長野トップに輝いたシャインマスカット!夫婦のひたむきな「今」は重なり笑顔が“集う”果物を生む

長野トップに輝いたシャインマスカット!夫婦のひたむきな「今」は重なり笑顔が“集う”果物を生む
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最終更新日:2023.12.22 公開日:2023.08.09

長野県トップに輝いたシャインマスカットをはじめ、各種ぶどう、りんご、プルーンを栽培する信州中野つどい農園の関良祐(せきりょうすけ)さん、理恵(りえ)さんご夫妻。東京から長野へ移住就農した歩みを追いました。

目次

夫婦二人三脚で目指した移住就農

夫婦二人三脚で目指した移住就農

――以前は東京に?
良祐さん:
はい。僕は東京都品川区出身で、以前はアウトドア系の会社で経理の仕事をしていました。

理恵さん:
私は千葉県千葉市出身で、和裁士(着物の仕立てを行う職業)や、呉服店で営業や事務の仕事をしていました。

良祐さん:
2016年4月に、東京から長野県中野市に夫婦で移住し、果樹農家として就農しました。今年農家8年目を迎え、現在はぶどう、プルーン、りんごを作っています。

 以前の仕事は農家とは180度違いますよね。当時は都内で農業とは全く縁のない生活を送っていました。

――なぜぶどうを?

――「農業」に興味を持つきっかけはなんだったのですか?
良祐さん:
2011年に千葉の親戚の畑で野菜の収穫のお手伝いをする機会がありました。
その際、当時食堂を営んでいた実家に収穫した野菜を送ったんです。すると、「とても美味しい野菜だね!」と両親が喜んでくれたのがすごく心に残って…。
あと、事務職だったので、普段は一日中屋内で過ごすんですよね。収穫作業自体も、外の空気に触れながら身体を動かすのがとても気持ち良かったのを覚えています。

その体験がきっかけとなり、初めて“農業”というものに興味を持ち、もっと農業体験ができる場所はないか探し始めました。

――「農業体験」とはどんなものだったのですか?
良祐さん:
2012年の春、当時住んでいた東京都葛飾区主催の農業ボランティアに夫婦で参加しました。土日のどちらかを使って茨城県へ行き、お米作りや野菜作りを体験しました。

理恵さん:
東京から茨城へは高速を使って車で1時間ほど。遊びに行っていた感じです(笑)。
活動内容は、子供たちが農作業をするための準備を大人たちが行うというもので、田植え前に苗を育てたり、草刈りをしたり…竹林に入ってたけのこ掘りもしましたね!

良祐さん:
掘りたてのたけのこは美味しかったです!

そのような日々を通して、農業の楽しさややりがいを感じ、農業に対する興味はどんどん強まっていきました。
そんな中、東日本大震災がきっかけとなり、東京で暮らし続ける事への疑問、漠然とした不安が自分の中で生じ始め、「地方へ移住して農業をやりたい」と真剣に思うようになったんです。

そして、その想いを妻にも伝えたところ、快く了承してくれ、夫婦二人三脚で移住就農という夢に向かって動き始めることになりました。

就農を両親は反対…

▲写真左:呉服店勤務時代の理恵さん、右:和裁士の資格を持っている(国家検定1級技能士)

――理恵さんは、良祐さんの「農業がしたい」という想いをどう受け止めていたのですか?
理恵さん:
もともと、一緒に農業ボランティアに参加する中で「定年後に農業しようね」と二人で話していて、私も農業がしたいという想いはあったんですよね。
ただ、当時の夫を見ていて、定年後ではなく、もっと早い段階で農業がしたいんだろうなというのはよく分かりました。
私自身、やりたいと思ったことをやらないということができない性質なので、「やりたいことがあるのにできない」のはつらいだろうなと。やりたいことがあるならやろう、一緒に農業しようと思いました。

