極み減農薬で作る黄金色メロン「ゆうか」脱サラ農家が“正座”で挑むメロン作りのこだわりに迫る

極み減農薬で作る黄金色メロン「ゆうか」脱サラ農家が“正座”で挑むメロン作りのこだわりに迫る
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最終更新日:2023.10.06 公開日:2022.05.18

岡山県「くまさんの森」園主の髙木俊治(たかぎとしはる)さんは、「極み減農薬」で妥協しないメロン作りに挑んでいます。メロンが苦手な東京のサラリーマンが岡山県で「メロン家」になった物語を紐解きます。

目次

のどこし極上「ゆうか」メロン

のどごし極上「ゆうか」メロン

――どんなメロンを作っているのですか?
黄金色の「ゆうか」という品種のメロンを中心に、他には「翠生(すいせい)」、「あをによし」という品種のメロンを作っています。今回楽天ファームに出品するのは黄金メロン「ゆうか」です。

メロン特有の食べると喉がイガイガする感じが苦手だという人がいるでしょう?
実は僕もそうなのですが、ゆうかはこのイガイガ感がない!初めて口にしたとき、メロンが苦手だと思っていた僕でも「ゆうかなら食べられる!」と衝撃を受けたのを覚えています。

 ――黄金メロン「ゆうか」の特長は?
まず一言で表すと「のどごしで味わうメロン」です。緑肉メロンの一種なのですが、果肉には透明感があります。食べると口の中に果汁があふれる瑞々しさ、舌触り滑らかなとろける食感で、濃厚な甘さなのにさっぱりとした味わいです。見た目も味わいも涼やかで、夏にぴったりなメロンだと思います!

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メロンといえば「T字型のアンテナへたがついていて、緑色」のイメージがありますが、僕の「ゆうか」は「へたなしで黄金色」です。
ゆうかはへたがとれやすい品種なので、配送時にへたがとれないよう、収穫時にすでに切っています。へたのとれやすさから市場にはあまり出回らない品種なんですよ。黄金色に色づくのは完熟の証。へたもないし、黄金色なのでびっくりされる方がいらっしゃいますが、きちんと理由があるんです。

美味しい食べ方はキンキンに冷やして?!

農業は面白い!両親の反対を乗り越えて

――美味しい食べ方は?
食べ頃までは常温で保管し、召し上がる3時間位前に冷蔵庫に入れて冷やすのが風味や甘みを楽しめる食べ方です。メロンをはじめ、果物は冷やしすぎると風味や甘みを感じにくくなるのですが、前日くらいからしっかり冷やしてのどごしをより楽しむ食べ方も僕は好きです。熱い時期にキンキンに冷えたメロンを食べると最高!疲れがふっとびます。

美味しい食べ方

他のメロンより果皮が薄いので、皮の近くまで食べられるのも嬉しいポイントです。親戚の子供が遊びに来た時は、果皮のぎりぎりまでメロンをほおばってくれました。

同梱する案内用紙で食べ頃をお知らせしているので、その日付を参考にお召し上がりください。収穫してからおよそ5日後が食べ頃の目安と言われていますが、常連のお客さんには2週間我慢する方もいます。僕は熟れすぎてしまうのが怖くて2週間も待てません(笑)。

食べきれない分は、ざく切りにしてシッパー付きの保存袋に入れて凍らせるのもおすすめ!シャーベットのようになったメロンは真夏との相性抜群です。

 僕の「ゆうか」メロンはとにかく食べると元気が湧き出てきます。元気になれる、笑顔をつくるメロンです。

東京のサラリーマン、メロン農家に弟子入り

東京のサラリーマン、メロン農家に弟子入り

――農家になったきっかけを教えてください。
サラリーマンとして東京で働いていたのですが、会社の吸収合併により仕事がなくなってしまいました。そこで手に職をつけようと職業訓練を受けることにし、選んだのが農業でした。この時は本当に農業を仕事にするなんて考えていなかったんですよ。

――「農業」に興味があったのですか?
いいえ、サラリーマン時代は全く興味がなかったです。種を電子レンジに入れてチン!すれば野菜ができあがると思っていたくらい「簡単に食べ物ができる」と思っていました。

