元プロボクサーが農家になるまでの劇的人生とWワークのすすめ

元プロボクサーが農家になるまでの劇的人生とWワークのすすめ
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2019.10.03

元プロボクサーから飛び込みで農家になっていったPENTA FARMの大亀 剛志(おおかめ たけし)さん。その劇的人生とWワークを送る経緯、農業を職にしていく楽しさを伺ってきました。

目次

プロボクサーからいろいろ経て農業に

一番長い仕事が農業で7年目ですね。 その前は、プロボクサー、営業マン、鳶職(とびしょく)、ドーナツ屋、愛媛県の特産品開発、産地直売所の立ち上げ、市場で競りなど、いろいろな仕事をしてきました。
そして場所も様々で、九州、四国、中国、関西、東京渋谷と、移り住む環境でしたが、ずっとそれを続けるのは大変だと思い、28才で地元愛媛に帰ってきました。

地元で何か起業しよう!
調べると、愛媛県西条市の周ちゃん広場は、年間売上20億!当時は日本で5本の指に入る産地直売所ということを知りました。こんな田舎で集客もあるのであれば、野菜や果物に関わる仕事をしよう!そう決めました。

しかし農業を知らない。
だから1年間は、周ちゃん広場にきて、そこに出している生産者の名前をみて、いつも出してる人のところに飛び込みでいって、農業を勉強したいので手伝いさせてくださいとお願いして回りました。

いつか農家さんから直で仕入れようと思っていたので、人間関係をつくっていくことを見据えて、お金はいらないと農業をさせてもらいました。

農家さんから直で仕入れて路上で売る

農業の勉強中、1件のトマト農家さんに出会いました。
「わしのトマトは高いから売るのは難しいぞ」と言われたのですが、売るのは好きだから、まずはこれを直で仕入れて売ろう!と決めました。
毎朝トマトをとりにいって、それを車で片道1時間半くらい運んで、松山市の三越の裏で売る。はい、勝手に机をだして売りはじめました(笑)

地元西条市の野菜が、どのくらい認知されているか知りたかったのです。
だけど「トマトありますよー!」と頑張って声をかけても、まさかトマトを買おうと思って路上を歩いてる人は一人もいませんから、なかなか大変でしたよ。

結果、1か月間ほぼ毎日売り切りました!本当は少し残ったこともありましたが、農家さんには全部売ったと言いました。すると、お前すごいな~と言って貰えるようになりました。

実は「西条から来た人がトマト売りよる」と、松山界隈で少し噂になってクチコミで広まったようで、「せっかく西条から野菜を運ぶなら、他の野菜も仕入れて運んで欲しい」と、頼まれるまでになったのです。
そして新しい産地直売所の立上げのプロジェクトリーダーを任され、松山の樽味(たるみ)と大街道(おおかいどう)という場所に2店舗を立ち上げて、毎朝、西条の農家さんから直で仕入れて、松山に持って行って、松山で売るというのをやりました。

市場で仕入れて売る

農家さんから直で仕入れる動きはわかったけど、もっと大きい動きはわからないということで、市場に勤めたこともあります。
夜9時半に出勤して、昼までの働くというサイクルです。荷物を積んで、運ぶということを繰り返す中で、小さい動きと大きい動きが両方見えるようになってきました。
直接農家から買うのが全てではなく、市場で物を仕入れるということも覚え、今は「せり」で落とすこともあります。

仕入れの際は、愛媛県西条市の農産物に私はこだわりたいと思っています。
愛媛県西条市は、全国利き水大会で2年連続(平成7・8年)全国一位のおいしい水に選ばれた、水が自慢の町です。(引用:西条市ホームページ
だからそれを石鎚山麓名水野菜(いちづちさんろくめいすいやさい)と呼んでいます。仕入れという観点では、場所によって運搬費が高くなりますが、それでも気に入ってくれた飲食店、ホテル、居酒屋、大学病院などに、西条市の野菜を卸すことを大切にしています。

売るなら農家になれ!社長からみた大亀さん

起業をするつもりでいましたが、今の社長に声をかけられ入社しました。できたばかりの会社だから好きなことができそうだし、なにより社長が農家さんというのがブランディングとして強いと思いました。よかったら社長にも聞いてみてください。

<社長にインタビュー>
こんにちは。ペンタファームのまさしくんこと山内 政志です。ラグリでは栗やイチジクを契約栽培でだしています。
カメちゃんに声をかけたのは、ずっと観光農園で果物をやってきたけど、野菜という販路も広げようと思ったからです。イベントで野菜を売ってるカメちゃんをみて「元気のいい兄ちゃんおるな」と目をつけていたんですよ。

彼は野菜の仕入れもそうですけど、自分たちの果物を業者へ売り込むのもすごくうまい!市場価格を知っていて、値段感覚がしっかりあるから、値段交渉もすごい!カメちゃんのお陰で、経費削減、売上UP。本当に声をかけてよかったです。

