樹上完熟“萩本農園の柿”を全国へ!奈良県の農家5代目が貫く美味しさと安全の「こだわり」とは?

樹上完熟“萩本農園の柿”を全国へ!奈良県の農家5代目が貫く美味しさと安全の「こだわり」とは?
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公開日:2022.08.05

萩本農園の萩本賢一(はぎもとけんいち)さんは約100年続く柿農家の5代目。柿の産地奈良県五條市で、周囲に数百軒ある他の農家とは一線を画すこだわりの農業を貫いています。萩本さんの今とこれからに迫ります。

目次

一通のハガキから柿農家の5代目へ

一通のハガキから柿農家の5代目へ

――柿農家の5代目とうかがいました。
はい、柿が特産の奈良県五條市西吉野町に柿農家の長男として生まれ、僕で5代目です。でも、最初は「農業なんて絶対に継がない」と思っていました。

――それはなぜですか?
周囲には数百軒の柿農家がある地域で、周囲からは僕が家業である農業を継ぐことが当然と思われてきました。自分の職業や人生を他人に決めつけられる、自分で選ぶことができないという田舎の考え方がすごく嫌だったんです。
中学生になる頃には「家の農業を継ぐ気はない」と周りにも言っていましたね(笑)。

そんな中、車好きの父に連れられカーレースの試合を観戦する機会がありました。僕はその日から車とモータースポーツに一気にのめり込み、高校に入学する頃にはモータースポーツに携わる仕事をすることが夢になったんです。
そして高校卒業後は専門学校で車のメンテナンスを学び、希望の就職先でのインターンシップを経て、ほとんど内定をいただいていました。

――車のお仕事から農家を志すきっかけが?
この頃の僕は、朝6時に家を出て車と電車を使い片道2時間かけて学校に通い、夕方は学校から直接アルバイトへ行き、深夜に帰宅するというような生活を送っていました。

そんなある日、いつも通り深夜に帰宅すると、テーブルの上に置いてある1枚のはがきが目に入ったんです。なんとなく見てみると、そこには萩本農園の柿を買ってくださったお客様からの感謝の言葉がつづられていました。

「本当に美味しかった。ありがとう」
という言葉を目にした僕は、初めて「農業」に興味が湧いたんです。

農業に対して作物を作るだけ、全て畑で完結しているというイメージを持っていた僕にとって、お客様のもとに届き、生産者のもとにこのように直接メッセージが届くということは想像もしていなかったことでした。農産物を作った先に食べてくれる人がいるということを全く意識したことがなかったんです。

萩本農園について

そこから、萩本農園について、自分の家の農業について調べてみることにしました。調べていくと、周囲に数百軒ある柿農家のほとんどが出荷組合に属して柿を出荷しているのに対し、萩本農園は組合には全く属さずに独自のこだわりの農業を貫いて、柿を出荷していることを知りました。

また、父が農業についてインタビューを受けている記事で、「子どもが萩本農園を継いでくれるか不安だが、継ぎたいと思ってくれるようなかっこいい農家を目指している」という言葉を見つけ、このまま農業をしないままで良いのか、本当に自分がするべきことは何なのかと考えるようになったんです。

そこから一気に僕の中で農業という存在が大きくなり、かなりの短期間で農業を継ぐことを決めました。専門学校卒業と同時に実家の柿農家に就農し、今は6年目になります。
もし僕の家がいわゆる一般的な柿農家で出荷組合に出荷している農家だったなら、農業を継いでいなかっただろうなと今でも思います。

萩本農園は「見た目」ではなく、「味」と「安全」にこだわった農業

――組合に出荷することと自分の農園で出荷することの違いは何ですか?
収穫後は自社ですぐに選別・梱包作業を行うので無駄な工程を省くことができ、発送までの時間を最小限に抑えられます。よって完熟の状態で収穫することができるんです。

また、萩本農園は「見た目」ではなく、「味」と「安全」にこだわった農業をしています。
具体的には農薬の使用を可能な限り抑えて、除草剤は不使用※、肥料に関しては化学肥料を一切使用せず、農園専用に調合した有機質の肥料のみを使っています。

