日本有数のみかん農家、八幡浜のツートップに聞く「うまいみかん」

日本有数のみかん農家、八幡浜のツートップに聞く「うまいみかん」
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最終更新日:2022.08.31 公開日:2018.01.18

人気のみかん農家といえば、日本有数のみかん産地と名高い愛媛県八幡浜市の【左】コウ果樹園の二宮 江(にのみやこう)さんと、【右】三代目みかん職人の菊池真太(きくちしんた)さん。美味しいと評判で1日2,000箱も売れ、週間ランキング1位も獲得しました。
そんなみかん農家2トップが仲良しだということで、みかんのプロに「うまいみかん」について聞いてみました。

ライバルだけど助け合う、山のお向かいさん

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うちら遠いけど、お互いの動きがみえるけん。

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真太さんは、大雪、大嵐の日に、みかんとりよるんですよ。なにしとんすか?って思ってましたよ。

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あの大きなビニールハウスがある辺りがコウの畑です。

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真太さんのところは日照時間が長くて、僕らは夕方になったら日が陰るんですけど、真太さんのところはまだ日が当たってるから、収穫も長くできるんですよ。

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美味いみかんができる、そういう土地をもったよ。

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八幡浜のみかんが美味しいと言われるのは、海に面して、南向きやけん。
あと真太さんの木は老木。みかんは5年や10年じゃ、うまいもんは作れないんですよ。先代、先々代が植えてくれた木が、今すごく美味しいみかんをならせてくれている。そういうおじいちゃんの木を、生かさず殺さずのところで、真太さんが水やら肥料やらをちょうどええ塩梅にして作っている。
やけん、日照やら環境もあるとおもうけど、やっぱり作り方もあるけん、そこがめちゃめちゃ上手なんやなって思う。

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言いたいことはコウの頭に入っとる。広辞苑、大辞林、秘書みたいなもん。値段をだすときもコウに出してもらって、じゃ合わせるわってしとる。

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1年かけて育てたみかんを、自分で持って帰って、1個ずつ選別して、自分でお客様に届ける。愛媛県八幡浜のみかんではなく、三代目みかん職人、コウ果樹園のみかんとして送り出すのが僕らの強みで、真太さんがその方法を全て教えてくれました。

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ライバルだけど一緒に成長したい。人手が足りなければパートさんをまわすんすよ。お互い困ったときは協力っすよ。

温州みかんの三代目、華まどんなのコウ

――――――おふたりの違いってありますか?

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うちはまず、今とりよる普通のみかん、温州みかんの「頂(いただき)」が一番力いれよるところかな。

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僕は「華(はな)まどんな」だな。

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温州みかんは、外で作る三代目。華まどんなは、ハウスで作るコウ。そこの違いかな。

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うちの子供らは、みかんをよく食べるんで、みかんを持って帰ったら「やったー!」って喜ぶんですよ、みかん農家なのに。
先日は小学生がみかん収穫体験にきたのですが、自分で収穫したみかんを山で食べるのは最高だったみたい。

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真太さんの「頂みかん」は、みかんと言えども別格のみかん。甘みだけでなく、酸味もある、コクのあるみかんを追い求めてるのが三代目。

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コウの「華まどんな」は通称:紅まどんなっていうんですけど、そこに子供の名前:華菜(はな)ちゃんの華をいれることで、本当に愛しているんだと。

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そうですね。コウ果樹園も自分の名前を入れてるし(笑)
まどんなの作り方って色々あって、露地でもAPハウスでも作れるけど、一番美味しいのが作れると選んだのがAPハウスです。
伊勢丹や高島屋で紅まどんなを買って食べた人が、絶対に僕の「華まどんなのほうが美味しい」って。同じ品種だけど、なぜ美味しいか?食べてもらえればわかるけん。感じてほしい。

1本1本 性格が違う華まどんな

――――――あれ?帽子を脱ぐと…

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ちょんまげ!どうしてそんなにちょんまげなんですかってタイトルでどう?(笑)

――――――ははは。なぜ農家に?

