの1年間をご紹介します。
<4月下旬>
余分な芽を取り除き、芽の数を制限する。
<5月>
芽が伸びてきたら、枝1本に複数つく穂状の蕾を間引く。ひとつ15㎝ほどある蕾を先端3㎝を残して切り詰める。花が咲き、ぶどうらしい形になってくる。
<5月下旬>
ジベレリンという植物ホルモンに浸して種なしぶどうにする。1房についた余分な粒を取り除き、粒数を制限する。
<6月下旬>袋掛け
<8月~11月>収穫
<12~3月 >枝の剪定や施肥

「取り除く」作業ぶどう

――「取り除く」作業がこんなにあるんですね!
思ったより手をかけているでしょう(笑)?左の写真のように芽がどんどん伸び、蕾がたくさんつきます。右の写真は余分なものを切り落として先端3㎝ほどを残した状態の蕾です。

放っておいてもぶどうの房の形にはなると思いますが、「美味しいぶどう」にするためにはどれも欠かせない作業です。芽、蕾、房、粒、枝…時間と手間をかけて丁寧に選定しています。

名人の感覚で判断していると思われますが、僕はぶどう作りに「農家の勘」はないと思っています。

――ぶどう歴20年以上だと「勘」がありそうですが…
ぶどうは、「やるべきことをきちんとやる」ことさえすればきちんと実ってくれます。マニュアル的にこの作業をこの時期に行うというのが先人のおかげでもう出来上がっているんです。やるべきことを真っすぐに丁寧に取り組めば、美味しいぶどうができると思っています。

――筒井さんのこれからの目標を教えてください。
美味しいものを適正価格で販売して、お客さんがその価格で購入してくれるようになればいいなと思います。これからも人にも環境にも優しい安全安心な美味しいぶどうを届けていきたいです。

筒井さん

筒井さんのぶどう作りを支えるのは「農家の勘」ではなく、ぶどう作りに対する「誠実な姿勢」、そして20年以上かけて培った「経験と実績」でした。安全性と味にこだわった様々な種類のぶどうは、旬の一番美味しい時期に届けるために詰め合わせではなく、あえて単品での販売なんです。

大切な人との大切な時間のお供に、頑張っている自分へのご褒美に、ちょっとした御礼の気持ちに、筒井さんのぶどうはどんな時でもきっと幸せな時間を演出してくれるに違いありません。夏から秋にかけて季節と共に移り替わる個性的なぶどうたち。あなたのお気に入りを探してみませんか?

◎合同会社のふう筒井さんのぶどうは楽天ファーム楽天市場店でご購入いただけます!

編集後記

大粒で大房なぶどうを見ると美味しそうと思っていたので筒井さんのお話は衝撃的でした。筒井さんの作るぶどうの中で私が知っていたのはシャインマスカットだけ。調べてみると日本には約100種類のぶどうがあるそう。今年はぶどう沼にどっぶりはまる予定です。取材中は筒井さんの愛犬ポポちゃんが飛び入り参加しとっても癒されました。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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