農薬不使用の生姜は香りと辛みが際立つ逸品!海と空広がる高知県から「生きている生姜」を届けたい

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最終更新日:2022.07.12 公開日:2022.07.01

潮と空農園の八木昭宜(やぎあきのり)さんは、高知県が生産量全国一位を誇る生姜を農薬・化学肥料・除草剤を使わずに作っています。八木さんの生姜はちゃんと辛くて長期保存ができる!その理由を伺いました。

目次

アウトドア業界から生姜の国へ

アウトドア業界から生姜の国へ

――移住して農家に?
愛知県出身で、5年前に高知県に移住して農家になりました。
自然栽培(農薬・化学肥料・除草剤不使用の栽培方法)という方法で生姜や文旦などの柑橘を作っています。

――前職は何を?
20代は趣味が高じてルアーを専門に扱う釣り具会社で働きました。
当時は釣りブームが起きていて、全国に出店ラッシュが続く中、バイヤーとして商品の手配をしました。今思えば過酷な労働環境でしたね(笑)。でも、自分自身若かったのと、子どもの頃からの趣味が高じての仕事だったということもあり、さほど苦にならない部分もあり面白かったです。いろいろあり20代後半にその会社を辞め、30代は趣味の業界に戻ろうか悩んだり、自分で商売をしようかと考えたり、一般的な仕事も経験しました。その中で心理学を勉強して心理カウンセラーの資格も取得したりもしたんですよ。何事も実際に経験してみないと自分の中で納得して次に進めない性格なので、30代は幅広い仕事のジャンルを経験したのですが、飽き性の何でも屋な部分も相まって、ちょっとかじって飽きてすぐやめるということを繰り返していました。

一般職のサラリーマンになってもやはりしっくりこず、どこか「ここじゃないな」というのを感じているので、常に「次はどうしよう」ということをずっと考えている状態でしたね。
ありとあらゆることをやり散らかしてきました。人生散らかしまくってきたと言えますね(笑)。

潮と空農園

――そこからなぜ農業を?
自分がまだやっていないことは何だろうと考えた時に、個人的に満足度が満たされるまでの到達点が一番遠いものがいいなと…それが一次産業、つまり自然と向き合う事が仕事になる農林水産業だったんです。

二次産業も三次産業も経験して、自分にとってこれは違うなという感覚が常にありました。そうなると消去法で一次産業しかないじゃん!となったんですよね。
水産高校に通っていたので、もともとは水産養殖などを専攻していたのですが、船酔いするので漁業ではなく農業を選びました。

ちょうど僕が35歳を過ぎた頃くらいから、「移住して農業」「オーガニック」「自然栽培」というような言葉をよく耳にするようになりました。それで、サラリーマンをしながら約5年間、愛知で農業を知識的に勉強していたんです。生産だけではなく、慣行栽培(農薬や化学肥料を使う一般的に行われる農法)や有機農業、自然栽培など様々な農法のことや、食品業界、農産物業界、物流を含めどのように生産して販売するのが良いのかというようなことを広く勉強して考えていました。

――愛知から高知に移住することになったきっかけはなんですか?
まとまった休暇がとれるたびに高知に遊びに行っていたんです。そこで知り合った方が震災を機に東京から高知に移住されてきた方で、農業をしていました。そこで作業を手伝うようになり、流れるように自分も農業をするために移住を決めたんです。
作物はその土地に合ったものを作ろうと、高知県が生産量全国一位の生姜や文旦を作ることにしました。

環境負荷を減らしたい…「使わない」を極めて

環境負荷を減らしたい…「使わない」を極めて

――農薬・化学肥料・除草剤を使わないのはなぜ?
自分が仕事をする上で、環境負荷をどれだけ減らせるかということを考えたときに行き着いた方法だったんです。今までレジャー産業で働いてきて、人間が自然の中で遊ぶことを商売にしていました。その中で人が自然環境を破壊していくということを見てきていますし、実際にやってきています。人間は生きていれば必ず環境に負荷を与えることになりますよね。お金を稼いで生活しなければならないという前提条件がある以上、人生の三分の一を占める仕事という自らの行動の中で、どれだけ環境負荷を減らせるかということを考えたのが僕の生姜作りのスタンスです。

