農家って最高に楽しい!アパレルから転身した農業女子が満喫するアートなオーガニックライフ

農家って最高に楽しい!アパレルから転身した農業女子が満喫するアートなオーガニックライフ
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最終更新日:2023.10.04 公開日:2019.12.19

女手ひとつで育てます!藤中夏実(ふじなかなつみ)さんは、広島県の瀬戸内海に浮かぶ島でオーガニックレモンを育てる農家女子。大好きなアートを楽しみながら農業を満喫するオーガニックライフを伺ってきました。

目次

アパレルのために大学までいったのに…

農家になる前は、アパレルの仕事をしていました。
もともと服が好きだったので、アパレルの職に就きたくて、大学もゼミで流行を学べるところに入り、卒論もアパレル、ファッションで書きました。

そして念願のアパレル会社に就職。でも一人暮らしをするお金もないし、服も買わなきゃいけないので、実家から、車→満員電車→バスを乗り継いで日々通っていました。

アパレルブランドのショップに立ち、私が思ったこと、それは「誰が作ったのか、わからないものを売るって、いやだ」ということです。最初は割り切っていたけれど、だんだんお客様に服をすすめることが苦痛になってきて、すごく悩みました。

この服は、どういう糸を使って、どういう人が作っているのか、その服にあるストーリーを知りたいと思ったんです。だけど資料でもらう情報はある程度までしかなく、もっと詳しいところを調べるには限界がありました。

しかし農業なら、自分で栽培からすれば、こういう風に育てて、この時期はこんな虫がついたけど、これで対応してきたとかストーリーが話せます。そこまで言えてお客さまに伝えられたら、すっごいおもしろいなって思って、わくわくしました!

母が泣いた日

アパレル時代、母にはいつも悩みを聞いてもらっていました。私のうわべだけの言葉じゃお客さまには響かないと、悩んでイライラしているのを、一番知っていたのは母です。

でも、農業に転身しようと決めた時、母にはなかなか言い出せませんでした。せっかく大学まで出してもらったのに…という、後ろめたさでいっぱいだったからです。

しかしついに、アパレル会社に退職願いを提出した日の夜、母に伝えました。
「アパレルを辞めて、農家になる」
すると母が泣き出してしまいました。

どうしよう、ごめんなさいと思っていると、母は「よかったね」と言ってくれました。
私がずっと悩んでいたことを知っていたからこそ、やっと本当にやりたいことをみつけたことに、喜んで泣いてくれたんです。

母はもちろん、父もとても応援してくれて、2人してよく畑に手伝いにきてくれます。広島本土にいるので船に乗ってくるのは大変だと思うのですが、「次はいつ行けばいい?」と聞かれるようになりました。両親とも農業とは無縁だったのに、楽しいみたいです。

3カ月で移住&オーガニックレモン農家に!!!

ここ大崎上島には、最初は遊びで来ました。
広島本土からフェリーに乗って小旅行気分で来て、まず、おもしろかったのが観光案内所です。

ここの2階なんですが、いらっしゃる方がみなさん優しくて、島の農家さんにどんな人がいるとか教えてくれます。観光名所の案内ですか?それは聞いたことないです(笑)

ここの観光案内所には、島の農家さんが作ったオリーブオイルなどが置いてあるのですが、この本に載っているトマト農家さんがもともと友達で、この方に会いに遊びにきたのが、島に来たきっかけでした。そこで農家の魅力をきき、農業に興味を持ち始めました。

数カ月後、今度は収穫体験で島を訪れました。
デコポンの収穫を1日体験させてもらって、こんなに楽しくて、お金がもらえる仕事があっていいの?と感動しました。果実は重いから体力がいりますけど、ひとりでもくもくと作業するのが好きなんです。仕事中にしゃべらなくていいというのも新鮮でしたし、楽しいし、とにかく農業やりたい!!!と大興奮でした。

そして収穫体験から3カ月後には、仕事をやめて、島に移住して、農業研修をはじめました。
研修先が、有機JAS認定の畑をもつオーガニック農家さんだったので、私もオーガニックでの栽培を学びました。自然の力で自ら育てたオーガニックレモンを、食卓に並べるような生活は、言われてみれば「オーガニックライフ」かもしれません。