職業訓練の受付では林業、漁業、農業を勧められ、林業も漁業もピンとこず、最後に残っていたのが農業だったんです。そのまま流れるように農業の専門学校に入学しました。

――メロンが苦手だと仰っていましたが、なぜメロンを?
専門学校に通っている時、「授業以外にプロの農家のもとで修業したい」と先生に頼みました。その時紹介されたのが茨城県水戸市のメロン農家だったんです。メロン以外の農家も他にいたはずなのに「君はメロン!」と言われて…。初めは嫌々でした(笑)。

茨城県はメロンの名産地なのですが、それも知らずにメロン農家のもとで修行することになりました。

2009年から2年間、学校に通いながら休みの日はメロン農家で修業する日々でしたね。このメロン農家が僕の第一の師匠になります。

――メロンに魅力を感じた瞬間があるとか?
なんとなくでメロン作りを手伝っていたら、ある時メロンが収穫できました。いざ販売が始まるとお客さんが押し寄せてメロンを奪い合っているんです。それを見てびっくりしました。メロンに対するお客さんの熱量を目撃してはじめて、メロンの力に気付いたんです。そこから農業の中でも僕はメロンを柱にする!と宣言し、研修も本腰を入れて臨むようになりました。師匠の背中にひたすら張り付いて、見て覚えることを繰り返しましたね。

震災を経て、7年越しの「くまさんの森」立ち上げ

大移動を経て7年越しの「くまさんの森」立ち上げ

――メロン修行をし、独立することに?
はい、独立してメロン作りをするために就農地を探しました。最初の条件は「東京から新幹線で3時間以内の場所」。ちょうど疲れにくく、日帰りでも探しやすい移動時間でしょう?

そして、2011年2月に福島県に移住しました。ですが、引っ越した矢先に東日本大震災が起こり、被災したんです。しばらくは福島県で働いていたのですが、農業をするのは難しいと感じ、東京の実家に帰りました。

――移住して1カ月で震災とは…
農業をするのか、サラリーマンに戻るのか真剣に考えました。考えた末「やっぱり農業がしたい」という想いが自分の中にあることに気づき、今度は埼玉県のメロン農家のもとで働きながら、休みの日に就農地を探したんです。

――東京・埼玉を拠点にまた各地へ?
はい、「明日休みね」と言われたら、どこに探しに行こうか計画しました。前回は東京から順番に東へ探したので、今回は逆に東京から順番に西へ攻めることにしたんです。
スタートは長野県で、一番遠いところで西表島まで行きました。西表島でメロンが作りたいと言うと「作るならパイナップルにしなよ!」なんて言われましたね。結局条件を「東京から西へ新幹線で3時間以内の場所」に見直し、そこで岡山県を訪れることになりました。

メロンの苗

――やっと岡山県にたどり着いたんですね?
岡山県で出会ったのが第二の師匠でした。当時岡山県で唯一ホームページを持っているメロン農家だったのですが、アポなしで直接乗り込み、メロン作りを勉強させてもらえないかと頼みました。

「給料は出さないし、住む場所も手配しないけどそれでも来たいんだったらいいよ」という返事をいただき、すぐに移住を決めました。

移住後、農園管理の仕事をすることが決まり、そこで働きながら休みの日はメロン農家のもとで修業しました。ここでも、直接教わるというよりひたすら師匠の背中を見て学ぶというのを続け、同時進行で農地と家を探したんです。農地が先に見つかったのですが、家探しがとにかく大変で…。なんとか探して決めたのが一戸建ての賃貸でした。最初は家から畑まで自転車で通っていたので、自転車で運べる程度の道具しか持っていなかったんですよ。それこそ鍬1本からのスタート。草を刈るための刈り払い機を自転車に縛り付けて畑に通っていました。

自分の農地を持つまで本当に長かったです。2009年から農業の道へ進み、ようやく自分の農地を持ったのが2016年。その間に震災もあり、よく生きてこられたと思います。

「くまさんの森」メロン

――「くまさんの森」が2016年から始まったのですね
農園スタートは自分の農地を手に入れた2016年。でも、この「くまさんの森」という名前は2010年からずっと温め続けていた名前なんです。

