シンプルに「美味しい」を追求したシャインマスカット!島根から挑み切り拓く有機ぶどうへの道

シンプルに「美味しい」を追求したシャインマスカット!島根から挑み切り拓く有機ぶどうへの道
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最終更新日:2023.10.06 公開日:2023.07.20

島根県出雲市でシャインマスカットなどぶどうを中心に農業を営むのは桑本農園の桑本晶子(くわもとしょうこ)さん。「自分が食べたいものを作りたい」というシンプルな想いは有機ぶどうへの挑戦に続いています。

目次

「ぶどう楽しいよ」に誘われて

「ぶどう楽しいよ」に誘われて

――農家を志したきっかけを教えてください。
主人が、家族が食べる野菜を作ろうと家庭菜園を始めたのがきっかけです。
あるとき、多めに野菜ができたので産直に出してみたところ想像以上に売れて、それが楽しくて農業を始めました。
今は、出雲大社がある島根県出雲市で、ぶどうを主軸にレモンやにんじんを夫婦二人で作っています。

――家庭菜園から始まり、なぜぶどうを?
ある時、ぶどう農家さんとお話する機会があり、その方が「ぶどう栽培楽しいよ」と仰っていたのがきっかけです。その方も新規就農された方でした。
島根県出雲市はぶどうの産地なので、ぶどうを栽培されている方は周りに多くいらっしゃるのですが、その方たちからは「大変だ」、「儲けにはならん」といったお話しか耳にしたことがありませんでした。
そんな中、その方が仰っていた「楽しい」という言葉に惹かれたんですよね。

「ぶどう楽しいよ」に誘われて

――農業はどのように学ばれたのですか?
最初は野菜をメインに作っていたのですが、それは独学でした。初めのうちは本を読んだり、ネットで調べたりしましたね。
島根県出雲市では、ぶどう、柿、いちじくなど出雲市の特産品の栽培技術を学ぶビジネススクールが開かれており、私はそこで一年間ぶどう作りを学びました。
実践圃場での研修や座学など月1、2回の講座を受講して、修了後はぶどう農家さんのもとで一年間研修を受けたんです。
野菜を作り始めてからおよそ10年、ぶどうを作り始めてからはおよそ8年になります。

ただ真っすぐに「自分が食べたいもの」を

ただ真っすぐに「自分が食べたいもの」を

――栽培のこだわりを教えてください。
レモンとにんじんは有機JAS認証を取得して栽培しています。
ぶどうに関しても、なるべく農薬は使わず、化学肥料は使用していません。

今回楽天ファームに出品するシャインマスカットは、島根県が定める栽培指針(慣行栽培レベル)の50%削減で栽培しています。

島根県が定める栽培指針(慣行栽培レベル)の50%農薬削減

具体的には、牛糞を撒いたり、枯草をロールにしたものを堆肥化させて撒いたり…。
例えば、この牛糞は化学的な処理は施していないという資材証明がされているものを使っています。

毎年土壌分析を行い、年によって何を使うかというのは異なってくるのですが、色々試していますね。今年も、竹を粉砕したチップを来シーズンに向けて畑に撒いてみようかと考えています。

栽培方法にこだわる理由

――栽培方法にこだわる理由は?
シンプルに自分が食べたいものを作りたいんです。
先日も考えていたのですが、私たちがこだわるのって結局そこなんだなと思います。

近くにブロッコリーの産地があって、結構薬散(農薬散布)されているんです。
そこのブロッコリー農家さんは「出荷用の野菜と自分や家族が食べる野菜は違う」って仰るんですよ。
出荷用は農薬を使う。自家用はなるべく使わない。
そういった話を耳にする中で、「本当に自分たちが食べたい野菜ってどういうものだろう」と考えた時、農薬はなるべく使わないように、使わずに作った野菜や果物が良いなぁと思ったんです。

病害虫が出るのは肥料の与えすぎなど色々な原因が考えられますし、資材によって効果が変わったり、同じ資材でも使い方によって効果が異なったりすることもあります。畑によってもここは砂地、ここは泥が混じっているなど異なります。
単純に「農薬の使用回数を減らす」のではなく、あらゆる原因を想定して栽培方法を試行錯誤してきました。

あと、そうやって作った食べ物は美味しい!
力強く育ったからというか…素直に美味しいと思える、そんなものを作っていきたいと思っています。

「有機ぶどう」に挑戦

シャインマスカット

――シャインマスカットについて教えてください。
糖度18度以上という出荷基準を満たすのはもちろん、桑本農園のシャインマスカットは甘さがくどくないんです。自分自身でも思いますし、周囲からも言われます。
とにかく甘いことがアピールポイントに挙げられるシャインマスカットですが、うちのは比較的すっきりとした甘さです。
「桑本農園のぶどうを食べると他のとこのは食べられんわ」と言われたときはとても嬉しかったです。

「有機のぶどう」に挑戦

――ぶどうは他にも?
島根の特産品で紫の小さな粒が特徴のぶどう、デラウェアも作っています。
あとは、実験も兼ねてシナノスマイル、悟紅玉(ごこうぎょく)(旧名称:ゴルビー)、スイートレディ、BKシードレス、紫苑なども作っています。