hideaki

大学で経営学や顧客心理、商品のブランディングを学びましたが、介護の仕事を3年間やって介護師の資格を取りました。
ただ家業は“柑橘王国”愛媛県の八幡浜市で、創業60年を超える伝統ある柑橘農家。
命を懸けて今の蜜柑山を守り続けてきた両親に、両親が作っているみかんは、こんなにも美味しいと言ってくれる人がいるんだよ!と伝えたくて、柑橘農家になりました。真太さんと同じ、僕も三代目です。

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コウ果樹園の園地は、先々代、先代が雑木林を切って山を切り開いてつくりました。
このAPハウスは雨風が入らないから、温度管理と栄養管理、水分コントロールができます。水は川からタンクにポンプアップして、一番美味しくなる水分にしています。みかんが甘くなる一番はストレスだから、枯れるか枯れないか位にすると、甘い美味しい華まどんなになるんです。

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絶景でしょ?
植物の養分は上に上に行くから、垂れているところは味のノリが悪いし、上過ぎると養分が行き過ぎて実ばっかり大きくなる。だからちょっと垂れるような感じがいい。
実が多いと重いけん、バーッと垂れるから1個ずつ全部しばってるんです。この枝つりは相当にめんどうくさい。

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しかも、柑橘ってとげがあるんですよ。こういう新しく出た枝に、とげが大きいのがでてるじゃないですか?こういうとげを1個1個切るのですよ。顔に似合わず、修行みたいなことばっかりしてます。
そして華まどんなは、1本1本、木の性格が違うんで、1本1本の具合をみて、この木は10秒くらい水やろうとか、この木は20秒くらいみてやろうとか、そういう風に1本1本に目をかけている。だから高くて当たり前だし、美味しくて当たり前です。

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ハウスのデコポン(しらぬい)は露地のに比べて、肌が違うんですよ。肌の厚さとキメの細やかさが違う。左がハウス、右が露地。ここの樹齢は20年、ハウスも20年。おやじの代から続いてます。

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デコポン(しらぬい)の何がええっていうたら、剥いた時のこのにおいが、めっちゃええんですよ!

――――――すごくいい香り!新鮮!

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すごいやろ?まだ収穫早いので、酸が抜け切れてないですけど、美味しいみかんというのは、酸と糖度のバランスだと思う。甘いだけというのは、採って2週間くらいたって酸がぬけた状態。
とりたてのフレッシュ感っていうのは、このとった直後だけだから!美味しいみかんは糖度と酸度の黄金比。
大事に育ててまるで子供のように、送り出しています!
(するとお客様から電話が…「華まどんな美味しかったー!子供が覚えたらあかんわー!」と、受話器の向こうから聞こえてきました。よっぽど感動したみたいです。)

美味しさの秘密は四つの太陽

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みかん大好き、みかん栽培超好き。60年続くみかん農家の三代目です。 こうして夫婦で作業していると、いろいろなことが話せて毎日楽しいですね。お客さんとのコミュニケーションは、何でも妻に相談しています。

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美味しさの秘密は“四つの太陽”です。1つ目は「空から降りそそぐ太陽の光」。
園地は南向きに面していて、太陽の光を一日中たっぷり浴びています。 また地が浅く岩盤や砂礫の上に表土が浅くかぶっている状態ため、水捌けが良く、みかん栽培に適しています。

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2つ目は「宇和海の海面に反射する光」。

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3つ目は「みかん園地に積まれた石垣からの照り返しの光」。

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4つ目は「タイベックシートからの反射の光」。温州みかんは夏場に木の下をマルチシート(白い布のようなもの)で覆います。こうすることで、樹に水分ストレスを与え、さらに糖度が上昇します。またマルチシートからの反射光もあるのでさらに着色も良くなります。
夏場は照り返しで、暑くてふらふらになることもありますが、美味しいみかんのために頑張ってます。

袋詰めは、おばあちゃんのプライド

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倉庫では父が中心になって、母と91歳のばあさんと、4人で2回ずつ確認しながら選別しています。

――――――え、おばあさま91歳?こんなにシャキっとされてるけど…

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ばあさん、めちゃくちゃ忙しいです。僕にそうとう使われとんで。朝いって、ばあさん起こして、おい仕事はじまるぞー、たのむぞ言って、一日中仕事してますよ。うちのばあさん、売上600万あるけんね。

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ばあちゃんも昔は農業しよって、歳とって山はいけんくなったけど、手は余らしとる。頭も元気というところで、ばあさんに袋づめさせよる。