だから、僕の場合は何を使わないでできるのかということを考えて、使わないものをまず決めます。そのため環境に害のある農薬は使いません。殺虫剤も除草剤も、使い捨て資材にあたる黒マルチも使いません。生姜栽培でよく使われる海外産のサトウキビの残渣による土にかえる完全解体マルチ資材と言われるものも、自分の畑で使うために海を越えて運ぶことになるので使うのをやめようとなります。

完全発酵している肥料でも動物の餌に遺伝子組み換えのものが含まれている可能性はゼロではありませんし、それらにお金を払うことは環境に負荷を与えることを認めてしまうことだと思うんです。それらを使って作った生姜を「環境に優しい」とお客さんに買ってもらうのもおかしいなと。

また慣行栽培の生姜は、まず土壌の消毒から始めます。
生姜は土の中のものなので、お客さんの多くは消毒していないものだと思っていますが、一般的には生姜はかなり多くの農薬を使う作物なんですよ。

農家は皆、防毒マスクをして農薬を散布します。そこまでしなくてはいけないことをまず自分がしたくないと思いますし、それをお客さんに食べさせるということが嫌だなと思います。
環境負荷を少なく出来るのであれば、その方が環境にとっても自分にとっても良いし、お客さんにとっても良いと思うんです。

色々な品種を作ろうと思ったきっかけ

――農薬不使用の生姜作りはどんな作業が多いのですか?
除草剤やマルチを使わないのでひたすら草取りですね。地面に這いつくばって端からスタートして、反対の端まで行って振り返ると最初の地点にまた草が生えているほどです。お盆を過ぎると、草よりも生姜の生長の勢いが勝るのですが、それまでの草取り作業は同じところを最低2周はまわらなければいけないですね。

――大変だった思い出は?
病気でほぼ生姜が全滅してしまうということもありました。でもそれは、ある仮説から結果を見たくて試してやってみた結果で、実験的なものでした。その後に畑を片づけるのは大変でしたね。

それが人為的な部分によるものなのか、その土地が本来持っている特徴によるものかなど、実際にやってみないとわかりません。生姜作りは慣行栽培であれ、自然栽培であれ、実際に土から掘り起こして収穫する時まできちんとできているか分からないギャンブル性の高い作物なので、一週間で全滅することなんて普通にあり得ることなんです。それに病気以外で天災が起きてしまえば、大打撃を受けるのはどの農家も同じです。農家は皆、天気を言い訳にせず覚悟の上で取り組んでいます。

子どもも食べやすい!えぐみがない生姜

子どもも食べやすい!えぐみがない生姜

――八木さんの生姜は他の生姜と比べて味に違いはありますか?
スーパーの生姜や有機肥料を使って作られた生姜など、色々な生姜を食べ比べてみましたが、それぞれに生姜は全然違うと思います。僕の生姜は香りも味も「ちゃんと生姜」していましたね。刻んだりすりおろしたりした時の香りの広がり方、食べた瞬間と後味のピリッと爽やかな辛味が違うんです。

お客さんも「もうスーパーの生姜には戻れない」「今までの生姜とは全く別物」「他の生姜が使えなくなった」など、スーパーで手に入る生姜と比較して反応される方がとても多いです。

お子さんがいらっしゃる方に「今まで生姜が食べられなかった子どもが潮と空農園の生姜だと食べてくれる!」ということをよく言われます。
子どもはまずいものは毒だと敏感に感じて身体が受け付けないということがよくあると思います。そんなお子さんが食べられるということは、変なえぐみがない。実際、化学肥料をはじめ、余計なものは何も入れていませんから、生姜本来の良い部分が出るのではないかと思います。