でも、このようなこだわった農業をしているのに組合に出荷してしまうと、慣行農業(化学合成農薬や化学肥料を使用する一般的な農法)で作っている柿と一緒に「その産地の柿」として販売されてしまいます。一方で、組合に所属せず直接お客様と取引させていただければ「萩本農園の柿」として販売できます。
栽培、収穫、発送に至るまで直接責任がかかってくるのですが、言い換えれば美味しいものは「美味しい」と、悪いものに対しては「美味しくない」と直接評価していただけるので、モチベーションにもつながるんです。

※圃場を囲う獣柵(獣の侵入を防ぐ柵)周辺は刈り払い機での草刈り作業が危険なため、除草剤を使用している。圃場内では一切使用していない。

30年以上循環させてきた土壌が生む高糖度の柿

30年以上循環させてきた土壌が生む高糖度の柿

――栽培している柿について詳しく教えてください。
2種類の柿と柿の加工品であるあんぽ柿、干し柿、少しですが梅も作っています。

 ●刀根柿(とねがき)
フルーティな甘みで、種なしのため食べやすいのが特長です。
実はこの刀根柿は樹に生っている状態では渋く食べられないのですが、収穫後に「渋抜き」と呼ばれる作業をすることで美味しく食べることができるようになります。

  ●富有柿(ふゆうがき)
濃厚な甘みを持ち、柿と言えば富有柿と仰る方も多い品種の柿です。刀根柿と異なり、種が入っていることが多いのですが、樹に生っている状態から既に甘く、糖度がかなり高いんです。
果汁感があり、熟してくるとねっとりした食感になります。
また病害虫に特に弱く、萩本農園のこだわりである農薬使用量削減栽培が難しい品種でもあります。

萩本農園の柿はどちらの品種も、柿の平均糖度より高いと思います。
一般的に刀根柿は糖度14度、富有柿は糖度15度~16度と言われていますが、萩本農園の柿は刀根柿が糖度15~18度、富有柿は糖度18~20度が平均になってくると思いますね。
富有柿では糖度22度を超えることも珍しくないくらいです。

萩本農園専用の有機質肥料

――甘さには「こだわりの農法」が影響しているのですか?
そうですね、何が一番影響しているのかははっきりとは分かりませんが、除草剤を使わず草刈り機を使用した手作業で除草をすること、そして有機質の肥料を使用していることが大きいと思います。

除草剤を使わずに草を刈ることで、刈った草を微生物が分解する自然のサイクルが土の中で盛んに行われ、良い土壌になっていきます。そこに萩本農園専用の有機質肥料を与えます。この肥料は土壌の成分や昨年の柿の収穫量や品質の結果を見ながら毎年微調整しているんですよ。

この土作りの循環を30年以上続けていることが味に影響を与えているのだと思います。

実際に、一般的には有機質肥料を施肥すると後約1か月後から効果が出ると言われていますが、萩本農園では施肥後約2週間後で雑草が青々と生長するんです。

樹上完熟!何より美味しさにこだわった渋抜き法

樹上完熟!何より美味しさにこだわった渋抜き法

栽培部分だけでなく刀根柿の「渋抜き」の方法にも萩本農園ならではのこだわりがあります。

――そのこだわりを教えてください!
渋さの原因は「タンニン」という成分なのですが、渋抜きはこの成分を無くすのではなく、水溶性から不溶性に変え、口の中で溶けないようにする=舌で渋さを感じなくなるようにする工程になります。

渋抜きの方法には「炭酸ガスを使用する方法」と「アルコールを使用する方法」の2通りありますが、萩本農園ではアルコールを用いて渋抜きを行っています。

炭酸ガスを使用する方法は、柿の見た目を綺麗に保った状態で渋抜きできるのですが、柿の風味が失われてしまいます。
一方でアルコールを使用する方法は、表面に黒い筋が入り見た目が悪くなってしまうことがあるのですが、風味が抜けにくく食味が良いとされています。