――周囲の人の反応はいかがでしたか?
良祐さん:
両親は反対していましたね。

理恵さん:
就農準備を進める上で、自分たちはもう後戻りする気はないけれど、家族に反対されたまま移住するのは嫌でした。

良祐さん:
僕の母は新潟県上越市出身で、実家が農家だったんですよ。だから、母は農家の苦労やつらさを十分わかっているし、農業は嫌だという想いから東京に出てきたというような人でした。
僕たちが移住して農業をすると伝えると、何言っているんだ、甘くないぞと言われましたね。
最終的には「(長野に)行くならお前ひとりで行け。嫁さんは置いていけ。」と言われました。「嫁には苦労させるな」と。

理恵さん:
でも、いよいよ長野に移住するという頃には「止めたってしょうがないのは分かっているけれど、止めたかっただけだから、頑張れ」って言ってくれたんだよね。

良祐さん:
僕の両親はもう他界してしまったのですが、就農後はすごく応援してくれました。ずっと喜んでくれていましたね。

ぶどう農家を志し、長野へ

ぶどう農家を志し、長野へ

――なぜぶどうを?
良祐さん:
ぶどうが果物の中で一番好きなことと、営農していく上でぶどうは単価も良いという話を聞き、「首都圏に近い場所で好きなぶどうを栽培したい」と考えていました。
2012年の夏頃から参加した移住相談会や就農相談会では、ぶどう栽培が盛んな山梨県、長野県のブースに5、6回ほど通いましたね。

――長野県移住の決め手は?
良祐さん:
長野県は、東京に住んでいた頃、旅行で何度も訪れていて、自然の豊かさが大好きでした。それに加え、ぶどうを始めとした果樹栽培が盛んで、都心からの交通の便も良い。
あとは、新規就農希望者に対する支援制度が充実していたことも大きかったです。研修制度がきちんと設けられていて、農家になるまでのレールがありました。

理恵さん:
新規就農の相談会に参加すると、「新規就農は無理だよ」「新規就農は難しいよ」と言われてそのまま東京に帰ってくる…というようなことを繰り返しました。
どこへ行っても「新規就農は簡単じゃない、難しいよ」と言われるけれど、「でも道はある」と後押ししてくれたのが長野県でした。

長野県の中でも中野市に決めたのは、里親農家さん

良祐さん:
長野県の中でも中野市に決めたのは、里親農家さんの存在が大きいですね。里親農家とは、農業研修生の受け入れをしてくれる先輩農家のことです。
ぶどう作りが盛んな中野市は魅力的でしたが、そこで就農できるかは、僕たちのような新米農家を受け入れてくれる方がいないことには決めきれませんでした。
実際に赴き、里親農家さんにお会いしたら、すごく快く受け入れてくださり、自分たちも信頼のおける方だなと感じました。
里親農家さんは、農業技術や知識、農家としての心構えだけでなく、地域の人との関わり方や暮らし方など、僕たちが不安に感じていたことを何でも教えてくださいました。

現在も、農機具を借りたり、困ったことがあった際に相談にのってもらったりと、とてもお世話になっています。

不安だった住まいも、里親農家さんの親戚の家が空き家だということで、間借りできることになりました。
また、研修中に近所のぶどう農家さんから35aほどの成木の園地を借りられることも決まりました。

そういえば移住した当時、僕たち夫婦のことが噂になっていたみたいなんです。
「都会から農業やりにきた夫婦がいるぞ」「やる気があるやつが来たみたいだぞ」というような…良い意味の噂ですね(笑)。

移住就農する上で不安だった「借りられる畑はあるのか、住める家はあるのか」という部分をクリアできたのは大きなアドバンテージになりました。タイミングが良かったのもあると思いますし、本当に恵まれたと思います。