「水」が繊細なバナナを守る

――そんなに前から!?名前の由来が気になります
職業訓練時代に色々な人に言われたのが「髙木君ってくまに似ているよね」でした。
僕は森のようなところに住んで農業がしたいという想いがあり、なんとなく合体して「くまさんの森」になったんです。

有名になったら恥ずかしいんじゃない?なんて言われたり、「森のくまさん」と間違われたりもしますね。

日々メロンと向き合う中で、畑と森、そして大切な家族に出会えました。畑ではチビッ子農場長が大活躍しています(笑)。

本物のメロンのために…こだわる「極み減農薬」

本物のメロンのために…こだわる「極み減農薬」

――こだわりの農法はありますか?
「極み減農薬」でメロンを作っています。
メロンは虫がつきやすく、病気になりやすい。そんな繊細なメロンの栽培には、多くの農薬や除草剤が必要だとされています。

メロンを食べると喉がイガイガするとお話しましたが、僕はこの身体の反応には多少なりとも農薬や除草剤が影響していると思うんです。「ゆうか」という品種による力もあると思うのですが、僕のメロンがイガイガしないのは、この農法による効果も大きいと思っています。

――「極み減農薬」について詳しく教えてください
農薬を使う回数を可能な限り減らした農園こだわりの農法です。メロンの苗を植える際にアブラムシ除けの薬2gを1回、後は受粉を促す薬を1回使い、それ以外は農薬や土壌消毒剤、除草剤も使用しません。
一般的なメロン栽培では、収穫するまでに約12回農薬を使うと言われているので(※)、僕の「極み減農薬」は、極限まで農薬を減らしていることがわかると思います。
※参考:「ハウスメロンをつくりこなす」若梅健司著 農村漁村文化協会出版

万が一虫が発生してしまった場合は、マスキングテープを使い、ペタペタと手作業で取り除きます。今はだいぶ手早くできるようになりましたが、最初は朝から晩まで一日中ハウスにこもるくらい時間がかかりました。

一度虫が発生してしまうと、除去作業に付きっきりになってしまいます。僕がそうしている間に、他の農家は他の作業ができる。それがもう本当に悔しいんです。だから、虫が発生する可能性は限りなくなくしたい。そのために、ハウスに目の細かい網を張るなど、とにかく虫が入り込まないよう工夫しています。

僕の悩みや苦労は、農薬を使えばすぐに解決します。それが早くて楽です。でも手間はかかりますが、僕のメロンはメロン本来の力で育ってほしいので、妥協したくないんです。

肥料にもこだわりが

――肥料にもこだわりが?
岡山県産にこだわり、地元でとれる落ち葉や藁、竹などを使っています。メインの肥料は米ぬかです。農薬不使用栽培で米を作っている農家から購入していて、よく「江戸時代の肥料の作り方」なんて言われます。

今年は、米ぬかが手に入りづらいのですが、こだわって遠くまで買いに行っています。農薬、除草剤がかかっている米ぬかは近所の精米所で無料で手に入るし、化学肥料もホームセンターで簡単に手に入る。でも僕は面倒くさいほどのこだわりからあえて大変な方を選んでいます。今年から「肥料を育てる」ことにしたんですよ。

――肥料を育てるとは?
他の農家からもらえる分だけだと足りないんです。だから自分の畑で作ろうかと。農薬を使わないので安心して使えますしね。極み減農薬メロンは可能な限り農薬不使用の肥料を使っています。

肥料にもこだわりが

――他に大変なことはありますか?
一つ目はハウスの温度管理です。以前曇りの予報が出ていたのでハウスを閉めて外出したところ、だんだん晴れてきて気温が上がり、一瞬で全て枯れてしまったことがありました。逆に、春先に急に気温が下がり、それがメロンにとって寒すぎたらしく実がならないこともありましたね。定植してすぐは特に温度管理に気を遣わなければいけないので大変です。