―実験とはなんですか?
「有機のぶどう」に挑戦したくて…。
有機ぶどう、作っている方は本当に少ないと思います。
例えば、スイートレディはもともと無核、種なしの状態になる品種のぶどうなんです。基本的に、種なしぶどうにするにはジベレリンという植物ホルモンを使います。でも、あれって結局農薬なんですよね。
だから、それこそスイートレディは「有機のぶどう」に適しているんじゃないかと思って、今試験的に育てているんです。
それを加工するのか、生食用として販売するのか…今後のことはまだ分からない、育ててみないと分からないという状態です。

病害虫への耐性も品種で変わるんですよ。
例えば、デラウェアは比較的強いんですけど、シャインマスカットは結構弱い。

「有機のぶどう」を作るなら、品種選びがかなり大事だと思っています。でも、苗木から収穫できるまで3年はかかりますし、試してみて「ちょっと違ったな」ということももちろんあります。
試すのは3年単位で、時間がかかるというところがこの挑戦の一番大変なところですね。

試行錯誤と実体験で切り拓く道

試行錯誤と実体験で切り拓く道

――他に、大変だったことはありますか?
主に野菜ですが、どのようにして作られたかということより、まず「価格」を指摘されることですね。
地元のスーパーのバイヤーさんに「その値段じゃ難しいよ」と言われたり、商談会で「まず価格を下げてほしい」と言われたり。「値段が高い」と言われて取引できないということがつらかったです。

ぶどうは、ネット販売やカタログギフトなど個人のお客様への販売が多いので、買ってくださる方は「適性な価格のものだ」と理解して買っていただけているのかなと思います。

――栽培上苦労されたことはありますか?
自然栽培(農薬・肥料を使わない栽培方法)を試したことがあったのですが、育ちませんでした。
いざ収穫してみたらにんじんが人の指サイズで、その年は収入が減ったということがありましたね。
一口に自然栽培といっても、できる土地とできない土地があって、それも実際に試してみないと分かりません。
試してみて、うちの土地は堆肥を程よく入れないとうまく育たないなということがわかりました。

自然栽培(農薬・肥料を使わない栽培方法)を試した

――様々な方法で試行錯誤されているんですね
そうですね。最初の頃は特に色々試していました。
例えば、本に「こうしたらこうなる」と書いてあったとしても、実際やってみないことには本当にそうなるのか、分からないところがあるじゃないですか。
少し試してみて「やっぱりだめだった」だったり、また試してみて「本にはこう書いてあったけど、全然違うな」だったり。
そうやって自分たちの方法を作り上げてきました。

ぶどう栽培は「楽しかった」

ぶどう栽培は「楽しかった」

――きっかけとなった「ぶどう栽培は楽しい」は本当でしたか?
ですね、楽しいです。本当でしたね。大変だけど(笑)!
私、ぶどうって果物の中で一番きれいだと思っているんです。だから、ぶどうの実がどんどん大きくなって、色づいていく様子を見るのがすごく楽しい。

あと、ぶどうは落葉樹なのですが、秋になると葉が落ちていって、冬の間、地上の目に見える部分は何も変化がないですよね。でも、春になったら必ず芽を出す。芽吹いてから夏にかけてどんどん成長していく。
そういった一年間を通じての果樹の姿を見るのが好きなんです。

――鈴なりのぶどう畑は圧巻でしょうね!
感動しますよ!
私も研修先の農家さんの畑で初めて見た時、すごく感動しました。
店頭に並んでいるぶどうは最終形態というか…どうしても“ぶどう”というより“商品”に見えちゃうんですよね。
でも、季節を巡りつつ成長していく様子と、底知れない自然の力の凄みを感じながら見るぶどうは全然違います。私はそういうのが多分好きなんです。
忙しいと身体がしんどくなるときもあるのですが、気持ちは癒されていて、パワーをもらっている。
農業の好きなところだと思います。

株式会社維里

――今後の目標は?
「有機ぶどう」が作れたらということと、島根県出雲市の土地に合う他の果樹を見つけられたらいいなと思っています。
例えば、まだ苗木なのですが、アーモンドを植えています。アボカドも植えました、
身近にこういった品目を栽培されている方はいらっしゃらないのですが、今だとYouTubeなどでも簡単な栽培方法を知ることができたり、「この土地でこの作物を作っているんだ」といった発見を得たりすることができます。

また、他の土地と同様に、私たちが暮らす島根県出雲市でも耕作放棄地が多くあるので、そこを活用できないかなと考えています。
地元のぶどう部会というぶどう農家の集まりでは、5年後には一気に農家数が減ると言われ、高齢化を感じていますね。

自分が作った野菜や果物を食べる、すごく美味しいなと思いながら食べる、周囲の人にも美味しかったよと言ってもらえる。それが励みになって続けてきたんだと思います。そして、これからもそうなんだと思います。

◎桑本農園のシャインマスカットは楽天市場で購入いただけます。

編集後記

「自分が食べたいから作る。あとシンプルに美味しいから」。 なぜという問いに対して澄み渡るような爽快な答え。これしかないと思わせるようなすっきりとした言葉になぜか安心しました。 昨今エシカル消費という言葉を耳にする中、多すぎる選択肢と多すぎる考慮しなければならない背景の前に、「絶対」や「ベスト」を選び取るのは窮屈で苦しいと感じることがあります。 家庭菜園が楽しくて始めた農業、楽しいと聞いて始めたぶどう作り。自身の「したい」に素直に従って進んでこられた桑本ご夫妻の作る食べ物は、真にお二人が「食べたいもの」で、私たち消費者が迷わず選べるよう発光しているように思いました。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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