中学1年生の虫博士Daiyaによる畑の生きもの調査! 農薬の有無で虫の数はどう違う?
中学1年生の虫博士Daiyaが「畑の生きもの調査」の結果をレポートします。農薬を使った畑とそうでない畑ではどんな違いがあるでしょうか。今回は僕が農業体験にいっている山梨県の早川町で調査してきました。
虫博士Daiyaが農業に目覚めたわけ
こんにちは。虫博士Daiyaです!
僕が農業を好きになったのは、小学卒業記念に、友達に誘われて「NPO法人早川エコファーム」での農業体験がきっかけです。教えてくれたスタッフの方たちが優しくて、専門性が高く、お話が楽しかったこと。実際に、作業もイキイキしてワクワクしました。
ちなみに、僕にとって畑に「虫」は欠かせません。僕は、小さい頃から昆虫が大好きだからです。
お邪魔虫(おじゃまむし)と言葉のように、「虫は畑を被害に悩ませ気持ち悪い! 」とマイナスのイメージもあります。だけど、畑や自然、そして人にとっても重要な役割を持って虫たちは生きています。だから、僕にとっては生き物や自然を大切にして行う農園の考え方が心に響いて、無農薬って面白しろそう!と、どんどん引き込まれていきました。
生きもの調査の実施方法
主に、3つの種類が昆虫の調査で使われている手法になります。
①見つけ採り:捕虫ネットを使わずに肉眼で昆虫を見つけて記録する
②スウィーピング法:捕虫ネットを振り払いながらすくいとって確認する
③トラップ法:昆虫が集まるトラップを仕掛けて集まった虫を調べる
昆虫類は日本に約3万種もいて、その数に驚かされます。個体を見てすぐに「この種」とわからないことが多いため、基本的に採集してから、生物の種名を調べます。なので、昆虫図鑑が必要です。また、昆虫の調査は、季節によって適している時間が異なります。
畑にいた生きもの分析
生き物調査と分析について、
南アルプス生態邑の環境調査員、松本哲矢さんにお話を伺いました。
――農薬の有無で虫の数はどう違いますか?
専門家による定期的な調査の結果、生きものいっぱい農園(無農薬)には、一般耕作地(農薬使用)遊休農地(荒れた畑)のおよそ3倍、280種以上もの昆虫が生息していたことがわかるデータです。
――調査をする理由は何ですか?
畑の虫数と種類の変動を調べて分析をすることで、「人と自然との共生にとって、一番良いやり方なのか」を見つけています。「調べたデータが、どうゆう風に使えるのか」が大事なところです。調べると、農薬を使わない畑作りの指針となることが活動の意義になりますよ!
――どのくらいの期間で調べているのですか?
2015年から、月に1回(3〜6時間)、1年間で12回、調査しています。
1回だけの調査だと、たまたまということがあり、連続して調査することで、平均値が出せるので、
どんな傾向かが分かり、その理由と結果が説明できます。それが継続することの大切さです。
――僕も作業に関わった大豆畑の生き物調査は?
大豆畑の虫の数と大豆の収穫量を比較したものです。
昆虫の種類の数を、大豆畑を1㎡あたりでみると、農薬不使用の方が有機農薬を使用した畑の2倍ぐらい多いです。
大豆の収量でいうと、農薬不使用だと5分の4ぐらいということがデータから分かります
虫博士という立場からいうと、虫が多い、生き物いっぱいの農薬不使用で作った畑でも、収穫量5分の4ぐらいまでしか落ちてないということになります。ここに虫との共生の糸口が少し見えてくるのではないかというデータです。
特定の虫の個体数
▶︎ ホソヘリカメムシ/マルカメムシ
→大豆にとっては害虫(汁を吸われ生育不全になってしまう)
▶︎ ナナホシテントウ
→大豆にとっては良い虫(汁を吸うアブラムシを食べてくれる虫)
「収穫量は低いけど、昆虫の数が多い」となった時に、人が、どっちを取るか?は大事な問題です。
生き物との共生は良いことだけど、それで作物を採れなかったら、人にとっては畑をやっている意味がなくなってしまう。これが、とても人と自然が共生する時に難しいところです。
――畑にとって良い虫、悪い虫とは?
