120年のりんご農園を継ぐイケメン農家!葉とらずりんごと長野アップルライン復興で未来を担う

120年のりんご農園を継ぐイケメン農家!葉とらずりんごと長野アップルライン復興で未来を担う
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最終更新日:2022.08.31 公開日:2020.09.18

りんご産業の未来を担うのは私です。そう語るのは、長野県のりんご産地「赤沼」で代々続くりんご農家の4代目・フルプロ農園の徳永虎千代(とくながとらちよ)さん。地域の耕作放棄地をゼロにする秘策を伺いました。

目次

サラリーマンから転身、父の想いを継ぐ

――りんご農家の4代目なのですね?

そうですね。でも昔はりんごに興味がなくて、別の会社に就職をしました。
ただ、父からずっと継いで欲しいとは言われていたんです。それで改めて仕事のやりがいとかを考えた末、父の押しに負けるかたちで農家に転身しました。

やると決めたからには、長野の農業大学校に入り、いろいろ研究をしながら勉強しようと頑張りました。これは農業を始めた頃の写真です。

そして2年で卒業した後、父と一緒にりんご農園をやるのかな?と思っていたんですが、父は引退してしまいました。だから1人で始めることになったんです。

1人ではじめた農業の新しいかたち

――1人だと大変ではないですか?

ええ、農業なので大変です。だけど自由なところもあって、1年間は1人でやりました。

ただやっぱり「1人でもくもくとやる人生ってどうなんだろう?」と考えたり、「このままこじんまりやっていても収入が少ない」と悩んだりするうちに、この「みんなが継がない理由」を変えていこうと思いました。

――それで仲間をつくったのですね?

はい、1年半後に仲間が1人増えて、今は5年経ちスタッフが10人くらいになりました。

繁忙期は、スポットでアルバイトの募集をかけています。東京からのインターンや田舎暮らしの斡旋などから、学生さんが10名くらい来ています。

――その方たちは、田舎暮らしや自然を体験したいみたいな感じなのでしょうか?

いや、そういう人はいないですね。
着実な考えの若者が多くて、みなさん事業として興味があるようです。未来の仕事を考えるうえで、一次産業がどういうものか経験しておきたいとか、農業の新しいかたちに興味があると言っています。

――農業の新しいかたちというと?

家族経営でご高齢者がやっている農業ではなく、会社として産業としてやっていく農業です。アルバイトで来た学生さんたちは、農家のイメージが変わったといって帰っていきます。一言でいうと、儲かる農業です。

――産業にするための秘策があるのですね?

はい、「葉とらず栽培」や「高密植栽培」です。

「葉とらず栽培」と「高密植栽培」

こちらは、ヨーロッパ式の最先端の栽培方法『高密植栽培』の様子です。

みなさんが想像するりんごの木とは違って、木が縦にまっすぐ伸びているのがわかりますか?こうすることで、高齢者や女性、障害を持った方などでも無理なく作業することが可能になります。実は一般的な栽培方法に比べ約3倍の生産量が見込めるのも特徴です。

そして「葉とらず栽培」です。
その名の通り、りんごの葉っぱを残した栽培方法です。葉っぱは、日光をたっぷりと浴びて光合成することで、空気中の炭酸ガスを吸って、養分をたっぷりりんごに蓄えます。だから収穫まで葉を残すことによって、糖度が上がり、甘みがぐんと増すのです。

一方で「葉とらずりんご」には、見た目の問題があります。

写真の様に、葉っぱに隠れて、実が赤くならない部分があるので、一般的なスーパーには出回りにくいのです。現状では農園から直送する方法でないと、入手が難しい希少なりんごとなっています。

2019年、台風で浸水90%以上

――昨年の台風による災害は…

りんごって、冬の時期から選定をはじめて、その集大成が秋です。それを目の前にした昨年の10月12日に台風が上陸して、長野市内を通る千曲川の堤防が崩壊。私のいるりんごの名産地「長野アップルライン」は浸水し、壊滅的な状況になりました。私の畑は90%、機材は100%浸水しました。

そこからは精神的にも立て直すのが大変でした。まわりには辞められる農家さんも多く、せっかく実のなる木を切ってしまうのが悲しくて、復興活動としてクラウドファンディング『長野アップルライン復興プロジェクト』を考え、代表として挑戦しました。

結果的に1千万円、1千人もの支援を集めることができました。
支援してくださった方の中には、まったく知らない人が本当に多くいます。そして遠方からボランティアに来てくれた方も大勢いました。畑に散乱した漂流物や堆積した土砂の撤去、りんごの樹についた泥水の洗い流しなど、みなさまの力なしには乗り切れなかったです。


――今はどういう状況ですか?

今年は、100%ではないけれど、りんごは全くとれないということはなく、80~90%の畑は稼働できています。りんごは災害に強く、多くは復活してくれました。
現在の課題は、農業への実害というより、災害で家がなくなったりして、家の復旧でやることが増えている状況だと思います。

どの品種が人気?農家おすすめのりんご

――自分で育てて一番美味しいと思った作物は何ですか?

19歳の時、自分で畑を手伝って食べたりんごです。衝撃でした。

――特に好きな品種はありますか?

いろいろ食べ比べしていますが、経験によって変わってきます。一番よく食べるのは「サンふじ」ですが、長く食べ続けていると「シナノゴールド」が好きになります。

シナノゴールドは、農家としては、甘みと酸味のバランスがめちゃくちゃいいんです。だからスタッフにも人気があります。甘すぎないので、ずっと食べていられます。

初心者の方におすすめなのは、シナノスイートと秋映(あきばえ)です。

シナノスイート(左)と秋映(右)は、とっても甘くて、印象的な美味しさです。日の浅いスタッフにはこの2つの品種が「甘くて美味しい」と人気が高いです。食味調査でも高得点をとっています。

では最後に質問です。
Q.このりんごは、何りんごでしょうか?

正解は「葉とらずりんご」です。こんなハートマークに出会えるのも、葉っぱのお陰です。

他の農家さんがやっていない「葉とらずりんご」や「高密植栽培」で、5年後、10年後の農業をどこまで産業に変えられるか、より多くのお客さまに美味しいりんごを届けられるかは、自分たちの努力次第です。私たちが未来のりんご産業を担っている!そんな気持ちで、今日も美味しいりんごを育てています。

編集後記

常にビジネスモード!といった感じで、しっかりされているので、28歳という若さにびっくり!趣味も仕事というので、思わず「合コンとか行くんですか?」と聞いてしまいました。あ、それは行くそうです。30歳までは仕事第一を続けますが、結婚したいので、花嫁募集とのことでした。「都会の賢い女性と結婚しろ」とある人から教えをもらったそうなので、今後の活躍も楽しみです。農業の未来、よろしくお願いします。

取材協力:フルプロ農園

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • Motty

    農むすび編集長。埼玉県深谷市出身。農家の孫。日テレAD時代、おしゃれカンケイを担当。農家さんの人となりをドラマチックに伝えたいと取材記事を書きはじめた。好きな農作物はメロン。農業は自然の恵みあってのもの。神社のお祭りで五穀豊穣を祈るのも、大切にしたいと思っている。

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