他にはジンジャーシロップを作る方にも「他の生姜はアク取りが必要なのに、潮と空農園の生姜は煮込んでいるときにアクが出ない」と言われたこともあります。

生姜焼き

――おすすめの食べ方はありますか?
何に加えても料理の邪魔にはならないし、なおかつ生姜の香りと味の主張はきちんと残るので、どんな料理にも合うと思います。おすすめはシンプルに薬味や生姜焼きかな。

僕は毎日スライスした乾燥生姜を白湯に入れて飲んでいます。毎朝コーヒーと生姜湯を飲むのが日課ですね。後は、お味噌汁に入れることが多いです。

 ――お味噌汁に生姜って珍しいような?
確かにあまりないかもしれませんが意外と美味しいですよ。細切りに刻んで、お味噌汁の具材と一緒に加えます。毎日手軽に取り入れられるので、温活を始めてみたいという方にぴったりだと思います。

1か月の長期保存ができる秘密

1か月の長期保存ができる秘密

――他に特長はありますか?
一番の特長は「腐りにくい」こと。だから長期保存ができます。生姜は南方系の作物で、寒さに弱く、本来は冷蔵保存してはいけないのをご存知ですか?

――知らなかったです。いつも冷蔵庫に入れていました…
冷蔵するということは生姜を“凍死させている”ということになります。そのため、冷蔵庫で保存したり、輸送や販売の過程で一度冷蔵された生姜を常温で保存したりする方法では1週間程しか日持ちしません。

でも、僕の生姜は常温で1か月は保存できます。なぜなら僕の生姜は「生きている」から。「生きている生姜」の証拠に、貯蔵中も芽が出てくるほどです。
そのポイントは貯蔵方法にあります。

生姜が1か月の長期保存できる秘密

――暗くて岩肌が見えますね
山に掘られた横穴に生姜を貯蔵しているんです。11月に収穫した生姜は3月頃までこの横穴で貯蔵します。穴の中は一定の温度を保っており、地下水のおかげで湿度も維持されています。高知県にはこういった貯蔵用に掘られた横穴が多くあり、これが生姜にとって最適な環境なんです。この環境だと1年以上貯蔵が出来ます。
機械式予冷庫で温度管理する貯蔵方法に比べて、山の横穴は電気を使わないので環境にも優しいんですよ。

500gや1㎏の生姜というと量も多いと感じるかもしれません。でも、僕の生姜は長期保存ができるので、少しずつ使っていっても食べきれるんじゃないかな。長い目で見れば、1週間しか日持ちしない少量の生姜を腐らせるより食品の廃棄ロスも減らせるし、農薬・化学肥料不使用の生姜は良いことづくめだと思いますよ。

生姜農家直伝の保存方法

生姜農家直伝の保存方法

――自宅での保存方法を詳しく教えてください
もしかしたら雑誌やインターネット上の記事などで、タッパーに水を張りそこに生姜を浸して冷蔵庫で保存するという方法をご覧になったことがある方も多いと思います。でもその方法はあまりおすすめしません。何より「毎日水を替える」ということが手間ですよね(笑)。冷蔵庫に入れてそのまま忘れ去る…という経験がある方も多いんじゃないかな。

僕の生姜は、上の写真のように土付きでお届けしているので、ご自宅に届いたらまずざっと土を落とす程度に水洗いしてください。水気を軽く切って濡れたまま袋に戻します。もう一度袋の口をしばったら、もうその辺に置いておいてください。

――え!濡れたまま袋にいれて放置して良いのですか?
適度な湿度が必要なので濡れたままで大丈夫です。乾燥すると皮が固くなるので、しっとり濡れているくらいが良いですね。あと、少し気にかけていただきたいのがご自宅の地域の最低気温です。

保管場所の最低気温が10℃以上の時期は、そのまま置いておくだけで大丈夫。気温が15℃を上回るようになると、芽が出てしまうのでその都度除去してください。芽が出たままだと生姜自身が栄養と体力を消費してしまいます。ちなみに出てきた芽は新生姜と同じですので食べても大丈夫です。

