赤と黄色2種のキウイの食べ比べはいかが?愛媛県に移住してつくるキウイには夢が詰まっていた
愛媛県内子町に移住し赤色と黄色のキウイを栽培するのは、スマイル農園たかのの鷹野友紀(たかのともき)さん。できるだけ農薬を使わないカラフルなキウイづくりのこだわりを伺いました。
神奈川県から愛媛県内子町へ
――移住されて愛媛へ?
はい。出身は神奈川県藤沢市です。7年前に愛媛県内子町に移住し、農業を始めました。赤色のキウイや黄色のキウイをはじめ、様々な果物や野菜をつくっています。移住先へは大学の卒業式の3日後に出発しました!新車で初めての高速道路、初めての長距離運転…めっちゃ緊張しましたね。
――農業を始めた理由を教えてください
幼いころから新潟に住む祖父母のつくった野菜や果物を食べて育ちました。小学生のときに家の軒下で鶏を飼ったり、中学生のときには庭にキウイを植えたりと、野菜や果物、農業が好きでした。
大学に入ってからは、国家公務員になりたい、その中でも農林水産省に勤めたいと考えるようになったんです。アルバイトも農業に関係することをしようと思い、スーパーの青果コーナーで働き、様々な野菜や果物に触れました。
また、大学時代は自由な時間が多かったので、実家の庭で家庭菜園を始めました。じゃがいもやとうもろこしなどいろいろな野菜の栽培に挑戦しました。
――国家公務員志望から「移住」して「農家」に?
大学3年生になり就職活動が始まる頃は、公務員の道と農家の道の2つを同時進行で考えていました。公務員の勉強をしつつ、春休みなどの長期休暇を使って移住先候補を巡りました。東北は福島県、四国は愛媛県などいろいろ行きましたね。
大学4年生になり、公務員の試験が始まったタイミングで、「農家の道」1本に絞ったんです。
――ご家族や周りの人の反応は?
両親には自分の進路を全く相談しなかったんですよ。愛媛県に移住して農業をすると伝えたのは、大学卒業の1か月前でした。もちろん心配してくれていたと思うのですが、いざ伝えると「そうか~」という反応でした。
でも実は農業に関わりたいと思うようになったのは、母親がよく「これからは農業の時代だ!」と言っていたことも影響しています。母方の実家が農業をしていたこともあり、実家を継がせたかっただけなのかもしれないんですけど(笑)。もちろん農業が好きということや、果物や野菜を食べることが好きということも農業を選んだ理由のひとつです。
少しの不安はありましたが、大学のゼミの同期にたまたまトマト農家に就職する人がいて、「おおー!同志がいる!」と、とても心強かったです。
赤と黄…2種のキウイの食べ比べはいかが?
――どんなキウイをつくっているのですか?
赤色と黄色のキウイをつくっています。赤色は「紅妃(こうひ)」、黄色は「センセーションアップル」という品種です。見た目も味も全然違うんですよ。
写真が赤色のキウイ「紅妃」です。赤いといっても外見ではわからず、切ってみると実の中心の種の周りが赤くなっているんです。味は酸味がほとんどなく、とにかく甘く、美味い!そしてこのキウイは甘さに「コク」があります。キウイを酸っぱいものとイメージしていると、初めて食べた人はびっくりしてしまうと思いますよ!僕はこのまろやかな甘さが好きなので赤キウイ派です。
こちらは黄色のキウイ「センセーションアップル」です。通称「アップルキウイ」と呼ばれています。その名の通りリンゴのような形で、甘みに加えて適度な酸味があります。
実も大ぶりで、赤キウイが1個50g~80gなのに対し、この黄キウイは1個80g~150gの大きさになります。
見た目も味も異なる2種類のキウイ。食べ比べをしてみてはいかがですか?
――おすすめの食べ方を教えてください!
赤色のキウイはそのまま食べるのが一番!半分に切ってスプーンですくって食べるか、皮を剥いてスライスして食べるのがおすすめです。黄色のキウイは少し酸味があるので、食後のデザートに口の中をさっぱりさせたいときにぴったりですよ。
収穫後、追熟させてから発送するので、完熟状態でのお届けになります。追熟にはリンゴを使っています。品種や保管させる期間によって必要なりんごの量が異なってくるのですが、実際にやってみて、その加減がわかるようになりました。保存期間に合ったリンゴの量で完熟のタイミングを調整しています。
ご自宅に届いたら乾燥しないよう、暖房の風などを避け20度以下の常温で保存してください。常温で1週間以上経つととろとろに熟してしまうので、1週間以上おいておきたい場合は冷蔵庫での保存をおすすめします。
鮮やかな赤色とハート型の秘密
――すごい!とても綺麗な赤色ですね
これは赤色のキウイ「紅妃」を試しに収穫した熟す前のものなのでまだ色は薄いんです。実は、夏場の気温に昼と夜の「寒暖差」がないとこのように赤くなりません。特に夜間の気温が大切で、20度ほどに下がらないと色づきが悪くなります。去年は猛暑だったので夜もかなり暑く、この赤色がとても薄かったんですよ。逆に今年は完全に赤いです!そしてこの寒暖差があることで甘さが実に蓄えられて、糖度が高くなるんです。
また、キウイは写真のように中心が白いのですが、切って断面を見てみるとこの白い部分がハート型になっていることがあります。それを探すのも楽しいのでおすすめですよ。
がまんが勝負のふかふかの土
――キウイ栽培のこだわりを教えてください
できるだけ使用する農薬を削減して栽培しています。実は、僕があまり農薬を使わないのは「面倒くさがり屋」の性格が始まりなんです(笑)。「農薬を使わなくて大丈夫なら使わなくて良い」という考えで、何をつくるにしてもまず農薬を使わずにつくってみます。実際にやってみた後で、対策が難しいと判断した病気や虫に対してのみ、農薬を適量使うようにしています。
――大変だったことはありますか?