写真の黒いペットボトルは中に墨汁を入れています。定植後の繊細な苗を保温するための工夫なんですよ。

二つ目は水を引く設備が整っていないことです。農地の一つは湧いている水の水質を検査していないため、メロンに使わないようにしています。代わりに、綺麗な水で有名な高梁川の用水や、家からくんできた水道水を使っています。綺麗な水を使いたいというこだわりなのですが、水質検査を行う資金を工面できておらず…何とかしたいなと思っています。

完全無農薬メロンへの挑戦

完全無農薬メロンへの挑戦

――挑戦されていることがあるとか?
非常に難しいとされる「完全無農薬メロン」の栽培にも挑戦しています。このメロンのハウスに入る時は帽子から靴まで全身着替えるほど気を遣っているんですよ。それもあり、無農薬に挑戦し始めた当初は、気疲れで不整脈になり倒れてしまいました。その後3日間入院して…命がけですね(笑)。

受粉も手作業でおしべとめしべを一つずつ合わせます。それでも全て実がつくとは限らない。たくさん植えてはいるのですが、収穫できるまでとなるとハウス1棟で10玉くらいかな。本当に少ないんです。

極み減農薬メロンと完全無農薬メロンを食べ比べたお客さんは「味が全然違う!」と仰いますね。ちなみに完全無農薬メロンはひっそりと販売していて、知る人ぞ知るかなりのレアものです。

完全無農薬メロンを作ることは本当に大変ですが、安全安心を第一に、子供たちの未来のために作り続けます。

『メロンは正座で』広がる夢

『メロンは正座で』広がる夢

――髙木さんのモットーは?
人の力をあてにしない、言い訳をしないことです。起こったことを人のせいにするのではなく、自分の手で未来を切り開きたい。現在48歳なのですが、仕事がなくなって、被災して、本当に色々ありました。でも何もなかったような気がするんです。とにかく生き急いでいた感じですよね。失われた何かを取り戻したい、右往左往していた人生を取り戻したい。

そういう気持ちが農法に反映されているのだと思います。妥協はしたくない。だから仕事の信条として「メロンは正座で」取り組んでいます。メロン作りは手抜きしないという意味です。

――髙木さんの夢を教えてください。
妄想ですが、「くまさんの森国」を作りたいです。極力農薬を使わない、除草剤を使わない…そんな方法で農業をする人がどんどん増えて一つの国のようになったら良いなと思います。そのためには、まず現実で自分の給料を払えるようになり、次に僕が習得した技術を覚えてくれる人を受け入れたい。僕が暮らす場所は人口よりもイノシシが多い地域なのですが、そんな地域の人口を増やしていきたいです。

メロン作りは1玉1玉と毎日向き合わなければなりません。どの子も見た目は似ているかもしれませんが、性格が違うんです。だからメロンは他の野菜よりずっと手間がかかる。でもそれが楽しい。楽しいから続けられているのだと思います。僕は、農家ではなく、「メロン家」という感覚でメロンと話す日々を過ごしています。

メロンが苦手な僕が美味しいと衝撃を受けた「ゆうか」メロンを「極み減農薬」にこだわり育てました。波乱万丈な人生の先にたどり着いた、のどごし極上メロンを暑い夏の日のお供に是非お試しください。

◎くまさんの森の黄金メロン「ゆうか」は楽天ファーム楽天市場店でご購入いただけます!

編集後記

農家になるまでの経緯を深堀りすると、何人分もの人生を生きてこられたような濃密さでただただ圧倒されました。「苦労するほうが燃え上がるタイプですね」と笑う髙木さんの何事も極める姿勢が、ゆうかメロンを極上の美味しさにする一番の秘密かもしれません。
ちなみに今までは直売所でひっそりと販売されていた知る人ぞ知るくまさんの森のメロン、楽天ファームがインターネット初出品です! 「農業に関わっていれば色々経験するので面白いですよ!」いただいたお言葉、一生忘れません。

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • 額見奈央

    楽天農業株式会社の2020年新入社員。石川県生まれ、奈良で学生時代を過ごして、愛媛にやってきました。「人にも環境にも優しく、人のつながりが生まれ続いていく」そんな地域に根差した農業を目指しています♪女子大出身・農業未経験女子だって農業ができることを発信していきます。

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