2012年頃から準備を進め、およそ4年間の準備期間を経て、2016年4月、念願の移住就農が叶いました。

手をかけて“美味しいもの“を作る

手をかけて“美味しいもの“を作る

――栽培している果物について教えてください。
良祐さん:
今回、ぶどうは「シャインマスカット」、「ナガノパープル」、「種なし巨峰」、そして「園主の気まぐれセット」をご用意しました。
ナガノパープルは長野県で生まれた大粒の黒いぶどうで、種なしで皮ごと食べることができます。糖度が高く、甘みは濃厚なのですが後味がすっきりしており、お子様にもとても人気がある品種です。
昔ながらの巨峰は種なしなので、お子様はもちろんご年配の方も食べやすく、ギフトにもおすすめです。

――「園主の気まぐれセット」が気になります
良祐さん:
朝どりのぶどうの中から、園主が4~5品種厳選してお届けする、ぶどうの詰め合わせです。
種なし巨峰、ナガノパープルの他、ピオーネ、バイオレットキング、クイーンニーナ、黄玉などのぶどうから何が届くかお楽しみの品種おまかせでお届けします。旬の新鮮なぶどうを食べ比べできますよ。

「有機のぶどう」に挑戦

ぶどうの他には、りんご、プルーンも作っています。
りんごは、「サンふじ」と「シナノゴールド」をご用意しました。
サンふじは、日本のりんごの代表品種で、甘みと酸味のバランスが抜群、シャキシャキとした歯ごたえが楽しめるりんごです。
シナノゴールドは、甘みの中に酸味もあり、香りも良い黄色のりんごです。

生のプルーン

長野県に移住後、あまりの美味しさに驚いて自分たちでも栽培しようと決めたのがプルーンです。

理恵さん:
東京に住んでいた頃も、「生のプルーン」を食べたことはありました。
でも、その時は美味しいというより美容や健康に良いらしい、酸っぱいけど身体に良いらしいと思いながら食べていました。だから長野に移住して完熟のプルーンを食べたとき「全然違う味だ!」となって。

良祐さん:
市場に出回っているものは、早どりされたものが多く、味も香りも薄い印象があります。
僕たちのプルーンは樹上で完熟したものから順に収穫することにこだわっているので、濃厚な味わいが自慢です。

理恵さん:
甘みと酸味のバランスが絶妙なサンタス、濃厚な甘みをもつサマーキュートなどの中から、品種おまかせでお届けします。各品種、収穫できる量が少ないので、日によっては一箱に複数品種組み合わせてお届けすることもあります。
プルーンは栄養価も高く、私たちが衝撃を受けたこの美味しさを、ぜひ全国の人に食べていただきたいですね。

美味しいものを作る、良いものを作る

――栽培のこだわりを教えてください。
良祐さん:
除草剤、化学肥料は使いません。農薬も必要以上に使いません。有機質肥料と堆肥を使い、毎年畑ごとに土壌分析を行って、適期に作業を行うことを心がけています。
たくさん作ろうとすると作業に追われて慌ただしく栽培することになります。そうではなく、適正な着房数、着果量を守り、良い房、良い果実を作ることを重点に置いて取り組んでいます。

理恵さん:
そうするのは「美味しいものを作る、良いものを作る」ためです。
就農すると決めたときから、市場を通さない直接販売をしようと考えていたので、ある程度の品質のものをたくさん作るよりは、あえて生産量は抑えて手をかけることで「お客様に喜ばれる高品質な果物」を作ろうと思いました。

――こだわり故に大変なことも多いのでは?
良祐さん:
やっぱり草刈りが大変ですね。もはや草との戦いです。
除草剤を使わないので、刈払機(先端に取り付けた刃を高速回転させて草を刈り取る機械)や乗用草刈機(ゴーカートのような見た目の、乗って運転しながら草を刈る機械)を使って草を刈っていきます。
暑くなってくると草の成長が早く、一週間前に刈ったばかりなのにもう伸びている…なんてこともよくありますね。