キウイづくり最初の年に、追熟させようと保管している間に菌が原因でほとんど腐ってしまったことがありました。虫にやられてしまったり、天候の影響を受けたりと収穫までいたらないこともよくありましたね。
また、キウイの受粉は咲いた花に手作業で花粉をつけているのでなかなか大変です。花粉も自分で雄木を育て、そこから花粉をとっています。1つのコンテナにいっぱいになるまで雄花をとり、そこからとれる花粉は数gです。受粉させる花はなんと4万個もあります。1週間後には実がつくのですが、それを収穫までに半分ほどまでに減らすんです。これを摘果(てきか)といいますが、こうすることで、厳選した実が一層大きくなり、栄養がより行き渡るようになります。
――これは!という工夫はありますか?
春は草刈りをしないようにしています。なぜかというと、この草が夏になると枯れて倒れ、地面を覆ってくれるようになるからです。写真は夏に撮影したものですが、枯れた草があることで雑草が生えてくるのを防いでくれているのがわかると思います。また、この草は、土が流れるのを防ぎ、ふかふかの土を保ってくれるんです。ふかふかの土が美味しいキウイをつくります。草が生えてくる4~6月頃に農作業が忙しくなってくるので、他の農家さんは煩わしく感じてすぐに草刈りをしてしまいます。そこをがまんして草をあえて残しておけるかというのがポイントです。
また、美味しくなるようにと願いながら、自然由来の堆肥をたっぷり撒いています。
自作「アーチ型の棚」で育つ極上キウイ
キウイは一般的に「平棚栽培」と呼ばれる方法でつくります。この写真は平棚栽培のキウイです。でも僕は、この棚をアーチ型にしているんです。
――「アーチ型」には何か理由があるのですか?
平棚作業の場合、作業中ずっと上を向いていなければならないというデメリットがあります。また、平棚の広さ分だけ枝が広がっているので作業が行き届かないところが生まれることがあります。そこで、作業のしやすさと、作業の漏れ防止を目的に、自分でアーチ型の棚をつくりました。一般的な平棚より資材費がかかるので、このような棚で栽培する人はほとんどいないと思います。
ですがこうすることで、作業が直線的にできるようになるんです。草刈りもアーチの中を真っ直ぐ進めばよいのでやりやすく、木もアーチに沿って真っすぐに植えることができるんですよ。
また、平らよりも半円のほうが表面積も大きくなるので、光がよくあたり、甘いキウイが育つんです!
宝石キウイに夢をのせて
――5年後、10年後の夢を教えてください
農業という仕事が子どもの「将来なりたい職業ランキング」の上位にランクインすることが夢です。農業は自分のペースで仕事ができ、何をつくるか、どのように売るかなど全て自分次第。風が吹く青空の下、自然の中で仕事をしているととても気持ち良く、景観も創造している大切な職業だと思っています。
「農業は大変ですね」と言われたら「いやいや、楽しく儲けているよ!」と答えられるようになるために、より美味しいものをつくりたいです。良い品質のものをつくれば、必ず誰かが評価してくれます。良いものをつくって、それを売って、を続けていくしかないと思います。また、日々の作業も「今日はここまでやれた!」と楽しんでやっています。楽しんで仕事をしていれば、それこそ人から見て憧れる職業になるのではないかなと思っています。僕は趣味が仕事なくらいです。
あと、僕の農地はほとんどが耕作放棄地を再度開墾したところなんです。耕作放棄地をできるだけ減らしていきたいし、これから農業をしたいと思っている人の支援もしていきたいと思っています。
地元の神奈川県藤沢市は人口が増え続け、今は約44万人なのに対し、愛媛県内子町は人口が減っており今は約1.6万人です。何十万人分の1人と1万人分の1人では、1人の行動に対する価値が異なってくると思います。それだけ活躍できるチャンスがある!移住して農業するのは魅力的ですよ!
スマイル農園たかののキウイは、宝石箱をデザインしたかわいい箱に入れてお届けします。梱包には愛媛県の地方新聞を使いますので、キウイと一緒にのどかな愛媛県の空気もお楽しみいただければと思います。ぜひ赤と黄色の2種類のキウイを食べ比べしてみてください。
◎スマイル農園たかのの「赤黄キウイ2種セット」は楽天ファーム楽天市場店でご購入いただけます!
編集後記
なぜ愛媛県に移住を決めたのか尋ねると「特別な理由は必要ないと思っています。星が綺麗だったからとかそんなものでいい」との返答。あまりに単純で爽快な回答に痺れました。何か始めたい、やってみたいと思ったときにいつから迷うになってしまったのだろう…と人生を回想。「農家になって幸せ。後悔はない!」キウイを愛おしそうに見つめながら未来を語る鷹野さん、とても素敵です!
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。