なぜ農家に?沖縄に移住しデザイナーから転身。吉見 真一さんの人生を変えた瞬間

なぜ農家に?沖縄に移住しデザイナーから転身。吉見 真一さんの人生を変えた瞬間
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2019.10.17

いつも明るいRakuten Ragri(ラグリ)契約農家の吉見さんですが、8年前は都暮らしのデザイナーだったのだそう。なぜ沖縄へ移住して農家に?今回は沖縄の畑まで赴き「ハンサムパイン」農家さんの一日に密着しました。

吉見 真一さんの人生を変えた瞬間とは

――新しい再出発。今の自分に導いた人との出会い・転機となった出来事は?

マンゴーの花(写真左)と、完熟したマンゴーの実(写真右)は柔らかく、手で皮がむけます

それは、マンゴー農家の師匠(オヤジ)と出会った瞬間です。28歳で農業大学に入学し、実習生として農家で2カ月間働くプログラムがあり、私は、マンゴー農家へ派遣されたのですが、なんと初日に社長から「お前この農園を継げ。跡継ぎがいない」と言われました。正直、驚きましたよ!
いったん断りましたが「なぜ初対面で、しかも経験のない青年にこんなこと言うのかな…」というのが心に引っかかり、また不思議にも「社長ってどう動くんだろう」という自分の中の好奇心がうずき、結局は卒業後もそこに就職しました。

オヤジはやっぱりスゴイ! 一緒に働かせてもらう中で社長の人間性と温かさに惹かれ自然と“オヤジ”と呼ぶようになりました。
口頭での指示はとくになく、オヤジの背中をみながら多くのことを教わりました。普通の農家との違いは「時間がコストになる」ということ。例えば、農作物の紐をひとつ結ぶのも一発で。仕事にかける時間の使い方や手際が大切で、なんでも一発で仕留めるようたたきこまれました。

運命だと感じたのは、本来は研修先がこの会社ではなかったこと。当初予定していた農家が1週間前に変更が生じてこの会社に行くことが決まりました。
実習時代に言われた「社長になれ」という言葉。結局自分に自信が持てずウジウジしていたから「俺にはできない」と思った、あの頃の自分。 あの時の言葉と、働きながらオヤジから学んだことが、今の自分を作ってくれたし、今も一生の宝物になってます。

農業への情熱はいつから? 農家になったきっかけは

――吉見さんが農家になるまでの経歴・経緯をお聞かせください。

2019年9月17日、地元沖縄のお気に入りのビーチにて取材

2019年9月17日、地元沖縄のお気に入りのビーチにて取材

1983年に奈良で生まれ、大阪で育ちました。公文やピアノ、水泳などの英才教育を受けながらも、どこかで学校教育の違和感を感じていて、常に生き方を探している少年でした。そして、デジタルハリウッド大阪校の3DCG学科を卒業し、3DCGデザイン会社に就職しました。その後、大阪や東京でデザイナーとして活動している時に、2011年3月11日に発生した東日本大震災に遭遇。自分はこのまま都会で人生を終えていいのか、家族のことや、命についても真剣に考えるようになりました。

そして親戚がいる沖縄への移住を決意し、沖縄産業開発青年隊に入隊しました。そこで出会った先輩が農大生で2012年に沖縄県立農業大学校へ入学しました。自分は創り出すことが生業のデザイナーだったので、生命の源である作物を生み出す農業については強い関心と探究心が芽生えました。大学卒業後は、農業法人 あけのフルーツ入社し園長に就任。2017年から独立し、現在は沖縄農村事務所を開業しています。

沖縄への移住・就農について

――移住されたとき、事前準備や家族・生活・収入面など、変わった点はありましたか?

吉見さんの農園にて。パイナップルの他、やんばるマンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツなど育てている

吉見さんの農園にて。パイナップルの他、やんばるマンゴー、パパイヤ、ドラゴンフルーツなど育てている

移住してから農家として安定するのに8年かかりました。正直、家族の理解がないと農業は厳しいと思いますよ。いったん収入も下がりましたし。独立するにしても未来が成功しているかどうかはわからない。人生を変えるには、崖から飛び降りる覚悟で、だったら飛び込んだほうがいいと自分は決心しました。

――農家になってみて実際はどうですか?メリットとデメリットは?

農業をやっていて一番うれしかったことは、感謝されて、さらにお客様を呼んできてくれることです。人とのつながりが生まれます。逆に、やってみて気づいたのは、農業はやりすぎてしまう場合が多いということ。体が資本なので、適宜休憩はとるようにスケジューリングしています。

あとは慣れるまで「メンタルの自己コントロール」が大変かもしれません。たとえば、台風などの自然被害や害虫害獣の被害で一生懸命育て上げた作物がダメになってしまうこともあります。そんな時こそ、ダメダメって顔(表情)をしないこと。作物が壊れてメンタルまで持っていかれると一番壊れるのは自分です。良い時も悪い時も、笑顔で「おはよう」って言えると強い。経営者として諦めずにやり続ける。今やれることをしっかりやるのが大事だとおもいます。

――ひとりで農作業をしていると煮詰まったりしませんか?