人が収穫して食べたい作物にとっては、葉っぱや実を食べたり樹液を吸う虫は悪い虫(※1)という意味で、それを食べてくれる虫は逆に良い虫(※2)です。
しかし、別の視点から考えると、自然の生態系の中にとって、悪い虫たちもいないと、逆に良い虫たちは
暮らしていけません。それは食べるものがなくなるからです。
当然、それは人間も虫も同じで、生態系全体から考えると悪い虫、良い虫はいないのです。単純に、その背景を知らずに、良い悪いを判断してしまうと誤解が生まれてきてしまうので、注意が必要だと思います。
(※1)悪い虫
・ハムシの仲間、バクバク葉っぱを食べてしまう。葉物野菜にとっては、悪いダメージが大きい。
・カメムシやアブラムシの仲間は、汁を吸ってしまうので、作物が上手く育たなくなってしまう。
・コガネムシの幼虫、別名ネキリムシと言われ、根を食べてしまう。作物が枯れて育たなくなる原因。
(※2)良い虫
・捕食者と言われる虫。アブラムシを食べるテントウムシ、虫全般を食べるカマキリなど。
・受粉を助ける虫。ミツバツや蝶々など。リンゴはミツバチに受粉してもらっている。農家さんでも手作業で受粉をする人もいるが、ミツバチの養蜂箱を置いて、ミツバチに受粉をしてもらう農業をしている方が世界中にいる。
たくさんの命がめぐる工夫
農薬を使わない畑づくりの工夫について、早川エコファームのスタッフ、小河原孝恵さんにお話を伺いました。
――「化学農薬」と「有機農薬」の違いは何ですか?
「化学農薬」は、減らしたい虫以外にも効いてしまう(良い虫・悪い虫の区別なく、みんな死んでしまう)ので、環境への負担が大きく、人間の健康にも影響することがあります。
「有機農薬」は、自然由来の細菌などを利用していて、特定の虫にしか効果がなく、効き目も穏やかで、最終的には自然に分解されます。
――どんな害虫の対策を行なっていますか?
害虫を手で取ることを基本としているので、とても大変です。
また、鹿や猪からの食害などで思ったように作物が育たないなど、悪戦苦闘もありますが、農薬を使っていないため、そのような生物への影響はないので安心です。
その他、捕食者の昆虫を呼び込む草刈りの方法や、「コンパニオンプランツ(共存植物)」と呼ばれる草花を一緒に植えて病害虫の発生を抑えています。
―― 生き物を大切にした農業に必要なことは何ですか?
(1) 化学農薬を使わない
(2) 生き物の住みかを残す
(3) 人間本位で畑を作らない
元々は、生き物たちが住んでいた場所に、勝手に人間が土地を耕して追い払おうとしている行為なので、
生き物たちのことも考えることが大切です。
畑の生きもの調査まとめ
農薬を使うことで、畑の生態系や栄養素のバランスを崩す行為になることを心得て、虫の役割や性質を知ることも大切です。なぜなら、そのバランスを取り戻そうする自然界の力が働き、害虫の発生リスクが高くなって、結果的に、人にも悪影響が及ぶことになるからです。悩みのタネである害虫対策の仕方にも、いろんな方法があることを知りました。農薬を使わない、人や自然に優しい農業のことを、僕は、もっと知りたくなりました。
編集後記
取材時は、冬の虫が冬眠している時期で、虫が動き出す春が待ち遠しいです!
ちなみに、僕が大好きな虫はアサギマダラ (渡りの蝶)です。
調査・取材協力「NPO法人早川エコファーム」
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。