天気予報で最低気温が10℃以下の寒い時期は、水洗い後に袋に戻した生姜を、新聞紙やタオルなどで包み、発泡スチロール容器や保冷バッグなどに入れて、室内のできるだけ暖かい場所で保管します。
詳しくは生姜をお届けする時に、保存方法の説明用紙を同梱していますので、そちらをご参考ください。

僕は、生姜の凹凸がある節目を手でポキっと折って、100gぐらいは袋とは別にタッパーに入れて保管しています。そうして手の届くところにおいておけば、ちょっと使いたいなというときにすぐ使えて便利ですよ。

太刀打ちできないことがあるから面白い

太刀打ちできないことがあるから面白い

――八木さんの今後の展望は?
僕は、自分の力で農業界を変えたいというような大きな想いはありません。そんなことは一人だけが頑張っても難しいですよ。しいて言うなら、僕のように自然栽培といった非効率な方法で農業する方々が、普通に家庭を持って、普通に生活できる世の中になってくれたら良いなと思います。そうなれば自然に業界も変わっていくと思いますね。

そのためには、合わせて消費活動の変化も重要です。お客さんも「ものを選ぶ」「食べ物を選ぶ」ことに対してもっと考えるようになってほしい。もちろん僕だって全てオーガニックのものを取り入れているわけではないし、コンビニでコーヒーを買ったり、時間の無い時は簡単な食事で済ませたりすることもあります。

でも、可能な範囲で自分が選択した「ちょっと先のこと」は考えるようにしています。だから、同時多発的に同じように考えて行動する人たちが増えていくのが一番望ましいですね。

潮と空農園 八木昭宜

――農業の良いところは?
自然の中で作業している分、ストレスがないのが嬉しいです。自分がやったらやった分だけ返ってくるのも面白い。それはお金の面だけではなく、作業をやり切った充実感もあります。畑ではなかった場所が耕して畑になり、そこから生姜ができて…。完全な自己満足ではありますが、自己満足がなければ他者満足には行きつかないと思うんです。

自分が仕事をして、無事収穫まで到達できて、納得した生姜が出来上がって、その先でお客さんが買ってくれる。その結果、お客さんに喜んでいただけたら嬉しいですし、そのお客さんが僕の生姜を良いと感じて定期的に買ってくれるようになれば、僕がこの仕事を続けられる。僕かお客さんのどちらかだけが満足するのではだめなんですよね。これが一番良い形だと思いますし、この循環にしていかなければどんな仕事も続けられないと思います。

他の産業で様々な仕事を経験しましたが、「これは太刀打ちできないな」ということが次々出てくるのが農業だと思います。今年一度作ったら、翌年はどうするかというアップデートが一年に一回しかできません。20年続けても、挑戦できるのは20回だけ。その中で作業方法を変えたり、畑自体の状態が変わったり、天気も自分のコンディションも毎年異なります。人の力ではどうにもできない自然というものに対して、自分に何ができるか、どのように対応出来るかということに僕自身は一番興味があるんです。農業は自然環境に対してやることも考えることもたくさんある。そこが面白いと思えなければ農業は面白くないと思います。だから農業は僕には面白く、難しく、それが丁度良いんです。

生姜の生産量一位の高知県で、人や環境を想い、何より自分が納得するものを目指して生姜作りに取り組んでいます。スーパーの生姜とは一味も二味も異なる、「生きている生姜」を日々の食卓に取り入れてみてください。

編集後記

色々なご経験をされてきた八木さんが行き着いた農業。「自分がやり切った先に充実感があって、納得できるものができて、それをお客さんが買ってくれる。良いと思って買い続けてくれる」。本来の農業の一番理想的な形なのではないでしょうか。私たち消費者が「想いや背景を知ること」「考えて選ぶこと」「買い支えること」。この形がもっともっと大きくなればいいなと思います。八木さんの生姜はちゃんと辛くて、生姜好きにはたまりませんでした!今年の夏の薬味スタメンになりそうです。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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