さつまいもで笑顔に!震災と原因不明の症状から立ち上がらせてくれたのは農業でした
宮城県仙台市でさつまいもを育てる自然農園MITUの佐藤好宣さん。東日本大震災、3度の交通事故、去年は台風により作物が壊滅状態に。そんな困難を乗り越え農業にかける想いや、農福連携について取材しました。
初めまして、自然農園MITUの佐藤です
農園を通して、より多くの人の心身が「満たされてほしい」。
この想いで私は2013年に自然農園MITUを立ち上げました。
農福連携の農業生産法人として、障がいを持たれる方と一緒に畑に出て、農業を通じた就労支援の仕事をしています。作る野菜は、化学農薬は使わずに少量多品目、そして安心・安全にこだわっています。
去年は大型台風により作物が流されてしまい、お客さまへ作物を届けることが叶いませんでした。
「今年こそは!」という想いで現在は、さつまいも「紅はるか」「ベニアズマ」を大切に育てております。
私が就労支援をはじめたきっかけは、大学生の頃、福祉系のボランティア活動をしていたときに、障がいを持つ方と触れ合う中で、この人たちがもっと社会で活躍できるサポートをしたいと思ったからです。地元宮城県の大学を卒業後、すぐには就職せずに、同じく宮城県にある2年制の福祉系専門学校へ進学しました。そして「言語聴覚士」という資格をとり、介護老人施設に新卒で就職しました。24歳の時です。
3度の交通事故、そして東日本大震災が
私は就職してすぐの頃、、3度の交通事故に遭いました。一時期は原因不明の症状に悩まされ、立っているだけなのに、吐き気や頭痛、めまいがして、仕事もままなりませんでした。
その中で唯一始められたのが、家庭菜園でした。農地で日に当たりながら、黙々と土や野菜と触れ合う中で、自然と体調も落ち着いてきました。原因不明だったあの症状が、徐々に無くなってきたのです。体調が回復するにつれて、私は農業にどんどんのめりこんでいくこととなりました。
しかしその後、2011年に東日本大震災が発生します。
私は、家も畑も津波に飲まれて失い絶望的な状況でした。しかし家族はみな無事でした。だからこそ、自分がしっかりしなければいけない!この震災がきっかけとなり、かつての自分が嘘のように、自ら行動をはじめました。
津波による塩害の畑で、農業をスタート!
私がやりたいことは2つありました。「新規就農(自然農園MITU設立)」、そして「大学院進学」です。
まずは農業をはじめるにあたり畑を借りました。しかしその畑は、津波で飲み込まれた「塩害土壌」でした。お世辞にも栽培に向いていない畑です。
このような土壌で栽培できる野菜をどう作るのか?改めて学ぶ必要があるのではないだろうか…。悩んだ私は、新規就農と同年の2013年に、宮城大学院に進学しました。震災を経験したからこそ、人生一度きり、やりたいことをやろうと、両方やろうと心に決めました。
自分の畑での農作業の傍らで、大学院での勉強や研究は大変でしたが、そんな自分の想いに理解・共感してくれる方も増えてきました。この仲間との繋がりも、今の私の仕事のモチベーションになっています。
人を笑顔にするさつまいも
農業をはじめて1年も満たないある日、友人たちとのBBQに自分の畑で栽培したさつまいもを持っていきました。塩害の被害が出た畑で、栽培方法もまだまだな状態で育てたさつまいもです。「舌の肥えたみんなは、自分のさつまいもをどう思うのだろうか?」と不安でいっぱいでした。
内心ドキドキしながら焼き芋をつくり、みんなに振る舞ったところ、なんと20名くらいの友人全員が「美味しいね!」と笑顔で食べてくれました。
本当にうれしかったです。
この時のみんなの笑顔が心に刻まれて今でも忘れられず、「人を笑顔にするさつまいも」は、自分にとって不安を自信に変える、大きな味方となっています。
そして、店頭で販売をしていると「またよろしく」「また買いに来たよ」とリピートしていただけるお客さまも増えてきて、ますます自分と一緒に働くメンバーの励みとなっています。
「紅はるか」と「ベニアズマ」の、ご家庭でおすすめの食べ方をご紹介します。紅はるかは丸ごと焼き芋に、ベニアズマは少し厚めに輪切りにして蒸し器でホクホク蒸し芋にすると美味しいです。また、保存する場合は冷蔵庫に入れず、12℃以上の暗所もしくは室内にて保存してください。食べ比べもおもしろいですよ!
どんな時でも、僕の居場所は畑です
私の仕事は農業で、趣味も農業です。毎日気づくと畑で作業をしています。ここまで没頭できる農業を、社会的な課題を抱えている人や、障がいを抱えている人の生きがいが見いだせる場所にしていきたいと本気で思っています。5年後・10年後も、農業を通じてCSAのように、小規模農家さんと一緒に、地域との繋がりや協働という形でのコミュニティを作っていきたいと考えています。
つらい過去の経験もありましたが、今は農家として、経営者として、学ぶ者として、今の私は未来の農業のことで頭がいっぱいです。自分が経営する自然農園MITUのスローガンでもある「畑から元気を届ける」の実現に向けて、がんばります。
取材協力:自然農園MITU
編集後記
研究熱心な佐藤さんのSNSの投稿は、農業の情報でびっしり。コメント欄では、日夜農家さん同士のやり取りがされています。今回執筆を担当した私も、実は大学時代に佐藤さんとお会いしており、同じ大学でした。楽天ファームを通じて再会ができ、社会人としても関わらせていただくことができ、うれしい気持ちでいっぱいです。
- この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
- 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
- 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。