おおよその出荷組合では、柿が黒くなり見た目が悪くなるリスクを避けるためアルコールではなく炭酸ガスを使用しています。またしっかり渋を抜くために、炭酸ガスやアルコールを注入した後に温度を上げる工程があるのですが、一気に温度を上げると柿の表面が結露し、これもまた見た目が悪くなる原因になります。出荷組合では結露を防ぐため、数日かけてゆっくり温度を上げて渋抜きを行います。

熟した柿を時間をかけて渋抜きすると熟が進みすぎてしまうため、渋抜き工程で熟が進み過ぎないように、一般的な柿農家は真っ青な柿でも収穫してしまうんです。

萩本農園では、およそ1日あれば渋を抜くことができる設備

――真っ青な状態で収穫された柿でも甘くなるんですか?
青いまま出荷しても美味しい柿ももちろんあると思うのですが、あまり美味しくないと思います。

萩本農園では、およそ1日あれば渋を抜くことができる設備が整っています。だから樹上でしっかり完熟した状態で収穫できるんです。風味が全然違いますよ。

多少黒くなっているのは、見た目より味を重視した「美味しさの証」です。
収穫期の最後、10月中旬頃の刀根柿はびっくりするほど真っ黒になってしまうのですが、僕はその頃の刀根柿が柿の中で一番好き。いわゆる訳あり商品ですが、本当に美味しいんです。

サクサクねっつりお好みで!柿農家の意外なアレンジ料理

サクサクねっつりお好みで!柿農家の意外なアレンジ料理

――保存方法やおすすめの食べ方を教えてください。
ご自宅に届いたら、袋に入れて密封して冷蔵庫の野菜室に入れていただくと日持ちは伸びます。
基本的には届いたその日から召し上がっていただけますよ。中にはやや若い実もあるのですが、そういったパリッとしたサクサク食感の柿が好きな方もいらっしゃるので、好みで早めに食べたり、ねっつり柔らかめが好きな方は日を置いてみたりしてください。

冷凍することもできますが、一度凍ってしまうと解凍後は果肉が柔らかくなってしまうため、半解凍状態でスプーンを使ってシャーベットのように召し上がっていただくのが良いと思います。

食べ方は…薄く切って薄力粉をまぶして揚げるのもおすすめです。

 ――「柿の天ぷら」ですか!?
天ぷらというより素揚げに近いイメージかな。色々試した中でその食べ方が美味しかったんです。食感が少し柔らかくなって若干ホクホクするというか…「すごく甘いさつまいもの天ぷら」に近いかも(笑)。
厚さはお好みで、衣はてんぷら粉でも良いと思います。ちょっとだけ塩をつけても良いかもしれません。

後は、葉物系のサラダのアクセントにしたり、ポテトサラダに入れるのも良いですね。あんぽ柿はクリームチーズとの相性抜群ですよ。

 でもやっぱりそのまま生の状態で召し上がっていただくのが一番美味しさが感じられると思います。
しっかり冷やしても、あえて常温でも、お好みでどうぞ!

収穫までの“10か月”で決まる柿作りの一年間

収穫までの“10か月”で決まる柿作りの一年間

――柿作りの一年間のスケジュールを教えてください
収穫作業が10月から12月頃まで続き、その後は剪定に入ります。3月末頃まで剪定作業を行い、終わるとすべての圃場の草刈りを約2週間かけて行います。
4月の中旬に入ったら約1か月間摘蕾(蕾を間引く作業)作業を行い、梅の収穫期に入ります。

夏の間は、摘蕾の見落としがないかチェックしつつ、実がついた後に実の重みで枝が垂れ下がってこないよう、下から棒を設置して支えていきます。これを次の収穫期が始まるまで続けます。その間にも草刈りを2回は行うんですよ。

柿の収穫期は約2か月、剪定の重要性

――剪定作業を行う期間が長いんですね?
そうですね。基本的に、果物の収穫量や1個当たりの大きさは剪定作業で決まるので大切な作業です。

――枝の状態で決まるんですか!?
剪定の重要性は果樹に共通していると思います。切った枝からどのくらい新しい芽が伸びるかを想像しつつ、木全体に日光が当たるようにしなければいけません。就農した当初はむちゃくちゃな剪定をしていましたね(笑)。今は蕾なども見つつ、「この蕾だったらこれくらい木が生長して、これくらい実がつくかな」ということが想像できます。父の見様見真似で学んでいきました。