離島というと、けっこう閉鎖的でIターンを受け入れないイメージがあったのですが、ここは全然そんなことありません。

観光案内所で働く田中真樹さんも、Iターンでこの島にきて、アート活動をしながら暮らしています。こういうIターン仲間がいたり、年上の人とよく話すようになったり、この島にきてすごく交友関係が広がりました。

農家ならではのアートがしたい

私が農家に魅力を感じた一番の理由は、時間も融通がきくので、空いた時間で大好きな絵を描いたり、雑貨をつくったりアートタイムを持てることです。だから1年の研修を終えた後は、迷わず独立をしました。

1日のスケジュールは、夏と冬で違います。

<夏の1日>
6:00 起床
6:30 畑
11:00 昼寝
15:00 畑
19:30 帰宅(アートタイム)
22:00 就寝

夏は化粧しても落ちるから日焼け止めだけ塗って、畑に出ます。日中は暑くて外にいれないので、エアコンのきいた部屋で昼寝して、また畑に戻ります。
アートタイムは夜、仕事が終わってからです。その日に見た木を思い出して描いてみたり、雨が降ったらできなくなる作業があるので、雨の日は絵を描いたりしています。

<冬の1日>
8:00 起床
8:30 畑 or 出荷
12:00 休憩
14:00 畑 or 出荷
17:30 帰宅(Web作業&アートタイム)
24:00 就寝

冬は適当に化粧をして畑にでます。会うのは通りがかりのおじちゃん位なので気にしません。夏と違って収穫があるので、出荷の作業がでてきます。基本的に出荷は午後に行いますが、もぎたてをすぐ送りたいので、注文の量が多いと午前中にも出荷することがあります。
農業は日が暮れたら終了なので早く帰れますが、Webで注文を確認したりする作業も入ります。

自分で描いた絵は、気に入るとグッズにして販売したりしています。
今日着ている服もそうで、畑でみたレモンとオリーブを思い出しながら、水彩絵の具で描いたものです。

私の場合、静物画のように何かをみながら描くことはありません。農作業中にみた果実や枝葉、切ったときの感触、においなど自分で記憶しているものを絵にしています。それって、農家でないとできないことなので、農家ならではのアートがしたいと思っています。

みんな農家になろうよ!!!

友達みんなに言っているのですが、みんな農家になればいいと思います。本当にとっても楽しいです。つらいことは、なんだろう?夏が暑いくらいかな。

農業の醍醐味は、やはり収穫して出荷できることです。自分で育てた我が子のようなレモンが巣立っていき、受け取ったお客様から「美味しかった」「こんな風に食べました」というメッセージをいただくと、嬉しくてたまりません。

これは私の作った加工品第一号で「手摘みオリーブとレモンのお漬物」です。パッケージもこだわって作りました。ここに入っているレモンは私が育てたものですが、オリーブは以前の研修先で有機栽培されたオーガニックオリーブです。

こうして自分のアイデアが形になるのも嬉しいですが、今後はすべて自分で育てた実で加工ができる農家になりたいと思っています。

日本の農業は、高齢化でリタイアされた方の荒れた土地もたくさんあるので、若い人がもっと農業に取り組んで増えていって、もっと農業という職業を身近に感じられるようになれるといいなと思います。
5年後、10年後には、なりたい職業ランキングで農業が3位以内に入っていたら嬉しいです。みんな、農家になりましょう!!!

取材協力:ふじや

編集後記

先週の藤中夏実さんの記事をみて、広島の友達から「知り合いの娘さんを紹介してくれてありがとう」と、連絡をもらいました。こんなご縁が農業でむすばれるのも「農むすび」かもしれません。今回はお母さまの涙の話がでてきましたが、夏実さんにそれを聞いたときは、感動でうるっときました。なんでも相談できる母と娘って、本当に素敵な関係ですね。(担当:Motty)

  • この記事の情報は掲載開始日時点のものとなります。
  • 農作物は、季節や天候などにより状況が変わります。
  • 掲載内容は予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
CATEGORY :農家さん

ライター情報

  • Noumusubi
  • Motty

    農むすび編集長。埼玉県深谷市出身。農家の孫。日テレAD時代、おしゃれカンケイを担当。農家さんの人となりをドラマチックに伝えたいと取材記事を書きはじめた。好きな農作物はメロン。農業は自然の恵みあってのもの。神社のお祭りで五穀豊穣を祈るのも、大切にしたいと思っている。

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