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真太さんが、ばあちゃんに袋づめさせよるよーっていうのを聞いて、僕もばあちゃんも頼んでみたんですよ。なんもしてなかったけん。そしたらできることならやるよーってやりだして、めっちゃ丁寧なんですよ。

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袋にコウくんの名前が書いとるみかんやけん、めっちゃきれいに入れてくれるんですよ。
荷物がないときとかも、今日はないん?って聞いてくる。ばあちゃんが入れてくれたみかん、売れて売れてしょうがないけん、入れてくれんと間に合わんのよっていうと、よっしゃわかったっていうて、ずーっとやってる。そうするとじいちゃんがやってきて、飯まだなん?って。

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なるよな。こういうことすると、お年寄りの生きがいにもなるよね。うちのばあさんも、本当にはりきっておって、それを誰かがしようとすると、ええよ、これは私やるけんっていう。

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プライドもっとるよね。ばあちゃんも嬉しいんですよ。
僕らが柑橘農家をできよる礎を築いてくれたのは、おとんおかんのまえに、じいちゃんばあちゃんが苗を植えてくれとった、山を広げてくれとったからやし。昔って山はめちゃ高かったんですよ。そこに投資して、こうして二代目、三代目と繋げてくれてね。

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そのプライドにかけても、甘くて濃厚な超絶うまいみかんを作っていこう。

まさかの大雪!マイナス2度が分かれ目

――――――つい最近、三代目さんのはるかコウさんの清美オレンジともに、大雪の写真がアップされましたが大丈夫ですか?

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雪は1月11日から3日ほど降り続いて、結構つもりました。その後も凄く寒かったけん、もしかしたら「せとか」とか「清美オレンジ」が凍ってしまうかもしれない。
マイナス2度になったら凍るんですけど、凍ってしまったら味が苦くなるんですよ。そして実がぱさぱさになる。やけん、もう市場にはだせん。

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凍っとったら、もう全部廃棄。ジュースにもできんけん、苦いし。捨てるしかないということで…今年はどうやろうと?
雪の重さで木の枝が何本も折れとるというのもある。折れた枝はもう枯れますね。
あとは風とかでつく傷だったら一部の被害で済むんやけんけど、もう気温の問題だったら園地全体になるんで、ちょっといけんな思うたら、もう全部いけんけん。
見た目ではわからんし、お客さんに送って苦かったなんてなったら、それが一番いけんけん。そうなったらもう一個も送れませんということになるんですよ。

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対策のしようがない天災の場合は、とりもどしがきかん。

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本当はここでみなさんに、僕たち自慢の柑橘をどどーんと紹介したかったのですが、少し様子をみている状況です。

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そこで、市場にはなかなか出回らない「貯蔵しらぬい(デコポン)」をご用意しました!味、香り、食べやすさ3つ揃ったしらぬい(デコポン)は、さらに一定温度で管理することで、甘みが増し、酸味が抜けて、食べやすくなります。 とても貴重なしらぬい(デコポン)です。

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農業は毎年の天候や作柄によって出来が左右されます。ですがそこが面白いところだと思うし、やり方一つで伸びしろも大いにある業種だと考えます。僕たち若い世代がこうして奮起することで、農家っていいなって思ってもらえるように、いつでもきらきらしてエネルギッシュでいたいです。

編集後記

まるでホストか?というほどノリのいいお二人。一緒にいるとみかんが食べたくなります。私は美味しさを知っているから余計です。
今回の取材ではお二人のご家族ともお会いすることもでき、農業ってあったかいな、農家ってあったかいなと感じました。
私がみつけたお二人の共通点は、お二人とも奥様が美人ってことです♪

こうして皆様にお届けする直前に、大雪とという事態になり、追加でお話をお伺いしました。深刻な中でもデコポンの木に登り、電話にでてくださる優しさに感動です。なんとか無事でありますように…。
(担当:Motty)

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • Motty

    農むすび編集長。埼玉県深谷市出身。農家の孫。日テレAD時代、おしゃれカンケイを担当。農家さんの人となりをドラマチックに伝えたいと取材記事を書きはじめた。好きな農作物はメロン。農業は自然の恵みあってのもの。神社のお祭りで五穀豊穣を祈るのも、大切にしたいと思っている。

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