カメちゃんには、作物の売り買いだけでなく、農家もやってもらっています。
それは農作物を売る時に、「今年のイチジクは天候がこうだったから甘いですよ」、「春は大変だったけど、夏のいい天気で挽回してきましたよ」とか、畑にでていないと話せないことも、大事にして欲しいからです。
ただあるものを売ってるだけ、あるから買ってくださいじゃ、信念が伝わりにくい!
「これとこれならこっちが美味しいですよ」、「こういうカタチが美味しいですよ」とか、もともと観光農園がベースだから、お客様に喜んでもらえるように伝えるのが一番大事です。

他にもカメちゃんには、ペンタファームが経営するカフェの商品開発もお願いしています。売れる商品アイディアも出してくれるし、従業員の教育もやってくれます。何も言わなくても、自分でマニュアルを作って、パートの面接もやってくれるし、給料も休みも決めておいてくれます。たまにカフェ店員もやってくれます。すごい人です。

なぜレモンとイチジクなのか

農家としてレモンとイチジクを選んだ理由は3つあります。
まず1つは、柑橘の中では比較的手がかからないので、Wワークをする自分に合ったからです。
2つ目、イチジクは社長が作っているので、指導をしてもらえたり、サポートをもらえるからというのがあります。
3つ目、レモンは市場にいくと国産のレモンがなくて、9割は外国のレモンだから、国産レモンを作れば売り先も困らないと思ったからです。戦略的に市場の希少さを狙いました。

レモンの畑は、年配の方から引き継いだり、荒地になったところを開墾したりして、耕作放棄地を増やさないように、会社で3町(ちょう)分を持っています。

大亀さんの1日、Wワークのすすめ

<大亀さんの1日>
4時半:起床
5時半:出社
7時 :市場でせり、仕入をして飲食店・学校・病院に配送
10時 :会社戻って事務処理
11時 :畑で農作業orカフェ店員
15時半:会社戻り翌日の野菜の注文
18時 :帰宅
19時 :夕食(1日1食)
22時 :就寝
朝は毎日市場にいきます。
学校給食は学校から直接依頼がくるのですが、3校で2,300人の食を担っているので、まぁまぁの量で、仕入れは1人でやるから毎日怖いですよ。
小松菜は農家さんから買えるけど、にんじんは今の時期はないから市場で仕入れて運ぶとか、西条産にこだわって、せりで落としたりもします。給食で物がないのは大変なので、最悪スーパーを走り回って集めます。

病院への仕入れ配送も5件あります。学校と違って土日も納品があるので、完全に休みをとるのはお祭りの時期くらいかもしれません。
食事は1日1食です。元プロボクサーなんで空腹に耐えることはできます。当時は今より10㎏少なくてスーパーフェザー級58㎏でした。
結婚したのは3年前で、すでにこの生活サイクルでした。妻は美容師をやっています。

毎日がWワークですが、このスタイルは向き不向きがあると思います。
ただ、農家さんがカフェをやるのはオススメです。農業をしていたら、売れ残るものが必ずでてきます。それを近所に配ったり、捨てたりしているのであれば、6次産業化して加工して販売してもいいし、生のままカフェで出したりしてもいいと思います。
農家の強みは、作るところからのストーリー性があることだから、自分の価値をあげるためにもやったほうがいいです。

農家は職人

農業のイメージは、儲けにならん、しんどいだけ、割に合わん、夏は暑くて冬寒い…
仕事に対する見方でいったらそうなんだけど、職人っていう考えでみたらそれが普通で、苦にはならないと思います。

そして農業は絶対必要な職業です。
これから農業の貴重さは絶対大きくなると思うから、定年してから老後にやろうというのではなく、今からやることをオススメします。農業は楽しいですし、自分で美味しいの物も食べれるし、お客様から美味しいって言われたら、疲れも吹っ飛びますから!

あとは自分がどのレベルのものを作って販売するかです。
いい物をつくればいい値段で売れるし、変なものをつくれば売り先もなくなってくきます。そういう職人としての試行錯誤も、農業の楽しさだと思います。

編集後記

農家という顔のみならず、2足3足のわらじを履き、毎日動き回る凄まじいバイタリティー!本当は1時間の取材のはずが2時間半になり、社長インタビューも10分のはずが1時間になり…PENTA FARMの皆さまは、とても情熱的で、お話も上手で、一緒にいるだけでたくさん元気をいただきました。
畑でスーツの秘密は、お子様の入園式の日に撮影したからだそうです。
(担当:Motty)

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • Motty

    農むすび編集長。埼玉県深谷市出身。農家の孫。日テレAD時代、おしゃれカンケイを担当。ラグリでは、農家さんの人となりをドラマティックに伝えたいと取材記事を書きはじめた。好きな農作物はメロン。農業は自然の恵みあってのもの。神社のお祭りで五穀豊穣を祈るのも、大切にしたいと思っている。