柿の収穫期は約2か月と限られていますが、良い果実を収穫するためには、それまでの約10か月は直接収入には繋がらないメンテナンス作業をしなければいけません。その間も立派に実った柿を想像して一切手を抜くことなく仕事をするようにしています。

仕事以外のことでも、結果だけでなく、結果までのプロセスを大切にするようにしていますね。

「美味しい柿といえば萩本農園」を目指して

「美味しい柿といえば萩本農園」を目指して

――萩本さんの思う農業の面白いところ、良いところは?
「ゼロからつくる」というところですね。一言で物作りといっても材料を加工する物作りとは異なり、農業は種をまいて、そこから野菜ができて…と本当にゼロの状態からのスタート。それってよく考えてみたらすごいことだなぁと思います。
また、食べ物を作るということは人間が生活する上で絶対に必要なことなので、農業という仕事に誇りを持っています。

お客様から「柿が好きでずっと食べてきたけれど、こんなに美味しい柿は初めて食べたわ」とハガキを通じてメッセージをいただいたときは嬉しかったです。また、アレルギーをたくさん抱えており、柿が好物で食べたいけれど普通の柿は食べられないという方に「萩本農園さんの柿やったらアレルギーでえへんわ」と言われたときも嬉しく、印象に残っています。

農業をしていて一番嬉しいのは、やはり「美味しい」というお声をいただくことです。ありがたいことにお手紙、メール、お電話などでたくさんのお客様から「美味しかった」というご連絡をいただくことがあります。その瞬間は何にも代えられないですし、やりがいになりますね。

「美味しい柿といえば萩本農園」を目指して

――今後の目標を教えてください。
今後は、温暖化などの影響で更に、萩本農園の「農薬を可能な限り抑えたこだわりの農業」を続けていくことが難しくなっていくと思っています。実際に、年々カメムシ被害(見た目が黒くボコボコに、中身もスポンジ状になってしまう)が増えており、多い年では数百㎏もの柿を廃棄することもあります。一年間丹精込めて育ててきた柿を畑に捨てる瞬間が間違いなく一番つらい。
でもどんな状況になろうとも、僕は今までのこだわりを辞めようとは思っていません。

どのような状況になっても、自信をもってお客様に食べていただける安全で美味しい柿を作り続け、「美味しい柿といえば萩本農園」と言ってもらえるような柿のスペシャリストになるのが目標です。

まだ妄想している段階ですが、いろんな農作物を少量ずつ農薬不使用であったり、農薬使用量を削減したりといった方法で作り、それをお客様に食べていただけるようにしたいです。ちょっとしたお店を作り、その裏で野菜や果物を作って、その様子を見てもらいつつそこで収穫できたものを食べてもらえるような…いつかやりたいと思っています。

日本の農業は、今でも人手不足、担い手不足と言われていますが、更に10年~15年後には団塊の世代が農業界を抜け、一段とその状況はひどくなると考えています。だからこそ、農業自体が若い方からも注目されるようになってほしいです。

私の父は「俺の夢はフェラーリに草刈り機を積んで畑に草刈りに行くことや!それくらい農業をかっこいいことやと周りに見せたんねん!」と言っていました。今はまだそれを実現できていませんが、それくらいの気持ちで僕も農業に取り組んでいきたいです。

◎萩本農園の柿は楽天市場で購入できます。

編集後記

丁寧に説明してくださる様子にお仕事への誠意、お客様への感謝の想い、柿への愛情をひしひしと感じました。接客業が好きで飲食店のホールバイトの経験あり、仕事終わりに大阪や和歌山にドライブに行くのが趣味、居酒屋でカナダ人の方と知り合ったのをきっかけに最近は英会話を始めたなど、バイタリティ溢れるエピソードが続々!「忙しい時ほど仕事だけで一日が終わるのが嫌で…」と笑う様子に底知れないエネルギーを感じました。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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