私は、地域貢献のアースリーダーをしていて、農大の学生たちや主婦のボランティアスタッフが、週に数回手伝いに来てくれます。朝一緒に体操したり、労働のお礼に畑で収穫したフルーツを持って帰ってもらったり、みんなでワイワイ楽しいですよ。あとは、なぜか「農家女子会」に入ってます(笑) つながりっていいもんですね。毎日畑につきっきりというより農業はシーズンがあるので、必要な時にがーっとやって、その他の時間はなるべく農業以外の仕事や、人間関係を入れると、自分の視野も広がるし気分転換になるのでおすすめです。

――これから農家になりたい人たちへアドバイスをください。

自分が農業で学んだのは「言葉ではなく、目線で感じ取る」ということ。農業という仕事は単純でもないし、「チームで作るという目標」に向かっていける。その中で自分の居場所を作っていく。それが学ぶということだと感じています。たとえば、日本人が海外へ行き、農業支援をしていますが、壁にぶち当たるケースも少なくないと聞きます。海外のやり方に合わせて作物をつくるのではなく、日本のおもてなしマインドを伝えて、それがいいんだよという世の中をつくっていくとよいのではないでしょうか。これからの時代は農業が重要になってくると思うので、一緒に頑張りましょう!

「ちばりよー!」農業男子のボランティアスタッフたち

「ちばりよー!」農業男子のボランティアスタッフたち

吉見さんのDAYタイムスケジュール

ラグリの契約農家になってみてどうですか?

――ラグリに「師匠」と慕うファンのお客様もいるそうですね。中でも一番うれしかったコメントは?

掛け合いがユニーク! 六花白兎さん、とさっこさん、cobaさんとのラグリ成長履歴

掛け合いがユニーク! 六花白兎さん、とさっこさん、cobaさんとのラグリ成長履歴

ラグリでは、現在(2019年9月17日)70~100名くらいのお客様とやりとりがあり、その中でも5名のユーザーさんがリピートしていただいてます。毎日、成長履歴の写真やメッセージを送ったり、お客様にお返事するのが、毎日楽しくって! コメントに料理写真やお子さんの写真を添付してくれる方とか、そりゃもう、うれしいですよ!!みなさん素敵なのであえて選び難いですが…。特に印象深かったのは、六花白兎さん、とさっこさん、cobaさんです!いつもありがとうございます。

――ラグリについて、よかったことや改善点もおきかせください。

自宅で畑とつながる」というコンセプトがいい。楽天というネット販売を生かしたOne by Oneのビジネスモデルと、畑で食べる感動を伝えたいから、完熟にこだわり、旬なうちにお届けしたいという自分の「畑から食卓へ」という農業スタイルが見事にフィットしました。今の時代、インターネットとクール便のおかげで、畑から2~3日後にはお客様の食卓にお届けすることができます。私のビジネスは時間を販売してるし、ラグリの仕組みはそれを叶えてくれています。

改善点をあげるとしたら3つ。1つ目はみんなで収穫を楽しめるように動画でリアルタイムに入札ができる「ライブコマース」があるといいな。2つ目は旅と収穫体験の思い出作り。旅行がてら美しく自然が豊かな沖縄へ、作物を一緒に育ててきお客様に畑まで収穫にきてほしいです。あとは「農泊」、農業の体験宿泊もやってみたいです!

――畑から動画配信したり、ネッタちゃんを作ったり、斬新でユニークなことをし続けるのはなぜですか?

売り方の勉強になるからです。沖縄っぽく陽気に話してみたり、作物のキャラクターを使ったりする一方で、うちの作物は安くはないのでPOPになりすぎるのも良くない。
柔らかくしつつこだわりの逸品という見せ方にしたり、日々試行錯誤しながらアピール方法を試しています。ま、デザイナーだったのでクリエイティブなことが好きなんですよね(笑)

――お客様とのつながり方がとても上手な吉見さん。日頃のコミュニケーションで工夫していることはありますか?

まずは、ラグリの成長履歴のやりとりを丁寧にわかりやすくするように心がけています。次に、楽しくして飽きさせないこと! お客様の空気を読み取りながら友達のように説明したり、絵文字を使うようにしてます。梱包や配送の時は、沖縄風のラッピングをしたり、畑の写真でポストカードを作ったり、手書きで「ありがとうございます」の手紙をいれたり、ちょこっとサプライズを演出してます。

ちょこっとサプライズの一例

ちょこっとサプライズの一例

今後の展望は「農業×教育」

他県から来た人が沖縄のローカルコミュニティーで新しいことを始めることはドラマティックな反面、苦労も多いかと思います。自分が農家になって学んだり体験してきたことを伝えて、沖縄で農家になりたい後輩を育てていきたい。そしてそのマネージメントのナレッジを世界に向けて、世界と作り、世界と食べ、世界を学んで、また世界と農業を作る。その循環を生み出し、しっかり作っていきたい。

お知らせ
前編は「ハンサムパインがハンサムな理由は?沖縄で取材!完熟の甘~い秘密」を紹介しました!(記事は2019年10月10日配信)こちらもご覧ください。

編集後記

「旅行もかねて、収穫体験しに沖縄に遊びにきて~!」とメッセージをくれた吉見さん。細部に渡るモノづくりのこだわりや、ヒトとの出会い、試行錯誤しながら見つけた働く上での宝物についてお聞きするうちに、取材を通して、吉見さんの屈託のない笑顔の裏側に隠された、一筋のぶれない軸に触れた気がしました。新しい人生を切り開く勇気とチャレンジってやっぱり、すごい!若い農家さんの生命力あふれる熱いパワーが伝播してきました。沖縄の農業のこれからがますます楽しみです。(担当:Kika)

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • Kika

    農むすび編集部。兵庫県出身。祖母は愛媛のみかん農家。段ボール箱で毎年みかんが届き1日10個以上食べていた。趣味はARTと旅とワイン。金融から農業のメディア編集にチェンジ。農家ってカッコイイ!子供たちが憧れる職業となるよう、農家さんの人生に向き合い、心に響く記事作りを心掛けている。