長野県のトップに輝いたシャインマスカット

長野県のトップに輝いたシャインマスカット

――「信州中野つどい農園」の看板商品は?
良祐さん:
やっぱり、シャインマスカットですね。
2019年に「第52回うまいくだものコンクールぶどう部門シャインマスカットの部」で、僕たちの作ったシャインマスカットが、その年の最高賞である農林水産省生産局長賞を受賞しました。

これは、長野県の園芸特産振興展品評会におけるコンクールで、その年は長野県内からおよそ70のシャインマスカットの出品があり、その中で「一番のシャインマスカット」として選ばれました。
自分たちの手で苗から育てたシャインマスカットを、実がとれだす4年目で出品してみた際のまさかの受賞で嬉しかったです。

また、同年に催された「第27回JA中野市ぶどう部会ぶどうコンクール」では、種なし巨峰の部で最優秀賞を受賞しました。

長野県のトップに輝いたシャインマスカット

――コンクールの受賞歴がすごいですね!
良祐さん:
時間をかけて、手をかけて作れば、良いものができます。
就農した2016年に出品したところ優秀賞を受賞し、年ごとに受賞を重ねて、4年目の挑戦で最優秀賞をいただきました。就農初年度の新人が受賞するのはなかなかないことらしく、先輩農家さんたちに驚かれましたね。
「結構賞獲るのって難しいんだよ」「本当は難しいんだからね」なんて言われたことを覚えています(笑)。

理恵さん:
収穫できる量、着果量を減らすことで、糖度や色づきが良くなったり、玉張りが良くなったりします。逆に、房や実を実らせすぎると全体の味が落ちてしまう。
例えば、「枝のここからここまでの間の実は1個」と決めるのですが、もっと残したくなるのをぐっとこらえています。摘果作業(余分な実を落とす作業)は思い切って行いますね。 

良祐さん:
この実は自分たちで食べる用に残そうかな…なんて思うこともあるのですが、それより他の、残したい、美味しくしたい実に栄養がいくようにしよう、と意を決して落としています。

農家一年生は「今」を重ねていく

農家一年生は「今」を重ねていく

――農業の面白いところを教えてください。
良祐さん:
毎年、栽培条件が異なるので、状況に応じて様々な方法に挑戦できるところです。
例えば気象条件は毎年変わりますし、それに伴って同じ方法で作っても去年と同じものができるとは限りません。
一年一年、毎回初心にかえります。大変だけれど、様々な方法を毎年吸収して実際に試したり、また新しい方法があったら来年試そうかなと考えたり。いろいろ試行錯誤できるのが面白いですね。
農家は「毎年一年生」だなと思います。

 ――今後の目標はありますか?
良祐さん:
将来的な目標…というよりは、「今」に向き合っていくことが大切だと思っています。
とにかく、今、今、今、ですね。

今、目の前にあることを丁寧に着実に、一生懸命取り組んでいれば、5年後10年後でもうまくやっていけるのかな、良い結果が残るのかなと思っています。
今までの経験…といってもまだ就農して7年、今年で8年目ですが、今に集中していれば自ずと未来は切り拓けるのではないかと思います。

沢山の人に、僕たちが手をかけて育てた果物たちを食べていただきたいです。自信がある、「手を懸けた」という自負がある分、自信をもって出せる果物だと思います。

理恵さん:
笑顔になれる果物を作っているので、食べて、ぜひ幸せな気持ちになってもらいたいですね。

◎信州中野つどい農園の果物は楽天市場で購入いただけます。

編集後記

揺るぎない目標のもと、二人で支え合いつつ一歩一歩着実に前へ進み続けた関さんご夫妻。 そのひたむきさは、家族を動かし、移住地の人を動かし、「笑顔になれる美味しい果物」となって、多くの人を幸せにしています。 人が“つどう”、笑顔が“つどう”。その真ん中にあるのは「美味しい」ですが、「美味しい」を一際輝かせるのは、信州中野つどい農園の良祐さん、理恵さんの今を疎かにしないという真面目さなのだと思いました。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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